人材不足の中で繰り広げられる採用合戦 「優先紹介」は可能なのか――?
情報提供やキャンペーン…… 紹介会社のモチベーションアップをねらう企業
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この会社どこに行っても紹介されますね
「他の紹介会社から紹介された案件はありますか」
「いくつかあります」
最初の転職相談では、こういった会話が必ず行われる。仮にその転職希望者がまだ他の紹介会社の相談に行っていなかったとしても、今後も行かないという保証はない。そのため、紹介会社としては最初に会った時に、できるだけたくさんの求人情報を渡すことが多い。その時に「紹介料が高い、低い」をあまり気にしてはいられない。
「こんなにあるんですか!」
最初に案内する求人情報が多いと転職希望者は喜んでくれる。ただ、玉石混交のまま渡しても十分な信頼は得られない。
「たくさんありますが、いくつかのグループに分けてご紹介します。まず、マネジャー候補を募集している企業です。Fさんのご希望にいちばん近いと思います。次に外資系企業ですと、この会社とこの会社ですね」
大きなカテゴリに分けて、その中で優先順位をつけて絞り込んでいく。この段階で効いてくるのが、丁寧なオリエンテーションで得た企業情報だ。詳しい情報を提供することで、転職希望者に「面接で詳しい話を聞いてみたい」と思ってもらえれば、競合の中でも一歩前に出たことになる。
紹介料の高い企業であれば、キャリアコンサルタントも説明に熱が入りがちだが、やりすぎると逆効果ということもある。
「この企業、どこの紹介会社でも必ず紹介されますが、何か理由でもあるんですか?」
なぜ、業界で人気企業でもない会社をこんなに薦められるのだろうと、疑問に思うようだ。カンのいい転職希望者の場合、うすうす気づいていることもある。そんな時はあまりしつこくしない方がいい。
「採用活動にとても力を入れている企業なので、ほとんどの紹介会社に求人を出しているからだと思いますが……」
場合によっては、逆に転職希望者に「取材」してしまうこともある。その会社に応募する気が最初からない場合は、率直な業界裏話が聞けることもよくあるからだ。
「A社の業界内での評判や評価はどうですか?」
「A社の製品は性能は高いんですが故障も多いと聞きますね。だからサポートエンジニアが大変だとか」
いずれにしても「優先紹介」は現実的に難しい。私がいくらA社を強く薦めても、転職希望者の意向により合ったB社を他の紹介会社に薦められてしまえば終わりだからだ。結局、A社もB社も紹介しておくのがベストということになる。
紹介料は企業から受け取るが、マッチングにおいては人材の意向が最優先される。それが人材紹介という仕組みの不思議なところである。
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