転職希望者が心変わり!? 人材紹介に影響を及ぼす「夏休み」
一筋縄ではいかない採用スケジュール 予期せぬ事態が発生することも――
企業の夏季休暇と言えば、一般的にはお盆前後だが、外資系企業では7~9月にかけてローテーションで休みをとるところも多い。近年では、日本企業にも外資系企業のスタイルを採り入れるところが増えているが、場合によっては、採用担当者や面接を行う管理職、役員などが順番に夏休みに入り、選考がなかなか進まないということもある。
長期休暇明けは採用の絶好機?
「夏季休暇や年末年始休暇のような長い休みの後は、転職に踏み切る人が増えると言われます。普段、忙しく働いている人にとって、休暇は自分の働き方を見つめなおす機会になりますからね。同窓会などで友人と情報交換したり、帰省して家族と相談したりする機会も増えます。中途採用をお考えでしたら、非常にいい時期だと思いますよ」
人材紹介会社だけでなく、中途採用支援の会社では、夏休みが迫ってくると、企業に対してこうしたセールストークを使うことがよくある。また、夏休みはボーナスが出た直後なので、転職を考えている人にとってはいいタイミングだと言われると納得しやすい。
しかし、本当に休み明けに転職希望者の相談件数が一気に増えるのかと言われると、私の経験からすれば、目に見えるほどの変化はない。ある程度キャリアのある人材の場合、休暇中に心を決めたとしても、そこから情報を収集したり、職務経歴書を作成したりするなど、準備にそれなりの時間が必要になる。このセールストークは、例年夏休みや年末年始休暇の前後に停滞気味になる企業の採用活動を、なんとか活性化させようとして人材紹介会社や中途採用支援会社が編み出したものなのかもしれない。
実際、8月に入ると、書類選考や面接が滞り始めるケースは少なくない。
「書類選考を担当している部長がちょうど休みに入ってしまいまして……。もう少しお待ちください」
ところが一週間ほどして改めてコンタクトすると、今度は採用担当者が休暇に入っていたりする。
「その件については、採用担当者しか分からないんです。来週には出社しますので」
近年では、お盆の時期に一斉に休む企業ばかりではない。7月から9月までといった一定期間の中で、交替制で夏季休暇をとる企業も増えている。そのため、採用担当者、面接担当者、最終判断を下す役員などが順番に休んでしまって、結果的に選考が大幅に遅れてしまうこともある。困るのは、候補者が複数の企業に応募していて、他社からはすでに内定が出ているようなケースだ。候補者も紹介会社も非常にやきもきさせられることになる。
「A社からは、今週中に入社するかどうかの返事が欲しいと言われています。私としてはB社の条件も見てから決めたいのですが、まだB社の内定は出ないのでしょうか?」
候補者からこんな相談を受けると、こちらも板挟みになってしまう。
「B社の最終判断は海外本社の役員で、今月いっぱい休暇をとっているそうなんです」
外資系企業の役員クラスともなると、長期でバカンスをとるケースが珍しくない。こうなるともうお手上げである。