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邂逅がキャリアを拓く【第5回】
アートとの邂逅

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

西田 政之氏

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

時代の変化とともに人事に関する課題が増えるなか、自身の学びやキャリアについて想いを巡らせる人事パーソンも多いのではないでしょうか。長年にわたり人事の要職を務めてきたブレインパッドの西田政之氏は、これまでにさまざまな「邂逅」があり、それらが今の自分をつくってきたと言います。偶然のめぐり逢いや思いがけない出逢いから何を学び、どう行動すべきなのか……。西田氏が人事パーソンに必要な学びについて語ります。

忘れられない同志がいます。2015年、マーサージャパンからライフネット生命に副社長として転職した際に、当時会長だった出口治明さんが私の相棒として付けてくれた、Yさんです。スマートで、温和で、論理的で、文学的センスにも溢れた、非の打ちどころのない秀才でした。

転職してすぐに、Yさんと新たな経営・組織戦略の策定に取り組むことになりました。入社前に、同社の黎明期を支えた優秀なOB・OGをインタビューしていたので、ライフネット生命の本質的な課題や検討項目はある程度目ぼしがついていましたが、入社後さらに全社員と1on1インタビューを行うことで、日々アップデートされている状態でした。

一つひとつの課題について、毎日、朝から夜遅くまで、Yさんと濃密な議論を重ねました。議論から生まれたアウトプットは、翌朝にはYさんの手によって整理され、資料に落とし込まれます。

あるとき、私がキーワードをベースに断片的に語った話を、Yさんが「新経営戦略ストーリー」として、格調高く、またナラティブにまとめてくれました。それを読んで、ナラティブなストーリーが放つエネルギーの大きさを、あらためて認識しました。それは、ある種のアート作品のように思えました。

数ヵ月後、経営戦略が役員会で了承され、まさにこれから実行フェーズに入るというタイミングで、その日は突然やってきました。私が出社して間もなく、Yさんのチームで改革に取り組んできたメンバーがやってきて、嗚咽しながら「Yさんが今朝亡くなった」と伝えてくれたのです。昨日の夜まで一緒に議論していたのに……。信じられませんでした。自分の身体が半分なくなったかのように感じました。

人生で初めて悼辞をしたためているとき、Yさんとの思い出が走馬灯のように脳裏へ映し出されました。彼が愛したモノたちをあらためて振り返ると、私たち二人の接点が浮き彫りになりました。それは画家のフェルメールです。Yさんはフェルメールが大好きでした。私も、画家の中では特にフェルメールを贔屓にしていました。

「光と影の魔術師」と評されるフェルメールの作品は、三十数点しか現存していません。フェルメールの絵にはエゴが感じられず、フェア、フリー、オープンな姿勢でありのままに描く、という純粋さを感じます。まさに、Yさんの社内改革への姿勢そのものでした。私利や作為や不純なものが一切ありません。だからこそ、彼が手掛けた資料や文書に、心をひきつけられたのでしょう。Yさんの感性が、多くの文学作品とフェルメールを筆頭にした絵画鑑賞によって磨かれてきたのは疑いようのないことでした。彼は、そのセンスを仕事に生かしていたのです。

ライフネット生命からカインズのCHROへ転職したとき、すでに私の中には「人事はアートとサイエンス」「人事施策はアート作品であるべし」というポリシーができていました。それらは、Yさんとの短い歳月の中で培われたものがベースになっていることは間違い ありません。

フェルメールが生涯のほとんどを過ごした、オランダ・デルフトの現在の様子

フェルメールが生涯のほとんどを過ごした、オランダ・デルフトの現在の様子

人事はアートとサイエンス

人事に限らず、新たな戦略作りや改革の際には、仕事の流れに一定のフレームワークがあります。(1)現状分析、(2)ディレクション(方向付け)、(3)プランニング、(4)マーケティング、(5)実行・修正、という五つのアクションのサイクルです。

余談ですが、この流れは、クリエイティブ・ディレクターの制作過程と同じです。私は転職と転職の間に、「クリエイティブ・ディレクター養成講座」へ通った経験があります。10人の希代のクリエイティブ・ディレクターからノウハウを学ぶ講座でしたが、希代のクリエイティブ・ディレクターは経営者以上に経営者であるという印象を強く受けました。先述のフレームワークを綿密に行っているからです。人事として人事施策を考える過程は、クリエイティブ・ディレクターがたどる過程と本質的に変わらないことに気付いたのです。

フレームワークのうち、(1)現状分析では、冷徹にファクトや数値と向き合い、解読していく必要があります。これはサイエンスです。(3)の精緻なプランニングや、(5)の結果分析に基づく修正なども、まさにサイエンスの力が必要です。一方で、(2)ディレクションや(4)マーケティング施策のアイデア出しなどは、アートの世界と言えます。

せっかく策定した素晴らしい施策も、社員に伝わらなければ意味がありません。しかし施策の策定には大変な労力と時間をかけるのに、出来上がった後は説明さえすればうまくいくと考えている人は多いようです。あるいは、そこへたどり着くまでにエネルギーを使い果たしているのかもしれません。

作り手の論理が入ってしまい、理解しないほうがダメなのだと考える気持ちもわかります。ただ、伝え方、浸透のさせ方は、策定プロセスと同じくらい力を入れるべきポイントです。そのために人事は、アートとサイエンスを両利きで使いこなす必要があるのではないかと思います。

人事施策はアート作品であるべし

歴史をひもといていくと、アートは一つのコミュニケーション手段でした。国境を接する欧州の国々でアートが特に発展していったのは、言葉も文化も違う人々に対して自分の考えや気持ちを伝えるための表現手段であったことが理由でしょう。アートには、心に響く何かがあるのです。

私は、人事施策もアート作品であるべきだと考えています。カインズ時代に「DIY HR®」というコンセプトを策定したとき、そう強く感じました。これからの組織はどうあるべきか。「自律」をテーマに、キャリアも、学びも、コミュニケーションも、ワークスタイルも、そしてWell-Beingも、全て自分の頭で考え、自らが行動することをベースにしていくことが必要です。それを一言で表現するにはどうしたらよいのか。迷ったら、悩んだら、現場という基本に立ち返るというセオリーに従って、あらためてカインズの店舗内を見渡すと、DIY(DO IT YOURSELF=自分自身でやる)という言葉で溢れていました。

「そうだ、HRもDIYだ!」。考えてみると単純な話ですが、単純だからこそ気付かないこともあります。シンプルに伝えたいことがわかるワーディングは、特に難しいと言えそうです。おかげさまで、「DIY HR®」のコンセプトを評価していただき、日本の人事部「HRアワード2022」では企業人事部門最優秀賞を受賞することができました。その勝因は、まさに、この「DIY HR®」が一つのアート作品として認められたからに違いありません。

アート思考、アート感覚を研ぎ澄ませる

「DIY HR®」について、社内外の皆さまから「どのようにしてコンセプトを思い付いたのですか?」という質問をたくさんいただきました。残念ながら、体系的なメソドロジーはありません。ただし、心掛けていたことが二つあります。

一つ目は、徹底した現場主義です。映画「踊る大捜査線」の主人公・青島刑事の名セリフに「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」という言葉があります。まさにそうなのです。すべてのヒントや答えは現場にあります。

二つ目は、日頃から目を養うことです。そのためには、たくさんの美しい作品に触れておく必要があります。文学的センスを磨きたいのなら、数多くの文学作品を読まなければなりません。それと同じで、可能な限りたくさんのアート作品と向き合うことが大事ではないかと思います。

私の場合、下地つくりとして、アフター5にアートスクールに通いました。東京藝術大学の准教授が講師となり、アート史や絵の見方などを懇切丁寧に教えてくれる講座でした。受講したことで、絵やアートの見方が変わったように感じます。

アートは時代背景により変遷します。アート史を学ぶことは、その時代の政治や文化、地政学を学ぶことに等しいと言えるでしょう。そこからまた新たな興味や疑問が生まれ、新たな探求への扉が開かれるのです。

休日に美術館や博物館に足しげく通うようになってからは、仕事や普段の生活に新たな色彩が加えられたように感じます。本当は何もわかっていないのかもしれません。他人が見ると、単に格好をつけているだけに見えるかもしれません。でも、本物を見に行くという行動が、無意識のうちにセンスを磨いているように感じます。それこそが見るものを魅了し、影響を与える、本物の持つ力なのかもしれません。

アートがもたらす邂逅は多義にわたります。Yさんとの思い出も、仕事への応用も、大切なことは全てアートが結びつけてくれるのです。

西田 政之氏
西田 政之氏
株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

にしだ・まさゆき/1987年に金融分野からキャリアをスタート。1993年米国社費留学を経て、内外の投資会社でファンドマネージャー、金融法人営業、事業開発担当ディレクターなどを経験。2004年に人事コンサルティング会社マーサーへ転じたのを機に、人事・経営分野へキャリアを転換。2006年に同社取締役クライアントサービス代表を経て、2013年同社取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社へ移籍し、同社取締役副社長兼CHROに就任。2021年6月に株式会社カインズ執行役員CHRO(最高人事責任者)兼 CAINZアカデミア学長に就任。2023年7月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員、MBTI認定ユーザー、幕別町森林組合員。日本CHRO協会 理事、日本アンガーマネジメント協会 顧問も務める。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 人材育成概論

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