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有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll”【第45回】
人事ケーススタディ(その2)
貢献年収の思想

株式会社日本M&Aセンターホールディングス CHRO/株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 人材本部長 人材ファースト管掌

有賀 誠さん

有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll

人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠

前回、日本M&Aセンターでは、イノベーションを創出し、業界をリードし続けるため、意識的・戦略的にさまざまな特性をもつ人材を採用し、「多様性ある組織」と「自由な発想や挑戦を尊ぶ文化」を両輪として企業を構築していることをお伝えしました。

それを実践しつつ、会社組織としては一つの人事体系の中に収めていくのは容易なことではありません。そのため、私たちは「貢献年収」という思想に立脚しています。

人材の「市場価値」と「当社にとっての価値」

M&A仲介は日本M&Aセンターが生み出したビジネス・モデルであり、社外に即戦力となる人材は存在しません。従って、いかに優秀な人材であろうとも、またキャリアであろうと新卒であろうと、入社時点では全員が「素人」であるわけです。年齢やキャリアにかかわらず、「当社にとっての当面の人材価値」は等しいと言えます。

ところが、人材市場では経験や経歴に対しての「市場価値」がついており、それを払わないことには採用ができません。当然、私たちもその「市場価値」に見合う報酬水準でオファーを出すことになります。そして、ビジネスパーソンとしての基本能力が同様であったとしても、その人物の出身業界や年齢によって、報酬水準には小さくない違いが存在します。

結果として、同じ新入社員同士で、「当社にとっての当面の人材価値」は等しいにもかかわらず、基本給が500万円の社員もいれば、1,000万円の社員も存在しうることになります。入社後の成長や活躍に基づき、都度の昇給などによって徐々にその差は解消されていくのですが、短期的には存在する課題であるわけです。

貢献にこそ報いる!

そこで日本M&Aセンターとして導入したのが「貢献年収」という報酬思想です。これは、よく言われる「同一労働同一賃金」とは似て非なるものです。

「同一労働同一賃金」は、同じ仕事をしている人には同じ給料という考え方で、ブルーカラー的な発想であると考えられます。つまり、インプット(=努力)やプロセス(=姿勢)に対して報酬を払うという概念です。

これとは異なり、当社の「貢献年収」は、アウトプット(=成果)に対して支払うものであり、M&Aの仲介を生業(なりわい)とする当社のコンサルタント、まさにホワイトカラーを処遇する仕組みです。

世の中の一般的な報酬制度は「積み上げ方式」でしょう。ベースとなる基本給に、何らかの変動給(ボーナス、インセンティブ、キックバックなど)が加算されるものです。しかし、この方式ですと、基本給の違いの部分は永遠に解消されません。

そこで日本M&Aセンターでは、積み上げではなく、貢献から逆算して変動給の額を決めるという仕組みを導入しました。案件数、売上、利益、顧客サービス品質などからなる個別コンサルタントの貢献を数値化・金額化して「あるべき年収」を算出し、それと基本給との差をインセンティブとして支払っています。

例えば、Aさん(基本給500万円)、Bさん(基本給1,000万円)、Cさん(基本給750万円)の3名の「貢献額×〇〇%」が同額の1,200万円であったとしたら、それぞれに基本給との差額をインセンティブとして(Aさんには700万円を、Bさんには200万円を、Cさんには450万円を)支払います。つまり、基本給が違っていても、貢献が同じであれば、年収は同じになるということです。

同レベルの貢献をした3名の社員の処遇

これは、伝統的な人事屋の発想からは出てこない制度であるように思います。営業出身の社長が考案したこの「貢献年収」に、私は「おー! なるほど!」とうならされました。

このように長年人事に携わってきた人には考えもつかない案を、人事の「門外漢」の人たちだからこそ、思いつくことがあるかもしれません。人事制度の改訂などに煮詰まったときには、他部門の経営リーダーと話をしたり、現場に出て社員の生の声を聞いたりしてみるのもいいのではないでしょうか。

また、同じ人事でも業界や業種が違えば、自分にはない全く新しいアイデアを持っているかもしれません。自社も他社も含めて、幅広い人たちから学ぶ姿勢が人事リーダーには求められます。

有賀誠の“Rock & Roll”な一言
人事屋の発想には限界があるかも。
門外漢のワイルド・アイデアから学ぼう!

有賀 誠
有賀 誠
株式会社日本M&Aセンターホールディングス CHRO/株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 人材本部長 人材ファースト管掌

(ありが・まこと)81年 日本鋼管入社。97年 日本GM入社。部品部門デルファイの取締役副社長兼AP人事本部長。03年 三菱自動車常務執行役員人事本部長。ユニクロ執行役員を経て06年 エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長。その後、日本IBM理事、日本HP取締役人事統括本部長、ミスミ統括執行役員人材開発センター長。23年4月より現職。ミシガン大学MBA。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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