誤解、偏見、思い込み!?
達人が教える“本当のダイバーシティ組織”とは(後編)[前編を読む]
株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
佐々木 かをりさん
日産ゴーン氏に改革を促した国際女性ビジネス会議の“体感”
日本企業は、ダイバーシティをどのように進めていけばいいのでしょうか。ダイバーシティを推進し、改革を加速するためには、どういう施策が有効だと思われますか。
他社のケーススタディや経済的効果の算出など、教育研修を通じた多様な学びやトレーニングはもちろん必要でしょう。しかし、頭で理解する知識に加えて、それ以上に重要なのは「体感」を増やすことだと、私は考えています。ダイバーシティというものを実際に見て、聞いて、心に刻んで腹落ちさせる体験が、それを推進する一番のエンジンになるに違いない。そんな思いから、本物のダイバーシティを体感できる場所として、私は1996年から年に一度、「国際女性ビジネス会議」を企画・開催しています。20回目となった昨年は、参加者が1100名を超え、安倍晋三首相にもご登壇いただきました。この種のイベントとしては、国内最大規模です。参加者からも平均満足度99.5%という、極めて高い評価を過去20年間いただいています。各企業でダイバーシティに取り組む方々にとっても、これ以上ないトレーニングの機会となるでしょう。
名称は「国際女性ビジネス会議」ですが、男性も参加できるのですか。
もちろんです。昨年は、男性が約1割。ある上場企業の60代の社長さんで、ウェブからご自分で申し込んで参加された方もいらっしゃいました。年代も職業も違う参加希望者全員が、国際女性ビジネス会議の公式サイトから、一人ひとり申し込んで参加しているのが、大きな特長でしょう。自分から意識し、希望して参加しているのです。もちろん、講演者も熱い方ばかりです。それだけ志の高い、熱意のある人たち1000人以上と出会い、朝の開会時から夜の終了時までの10時間を、ともに刺激し合いながら過ごすことを想像してみてください。その体験、体感こそがダイバーシティの真髄。まさに百聞は一見にしかず、ですよ。
上場企業の社長も参加されたということですが、組織のトップやリーダーがそういう場所に出かけ、自らダイバーシティを体感することは非常に重要ですね。
実際、この国際女性ビジネス会議では、会議の体感がリーダーをたびたび動かしました。リーダーが動けば、組織は一気に変わります。その代表例が、以前、講演者として参加してくださった日産自動車のカルロス・ゴーンさん。30分のスピーチで終わってお帰りになるはずが、質疑応答もされると、会場からたくさんの手が挙がったんです。そして参加者側が流暢な英語で国際会計、組織論などを質問し、素晴らしかった。すると、ゴーンさんは講演の後も長く会場に残られ、多くの女性たちと熱心に話し込まれていました。日産にダイバーシティ推進室ができたのはその後です。ダイバーシティを進め、組織改革のスピードを加速する一番の原動力は“体感”、特にリーダーへの影響は段違いであることを、あらためて確信する出来事でした。今年、2016 年7月18日に開催予定の第21回目の国際女性ビジネス会議でも、ダイバーシティ実現の志をともにする多くの企業トップや人事リーダーの方たちに、そうした機会をご提供できるのを楽しみにしています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。