Jリーグ 村井チェアマンに聞く!ビジネスで発揮してきた人事・経営の手腕を、
Jリーグでどう生かしていくのか?(後編)
~グローバルで勝つために必要な「成長戦略」[前編を読む]
公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)チェアマン
村井満さん
内外を問わず、「経営人材」「マネジメント人材」を育てていくことが急がれる
人の育成など、人材関連ではどういう点が大切だとお考えですか。
まず、サッカー選手のセカンドキャリアです。毎年、Jリーグには100人近くの選手が入団します。すると、定数が決まっていますから、100人くらいの選手が引退することになります。日本では3年連続、男の子のなりたい職業のナンバーワンはサッカー選手です(第一生命保険調査)。子どもたちにとって夢の職業に就いた人たちの人生がハッピーでなければ、子どもたちの夢を裏切ることになってしまう。そういう意味でも、セカンドキャリアは非常に大切です。
セカンドキャリアは、何もコーチや監督だけに限りません。日本が始めてFIFAワールドカップに出場した1998年フランス大会のアジア予選で、決勝ゴールを決めたことでも知られる岡野雅行氏は現役を引退した後、鳥取のジェネラル・マネジャーに就任し、経営・管理する側のスタッフとしてセカンドキャリアを歩んでいます。私は元選手が経営人材に育っていく、こういうケースをもっと増やしていくことはとても大事だと思います。場合によっては、サッカー界以外でもいい。日本には、スポーツビジネスに関係する会社はたくさんありますから。
つまり、サッカー選手だった人たちが、経営人材やマネジメント人材として育っていくようなインフラをつくることが重要だということです。そういう経緯もあって今、立命館大学とタイアップしながら人材育成プログラムをつくろうとしています。私もサッカー界の外から来た人間ですが、サッカーをより発展させていくには、サッカー関係者だけではなく、ビジネス展開に不可欠なITやマーケティング、金融などの外部のプロフェッショナル人材がサッカー界に流入してくるケースがもっとあってもいいと思います。経営人材、マネジメント人材を育てていくことを考えた場合、こうした二つの系統の人材開発が、サッカー界には求められていると思います。
村井さんが長年リクルートで人事や経営に携わってこられたご経験は、現在の仕事でどのように役立っていますか。
リクルートにいた時には、リクルート事件があり、バブル経済崩壊でダイエーの資本傘下に入り、インターネットの普及で紙媒体がなくなる、という「三重苦」の中にいました。普通であれば、1兆4000億円の有利子負債を抱えていたら、その時点で会社は終わりです。それが今では借金を全て返済し、一部上場するということになった。つまり、人がしっかりと夢を持って結束すればどんなことでも乗り越えられるということです。逆に、どんな大企業でも、またどんな優秀な人がいても、夢を持たずに変革していくことを躊躇していたら、どんどんだめになっていきます。
リクルート事件の時、私は人事部にいましたが、その後の1年間で3人しか採用できませんでした。いくら一所懸命に口説いても、学生を採用できないことを身をもって経験しましたが、一方で、情報産業におけるデジタル化の分野で日本一の企業になろうという世界観を持っていました。そういう夢を持つ人たちが集まって、しっかりとビジョンを共有していけば、越えられないものはない。この時の経験は、今でも仕事していく上での原風景となっています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。