企業の震災対応
~住宅確保策や融資、計画停電への労働時間面の対処~
3月11日に発生した東日本大震災は、大きな被害をもたらし、その後の計画停電なども含め、日本企業の事業活動に多大な影響を与えました。民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)への対応アンケート」を実施。今回はその中から、従業員に対する住宅確保策や融資、計画停電への労働時間面の対処について取り上げます。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)への対応アンケート」
1. 調査対象:労務行政研究所ホームページ上で「労政時報クラブ」に登録いただいている民間企業から抽出した人事労務担当者5,574人
2. 調査時期:2011年3月28日~3月31日
3. 調査方法:WEB によるアンケート
4. 集計対象:405人(1社1名)。回答者の勤務する事業所は、東京都58.1%、大阪府9.2%、神奈川県7.2%、愛知県4.5%、千葉県・京都府各2.5%、静岡県2.2%、茨城県・埼玉県各2.0%で、これらの合計で9割を超える
震災による被害・影響
被害・影響を受けている企業は83%
まず、震災による各社の被害・影響を[図表1]の選択肢で回答いただきました(複数回答)。
これによると、「(4)事業活動に大きな影響はない」とする企業は16.8%で、逆にみると83.2%の企業が被害・影響を受けていました。
具体的には、「(3)停電やガソリン不足等により、間接的な影響を受けている」が63.2%、「(2)主要な仕入先・販売先が被災地にあり事業活動に影響を受けている」が52.3%、「(1)被災地に事業所があり、直接的な被害を受けた」が46.7%です。
規模別にみると、(1)~(3)とも規模の大きい企業ほど割合が高く、広域展開している企業ほど影響を受けていることがみてとれます。
被災従業員に対する住宅の確保策
“取り扱い決定企業”の7割が自社所有社宅などの提供、賃貸住宅の紹介などを実施
被災従業員に対する住宅確保策についてうかがったところ、「(7)住宅の確保策の対象になるような被災従業員はいない」とする企業が62.8%と多く、その割合は規模が小さい企業ほど高くなっています。
一方、「(2)賃貸住宅の紹介、または借り上げ社宅の提供を行った(行う)」が11.3%、「(1)自社所有の社宅・寮を提供した(する)」が9.5%、「(3)ホテルなど民間の宿泊施設を用意した」が7.4%など、何らかの住宅確保策を講じる企業もあります。
これを、「(6)分からない・未定」「(7)住宅の確保策の対象になるような被災従業員はいない」を除く“取り扱い決定企業”でみると、「(2)賃 貸住宅の紹介、または借り上げ社宅の提供を行った(行う)」が38.4%、「(1)自社所有の社宅・寮を提供した(する)」が32.1%、「(3)ホテル など民間の宿泊施設を用意した」が25.0%と各2~3割台の企業が何らかの策を講じており、規模別にみると、1,000人以上の大企業でその割合が高く なっています。
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