突然の申入れにどう対応するか?
合同労組からの団交申入れのパターン&基本的対応法
弁護士
山田 洋嗣
1. 労使トラブルの増加と合同労組の関与
(1) 個別的労使紛争に主として関与
いわゆるリーマンショック後の急激な景気の悪化、インターネットによる情報収集の容易化等に基づく労働者の権利意識の拡大、法曹人口の増員、労働審判手続に代表される労働紛争解決手続の拡充等により、近時、労使紛争が増加傾向にあります。
そして、上記増加傾向にある労使紛争において、近年、その存在感を大きくしているのが、いわゆる合同労組やユニオンと言われる企業外労働組合です(以下、「合同労組」という)。
合同労組については、明確な定義はありませんが、一般に「中小企業労働者を主たる組織対象とし、企業の中ではなく一定地域を団結の場として組織された労働組合であり、個人加入の一般労組を純粋型とするもの」等と把握されています。
大企業、中堅企業を中心に、我が国の組織労働者の約9割は、いわゆる企業別労働組合に加入しており、これら 企業別労働組合が労使協議手続を中心に協力的な労使関係を確立した1980年代後半以降、裁判所や労働委員会では、企業別組合が当事者になった事件は減少 し、代わって、合同労組が当事者となる事件が増加し、近年は労働委員会における不当労働行為申立や争議調整申請の過半を合同労組が当事者である事件が占め ていると言われています。また、近時激増している個別的労使紛争に主として関与しているのも合同労組です。
周知の通り、現在、多数の合同労組がインターネット上にホームページを有しており、ブログ等を活用して自ら の活動内容を広報し、同ホームページを窓口にして労働相談を実施し、必要に応じて、その相談者を組合に加入させたうえで、団体交渉を申入れ、それと並行し て、労働基準監督署や労働局等の行政機関への申告、団体行動権の行使、訴訟の提起、労働委員会への不当労働行為救済申立等を行っています。
上記合同労組が労使紛争に関わる経緯からもわかる通り、合同労組が関与する事件の多くは、個別的労使紛争を契機としたものであり、また、トラブルが発生した後に、組合への加入手続が行われるケースが多いと思います。
集団的労使紛争については、個別的労使紛争の解決にあたり、団体交渉の申入れが行われた際、使用者の対応に不備があった場合や、個別的労使紛争の解決を優位に進めるための、いわゆる「てこ」とするために、生起することが多い、というのが実務家としての印象です。
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