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残業時間・ムダな労働時間削減、生産性向上のための
「時短マネジメントシステム」

時短コンサルタント・社会保険労務士

山本 昌幸

本誌の2014年5月号(46ページ)で、「『営業職』の労働時間短縮のための業務見直しのポイント」を掲載させていただき、読者の方から多くの反響をいただきました。その続編掲載のご要望をいただきましたので、今回執筆させていただきます。

前回は、「阪急トラベルサポート事件」の最高裁判決が出た後ということもあり、職種の対象をあえて“営業職”としましたが、前回および今回、私が構築した「時短マネジメントシステム」は、すべての業種に当てはめられる仕組みですから、そのことを念頭にお読みいただければと思います。ただ、業種や業態等により時短の成果の大小が異なる場合がございますので、そのことも頭の片隅に置いていただければと思います。

Ⅰ. 時短に取り組まないリスクについて

1. 長時間労働を放置していてよいのですか?

本誌の読者には社労士の方も多いと思いますので、「釈迦に説法」になるかもしれませんが、時短への取組みをせずに長時間労働を放置しておくリスクについていくつか挙げてみましょう。

2. みなし労働時間制が否認されたら…

前回執筆記事では長時間労働がなくならない理由として、みなし労働時間制を採用しているため基本的に労働時間の変動に関わりなく支払賃金額が変動しないことを挙げました。しかし、このみなし労働時間が否認された場合、どのような影響が及ぶのか、リスク対策の観点で考えてください。

3. 定額残業代が否認されたら…

定額残業代制を採用している組織も多々あると思いますが、定額残業代の是非については年々厳しい判断に変わってきています。もし、定額残業代について否認された場合、その否認の内容にもよりますが、影響を受けることは必至です。

4. 管理監督者性が否認されたら…

“管理監督者”とは、「経営者と一体的な立場で仕事をしている」要員のことであり、呼称は関係ありません。実際に、肩書きが「工場長」であっても管理監督者として認められなかった判例もあります(橘屋割増賃金請求事件・大阪地判昭40.5.22)。そもそも、20人以下の組織では役員以外に“経営者と一体的な立場”の要員がいるとは思えません。

仮に“管理監督者”としての立場が否定された場合、遡って未払い残業代の請求を起こされる可能性を否定できません。

5. 過重労働解消キャンペーンにおける重点監督実施状況結果について

2014年11月に厚生労働省が実施した調査結果として、違法な時間外労働があった事業場数は2,304事業場で調査対象事業場の50.5%に当たります。

この調査対象事業場は、長時間過重労働による過労死等や若者の使い捨てが疑われるいわゆる「ブラック企業」的な事業場が対象であったため、我が国の全事業場の状況を反映した調査結果とは言えませんが、問題ある結果であることは事実でしょう。

Ⅱ. 時短を実現することにより得られること

1. 人件費の削減 → 純利益のアップ

時短を実現することにより得られること

「時短マネジメントシステム」に取り組み、生産性の向上について「5人分の仕事を4人で処理する」とスローガン的に伝えていますが、仮に謙虚な数値として、20人分の仕事を19人で処理した場合、1人分の人件費(労働・社会保険料等を含めて)が浮くのです。その額たるや年間ウン百万円ですね。また、月額給与25万円の従業員20人規模の企業で1人当たり月5時間、残業時間を削減できた場合、年間200万円以上の人件費削減となります。

2. 人材採用が容易になる

「マイナビ」が調査した大学生・大学院生が企業に公開してほしい情報として、「離職率」「平均勤続年数」「有給休暇取得率」「産休や育休制度の利用率」が上位4情報となっていますので、1つずつ見てみましょう。

  1. 離職率:離職の原因は様々だと思いますが、残業時間や休日出勤が過度の場合、離職率は高くなるでしょう。
  2. 平均勤続年数:これも「離職率」と同様でしょう。
  3. 有給休暇取得率:労働時間が長く、休日出勤が多ければ当然、有給休暇取得はままならないでしょう。
  4. 産休や育休制度の利用率:これも「有給休暇取得率」と同様でしょう。
  5. 要するに、この4つについて改善できれば、人材採用が容易になるのです。そのためには残業時間・ムダな労働時間削減が必須となります。

3. ワーク・ライフ・バランスの実現

私はワーク・ライフ・バランスとは、「多様な働き方を受け入れ、実践する組織風土の構築」と捉えていますが、その組織風土を実現できるのです。“多様な働き方”を実現するためには、ムダな労働時間がはびこっていてはダメなのです。

4. 労働関係法令等改正への対応

現在、労働基準法をはじめ様々な労働関係の法案の改正・新設が討議されており、これらに対応するための共通項目として時短が挙げられることは言うまでもありません。

【現在、議論中で今後導入検討の施策】

  • 有給休暇5日消化義務
  • 労働時間上限制
  • インターバル規制
  • 女性の活躍推進
  • 若者雇用対策
  • 月60時間超の時間外労働割増率の中小企業への猶予撤廃 等々
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