「女性管理職増加」「多様性の達成」は通過点 マタハラにいち早く取り組んだプルデンシャル生命に聞く“多様性のその先”
プルデンシャル生命保険株式会社 多様化推進チーム
玉井史隆さん 出水直子さん
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ママネットワーキング、パパネットワーキングで情報共有
制度以外で取り組んだことはありますか。
玉井:制度を導入しても、活用してもらえなければ意味がないので、社員の理解促進や風土づくりに力を入れました。妊娠から出産、復職までのフローがわかるパンフレットを作成し管理職に配布したほか、ママネットワーキング、パパネットワーキングという集まりを作って情報共有できるようにしました。パパとママで分けたのは、一緒にすると男性社員が参加しにくいかもしれないと考えたからです。
ネットワーキングを設けることで、どんな効果がありましたか。
玉井:パパネットワーキングに参加しているのは、料理が得意で家事に積極的な人や、自称ワーカホリックの人など、さまざまです。この集まりの良いところは、将来のイクボス作りに役立っていること。短い期間でも、育児の大変さがわかることは大切です。また、働き方に関して、経営側に伝えるネタ集めの場という意味でも有意義です。
出水:ママネットワーキングでは、キャリアや家事の方法、ベビーシッターの利用の仕方といったことについても情報交換を行っています。ベビーシッターといった家事・育児のノウハウについてはセンシティブなことなので、会社からは話題にしづらく、助かっています。どちらも自助的に解決することを目指してほしいと思っています。
男性の育児休職の取得状況はいかがでしょうか。
玉井:配偶者の出産にあわせて長期休暇をとる社員は多かったのですが、育児休職をとる社員はあまりいませんでした。そこで、男女共通で育児休職の最初の7日間を有給扱いとし、さらに7日以上育児休業を取得した社員には、復帰時に「職場復帰奨励金」を支給することにしました。
効果はありましたか。
玉井:男性の育休取得率は制度の施行後、確実に増えています。制度を導入した際、社長からのメッセージも合わせて配信したのですが、それをきっかけに、男性でも育児休職を取得することに抵抗がない風土が一気に広がりました。取得期間は1ヵ月の人もいれば、1週間くらいの人もいて、人それぞれです。出生後2~3ヵ月後や、パートナーの復帰のタイミングで取得される方が多いですね。パパネットワーキングの参加者に男性育休について話し合ってもらう際には、ママネットワーキングの参加者に聞いた「いつ育休をとってほしいのか」というアンケート結果を聞かせたりもしました。
ママ・パパ当事者への制度を厚くすると、当事者でない人が不公平感を感じることがありますが、貴社ではどのように対応されていますか。
出水:先ほどご紹介した在宅勤務やフレックス勤務の制度拡充も一つですが、ママ・パパだけではなく全社員にとって働きやすい環境整備と風土醸成に取り組むことが大切だと考えています。当社では、全チームが働き方改革へのチャレンジを宣言し、半年かけて実現する、という取り組みを行っています。大きなテーマとしては「早帰りや有休取得」「フレックス・在宅制度の積極活用」「コミュニケーション強化」「仕事の見える化」などがあります。チームの課題を話し合うだけでも意味があり、マニュアルの改善につながるなど顕著な効果が出ていました。
また、今年はコンテストの開催を予定しています。各チームに「プロモーター」というチャレンジを促進する人を設け、チームの取り組みと効果を説明してもらいます。コンテスト形式で競い合い、ベストプラクティスを投票で決める、というものです。「女性が増えれば良い」「多様であれば良い」というのは通過地点で、最終的にイノベーションやクオリティ向上につながることが必要です。
会社全体が強くなっているという実感はありますか。
出水:まだこれからのところもありますが、定期的に話をするだけでも違います。今年は、チームリーダーに自らチャレンジを実行してもらうことになりました。例えば在宅勤務であれば、チームリーダーが率先して在宅勤務を活用する、ということですね。こういった取り組みが着実な成果になっていくと思います。
ところで、素敵なダイバーシティのマークですね。
出水:これは多様な色が入り混じってできる、手まりをイメージしたものです。外資系の会社だと、ダイバーシティの取り組みは海外の取り組みから来ているという印象を持つ人もいます。そうではなく、日本で暮らす私たちが率先して初めていることだという意味を込めています。
糸が寄り合って、ひとつになっているのもいいですね。多様な人材がまとまってひとつになっている姿は、まりのようだということですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
取材:小酒部さやか(株式会社natural rights 代表取締役)
2014年7月自身の経験からマタハラ問題に取り組むためNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞し、ミシェル・オバマ大統領夫人と対談。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より『マタハラ問題』、11月花伝社より『ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~』を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rights(自然な権利)となるよう講演・企業研修などの活動を行っており、Yahooニュースにも情報を配信している。
ライター:水野宏信/カメラマン:村上岳- 1
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