育児休業中社員に対する退職勧奨
いつも大変お世話になっております。
この度、社内の一部部門で人削減を行うこととなり、以下の質問に対してアドバイスをいただけると幸いです。
状況:
組織内の一部門において、業務内容の見直し・チーム編成自体の再構築が行われることとなり、その結果いくつかの人員ポジションが不要となることから、併せてそのポジションにアサインされている社員も削減することとなる。
その方法として退職勧奨を行う。(退職パッケージは用意)
ただし、対象の中に”育児休業中”の社員が1名含まれている。向こう1年は休業となる予定。
当該社員のパフォーマンスや勤務態度は非常に良好である。あくまで上記の事由による人員削減の対象となったものである。
ご質問:
1)当該の育児休業中社員に対して、”人員整理”のための退職勧奨を行うことは合法であるか?
通常であれば社会通念上相当と認められる退職勧奨でも、この場合は退職勧奨の対象が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱する...と判断される可能性があるとも感じております。
過去に、産後数カ月で退職勧奨を受けた労働者がユニオンを通じて男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に反すると告発した結果、労働局は法律違反と判断し、会社に対して是正措置命令がなされたとの記事も目にしたことがあったため、改めて明確にしたいのです。
2)合法である場合、どのようなリスクがあるか。
3)実行に移す場合、注意すべきポイント何か。
以上、よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/16 13:43 ID:QA-0162153
- M.Iさん
- 新潟県/機械(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
育児休業中の社員への退職勧奨は、育児・介護休業法の不利益な取扱い禁止規定
に違反するリスクが極めて高いと言えます。
勤務態度が良好であっても、育児休業取得を理由とした不利益な取扱いと見なされ
る可能性が高く、その場合は違法の判断が下ります。
リスクとして労働局の是正命令、損害賠償請求、企業イメージの毀損が伴います。
実行する際は、代替ポジションへの配置転換を最優先で検討し、育児休業とは
完全に無関係である客観的・合理的な選定基準を確立する必要がありますが、
労務トラブルに発展した際の立証ハードルは高く、ご回答としては本対応が、
明らかに合法になると申し上げるのは難しいものです。
投稿日:2025/12/16 14:36 ID:QA-0162154
相談者より
適格なアドバイスをいただき、大変ありがとうございました。
この場合、「育児休業取得を理由」とはしておらず、”対象となった複数名の中に、偶然育児休業中の社員がいた”という状態ではありますが、そのような場合であっても、不利益な取扱いと見なされる可能性が高くなる、という解釈をしてよろしいでしょうか?
投稿日:2025/12/16 15:03 ID:QA-0162155大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.育児休業中社員に対する退職勧奨の適法性
結論から申し上げると、育児休業中であること自体を理由として、又は育児休業と密接に結び付いた形で退職勧奨を行うことは、原則として極めてリスクが高く、違法と評価される可能性が高いと考えられます。
育児・介護休業法第10条は、育児休業の申出・取得を理由とする不利益取扱いを禁止しており、同法第16条は解雇の禁止を明示しています。形式上「解雇」ではなく「退職勧奨」であっても、
勧奨の時期
勧奨の相手(育休取得者のみ・優先的対象)
勧奨理由の説明内容
等から、実質的に育児休業取得を理由とした排除・圧力と評価される場合には、同法違反と判断されます。
ご質問のケースでは、人員削減という経営上の理由自体は合理性を有し得ますが、「育児休業中」という立場にある社員を対象に含めること自体が、社会通念上相当な退職勧奨の範囲を逸脱すると判断される可能性が相当に高いといえます。実務上も、産前産後休業・育児休業の直後または期間中の退職勧奨が違法とされた行政指導例は複数存在します。
2.想定されるリスク
主なリスクは以下のとおりです。
(1) 育児・介護休業法違反による行政指導・是正勧告
(2) 不法行為(人格権侵害)としての損害賠償請求
(3) 退職合意の無効主張(自由意思欠如)
(4) 労働組合・ユニオンを通じた紛争化、社会的評価の低下
特に「他の社員と同列に扱った」と会社が主張しても、育休中であること自体が交渉上の著しい不利を生むため、自由意思が否定されやすい点に注意が必要です。
3.実行する場合の注意点(※極めて慎重な判断が必要)
仮に検討せざるを得ない場合でも、以下は最低限の留意点となります。
育児休業中であることを理由・動機に一切含めないこと
復職後に配置可能性を十分に検討した上で、なお余剰であることを客観資料で説明できること
退職勧奨はあくまで「任意」であり、拒否しても不利益がないことを明確に伝えること
書面・メール等の表現は極めて慎重に管理すること
原則として、育休期間中の実施自体を避け、復職後に改めて判断すること
4.総括
本件は「合法か否か」よりも、違法と評価されるリスクが極めて高い類型といえます。実務的には、育児休業中社員を退職勧奨の対象から一旦除外し、復職後に配置転換・職務付与の可能性を尽くした上で、改めて判断する対応が最も安全です。経営判断としての合理性があっても、育休取得者に対する取扱いは特に厳格な配慮が求められます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/16 16:17 ID:QA-0162157
相談者より
客観的かつ合理的なアドバイスをいただき、大変ありがとうございました。グレーな要素が多いものの、やはり労働法の基本原則に基づいた判断が重要であることを再認識いたしました。再考のための情報として活用させていただきます。
投稿日:2025/12/17 10:49 ID:QA-0162182大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
法律問題ではなく人事問題として考えるべきでしょう。
産育休中社員をリストラすることはきわめてリスキーであり、真の理由が何であるかなどは関係なく、大きな争議となる可能性が高い点が人事的課題です。
まして勤務実態に問題も内容であれば、ますます恣意的リストラだという攻撃を受けやすいでしょう。
解雇回避措置やリストラがやむを得ないほどの経営危機状態を客観的に証明できない限りは対象とすべきではないといえます。
投稿日:2025/12/16 17:03 ID:QA-0162160
相談者より
承知しました。やはり法の原点に返って再考するための客観的アドバイスとして参考とさせていただきます。ありがとうございました。
投稿日:2025/12/17 10:50 ID:QA-0162183大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
厚生労働省はマタハラ基準を発表し、
平成26年最高裁を踏まえて、
妊娠・出産・育休等の事由を「契機として」不利益取扱いが行われた場合は、
原則として妊娠・出産・育休等を「理由として」不利益取扱いがなされたと解され、
法違反だとされています。
そして、原則として、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断するとしています。
よって、育休中の社員は、原則として削減できませんが、
特段の事情がある場合には、例外として削減対象となり得ます。
特段の事情とは、業務上の必要性の具体的な度合いによります。
投稿日:2025/12/16 17:14 ID:QA-0162163
相談者より
アドバイスをいただき、大変ありがとうございました。ございました。グレーな要素が多いものの、過去の判例からも再考のための情報として活用させていただきます。
投稿日:2025/12/17 10:52 ID:QA-0162184大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします(追加回答)
以下、追加質問について、回答いたします。
|この場合、「育児休業取得を理由」とはしておらず、対象となった複数名の
|中に、偶然育児休業中の社員がいた”という状態ではありますが、そのような
|場合であっても、不利益な取扱いと見なされる可能性が高くなる、という解釈
|をしてよろしいでしょうか?
上記、不利益な取り扱いと、社員側より主張される可能性が高くあると表現した
方が正確かと存じます。
勿論、貴社の意図はそうでない場合であっても、社員側が納得されなければ、
法令上の明確な基準はありませんので、最終的な解決は労基署ではなく、
民事の場で行われ、貴社の立証の有効性が審判されることとなります。
貴社が慎重なご判断をされたいとのご意向が強い場合は、民事訴訟の専門家で
ある、弁護士へご相談されることをお勧めいたします。
投稿日:2025/12/16 17:45 ID:QA-0162166
相談者より
承知しました。追加のご質問にも関わらず、丁寧なアドバイスをいただき、ありがとうございました。
投稿日:2025/12/17 10:55 ID:QA-0162186大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
不利益な取扱い
以下、回答いたします。
(1)「育児・介護休業法」第10条では、「事業主は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」旨が定められています。
(2)このうち、「理由として」については、次のように解されています。
1)育児休業等の事由と不利益取扱いとの間に「因果関係」があることを指す。
2)育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」いる(事由と不利益取扱いとの間に因果関係がある)と解され、法違反となる。
3)この「契機として」については、原則として、育児休業等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断する。ただし、事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由の終了後の最初の当該措置の実施までの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断する。
(3)また、「解雇その他不利益な取扱い」については、「退職の強要を行うこと」が含まれています。
(4)以上を踏まえれば、
1)「当該育児休業中社員に対して、「人員整理」のための退職勧奨を行うことは合法であるか?」とのことですが、合法的なものとして認められる余地はあると考えられます。
2)「合法である場合、どのようなリスクがあるか」とのことですが、上記(3)の「退職の強要」とされ、法違反の扱いを受けることが考えられます。
3)「実行に移す場合、注意すべきポイント何か」とのことですが、「不利益な取扱い」でさえも許容される例外として次の2つのことが挙げられています。この例外を念頭に置いて、合意退職に向けて誠実かつ丁寧に話し合っていくことが肝要であると考えられます。
例外1)業務上の必要性から不利益取扱いをせざるをえず、
業務上の必要性が当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき
例外2)労働者が当該取扱いに同意している場合で、
有利な影響が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
(御参考)妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い(厚生労働省)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137181.pdf
(御参考2)妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A(厚生労働省)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089160.pdf
投稿日:2025/12/16 18:51 ID:QA-0162169
相談者より
客観的かつ非常に具体的なアドバイスをいただき、大変ありがとうございました。今回のケースではグレーな部分があるものの、過去の判例からの洞察も含めた判断が重要であることを再認識いたしました。
再考のための情報として活用させていただきます。
投稿日:2025/12/17 10:54 ID:QA-0162185大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
要は、当該社員が納得するかどうかです。
納得したうえで退職に同意するのであれば、もとより問題はありませんが、パフォーマンスや勤務態度は非常に良好であるという社員にしてみれば、組織内の一部門における業務内容の見直し・チーム編成自体の再構築の結果、いくつかの人員ポジションが不要となるという理由であっても、削減(リストラ)対象とされることには納得はしないでしょう。
それでも計画を前に進めたいということであれば、今なぜ組織改編が必要なのかを丁寧に説明し、同意を得ることが前提になりますが、どんな理由であれ削減対象とされることに納得できる社員などいません。
ユニオン(社外労組)が介入し、話し合いを求めてきた場合、経営に専念するどころの話ではなくなり、解決が困難となれば民事の場での争いに発展する可能性も高まります。
慎重な対応が望まれます。
投稿日:2025/12/17 08:09 ID:QA-0162172
相談者より
俯瞰的かつ客観的なご意見とインプットをいただき、大変ありがとうございました。
実際に起こり得るであろうリスクに関しても承知しました。
投稿日:2025/12/17 10:57 ID:QA-0162187大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、1)につきましては、育児休業中の労働者に関しましては解雇制限はかかりませんので、文面内容を拝見する限りですと合法的な措置と考えられます。
2)につきましては、産後数カ月で退職勧奨された時と類似のリスクが考えられます。産後休業後については30日間の解雇制限にかかりますので、過去はそうした事案だったかもしれませんが、そうでなくとも産休を取得された事等を理由とした退職勧奨と判断される可能性もございますし、育児休業の場合も御社の真意は別としまして休業取得を理由としたものと判断されてしまうリスクが多少存在するものといえます。
3)につきましては、上記リスクを回避する為に、退職勧奨の理由を文書で明確に提示される事、育児休業中でない社員も同様に退職勧奨の対象となる事をきちんと説明される事が重要といえるでしょう。
投稿日:2025/12/17 22:33 ID:QA-0162196
相談者より
客観的なアドバイスをいただきありがとうございました。このケースでは通常以上にリスクが高いことは明確であると判断しました。ビジネスのジャッジではありますが、これらもキーポイントとしてさらに精査することといたします。
投稿日:2025/12/18 08:14 ID:QA-0162201大変参考になった
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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