第104回 育児休業の社会保険料免除
令和4年10月から、育児休業期間中の社会保険料の免除要件が改正されました。
この法改正は、令和4年10月以降に開始した育児休業が対象になります。令和4年9月以前に開始している育児休業については法改正の対象とはならず、これまでの通りの取扱いになります。
今回は、改正後の産前産後休暇・育児休業期間中の社会保険料の免除について見ていきましょう。
<産前産後休暇の概要>
従業員が出産するときは、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内で本人が休業の希望をした場合は、産前休暇を取得することができます。
また、出産後8週間については、本人が産後休暇を取得することを希望していなくても復帰することはできません。ただし、出産後6週間を経過している場合で、本人が職場復帰を希望している場合は、医師が認めた仕事内容であれば復帰することができます。
この産前産後休暇の期間は、就業規則に定めておけば有給でも無給でも良いのですが、健康保険から出産手当金が支給されるため無給にしている会社が多いようです。
産前産後休暇期間中も社会保険料は免除されます。月末に産前産後休暇を取得している場合、その月分の月額保険料とその月に支払われた賞与に対する保険料はかかりません。
賞与についても1ヶ月単位で見ますので、賞与が支給された後に産前産後休暇を開始した場合で月末まで継続している場合は、休暇前に支給されていたとしても賞与に対する保険料が免除になります。反対に、産前産後休暇中に賞与を支給されても月末までに復帰した場合は、その賞与の対しての保険料が必要になります。
<育児休業の概要>
社員が1歳に満たない子供を養育するために休業を希望するときは、育児休業を取得することができます。また、子供が保育園に入園できないなど一定の要件を満たせば1歳6ヶ月(再度の申請により最長で2歳)に達するまで育児休業を延長することができます。この育児休業中の給与の支給については、会社の規則で定めておけば特に法律的な制約はありません。そのため、有給でも無給でも良いことになります。
育児休業中は、健康保険と厚生年金保険の保険料が会社負担、従業員負担のいずれも免除されます。また、雇用保険から育児休業給付金の支給がされることになっています。
会社によっては2歳を超える育児休業を認めている場合もあります。社会保険料の免除は3歳まで続きますが、育児休業給付金は最長2歳で終了になります。
<改正後の育児休業期間中の社会保険料免除要件>
これまで育児休業の開始月については、産前産後休暇同様に末日が育児休業期間中である場合には、賞与を含めたその月の保険料が免除されていました。令和4年10月から、この末日の要件に加え、月額保険料については同月中に14日以上育児休業を取得した場合にも免除されることになりました。
これまで月の途中で育児休業を取得しても、その月の末日に復帰している短期間の育児休業の場合は免除の対象外でしたが、法改正により、休業日数が土日等の休日を含めて暦日で14日以上の場合は、開始月の保険料が免除になります。
また、賞与保険料については、賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合に免除されるように変更になりました。1ヶ月を超えるかは暦日で判断し、土日等の休日も期間に含みます。
給与から控除される月額保険料と、賞与から控除される賞与保険料で取扱い方法が変わってきますので、注意が必要になります。
文章だけだとわかりにくいと思いますので、例を使ってみていきたいと思います。
月額保険料のケース 11月1日から11月20日まで育児休業を取得した場合
改正前の要件でみると、月末(11月30日)が育児休業期間中でないため社会保険料は免除されませんでした。今回の改正によって、11月に14日以上(土日等の休日も含めてカウントします)育児休業を取得した場合も、社会保険料が免除されます。
このケースの場合、11月1日から11月20日までの20日間の育児休業を取得しています。休業日数が14日以上となるので11月分の社会保険料が免除されます。
なお、この取扱いは同月内での育児休業に限るものなので、10月31日から11月20日まで育児休業を取得していると、10月は月末が育児休業のため社会保険料が免除されますが、11月分はこれまで通り免除の対象外となります。
賞与保険料のケース 11月20日から12月10日まで育児休業を取得した場合
改正前の要件でみると、月末(11月30日)は育児休業期間中のため、11月中に賞与を支払う場合の保険料は免除となっていました。
今回の改正によって、賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合、賞与の保険料が免除されます。今回のケースでは1ヶ月以下の休業のため、11月、12月ともに賞与に対する社会保険料は免除されず、仮に育児休業中に賞与が支払われたとして保険料を徴収する必要があります。
もし、11月20日から12月20日までの期間の育児休業を取得した場合は、これまで通り、11月に支払われた賞与に対する社会保険料が免除され、12月に支払われた賞与に対する社会保険料は免除の対象外となります。
なお、賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1ヶ月を「超える」育児休業が免除の対象であり、ちょうど1ヶ月の育児休業は免除の対象になりません。1日違いで取扱いが異なりますので、十分注意しましょう。
今回は、育児休業期間中の社会保険料免除要件について説明しました。特に賞与保険料の免除については、少し複雑になっています。
まもなく冬の賞与の支給時期になります。給与計算や賞与計算を行う際は、社会保険料の免除の対象になるか、再確認するようにしましょう。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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