契約満了者への交通費返金請求
【状況概要】 現在、4月末で契約満了となった従業員に対し、5月分として前払い支給済みの交通費(4月26日〜5月25日分)の全額返金を求めたところ、予想以上に論理的な反論を受け、困惑しております。
【弊社の制度】 毎月25日締め・翌月5日支給の給与サイクルで、交通費は1ヶ月分定期代を毎月支給。入社月は後払いですが、2月以降は前払い制として運用しており、入社時研修で説明済みです。
【従業員からの主な反論】
「実際は立替精算制だった。毎月自費で定期券購入後、会社が精算していた」
「定期券は4月15日〜5月14日分を購入しており、会社主張の期間と11日間ズレている」
「給与サイクルでは4月26日〜5月25日分は6月5日支給予定だったが、実際は未支給」
「受け取っていない交通費を返金することは不可能」
【弊社の困惑点】 従業員の反論が予想以上に具体的で、特に給与サイクルとの整合性について指摘され、説明に窮しています。確かに従業員は毎月15日頃に自費で定期券を購入していましたが、弊社としては前払い制のつもりでした。
【ご相談したいこと】
このような従業員からの論理的な反論に対し、どのように対応すべきでしょうか?
従業員からは以前の給与明細(インターネットののサイトで会社のパソコンからログインして初めて見ることが出来る仕様です)に交通費の対象期間の明示の確認に加えて、賃金規則や労働規則の明示を求めています。しかし、会社側としては、そういったものは個人情報保護の観点から提示しないというスタンスです。
前払い制と立替精算制の区別が曖昧だった場合の実務的な対処法はどのように行えばいいでしょうか。
給与明細等の客観的証拠の重要性と、証拠が不十分な場合の対応策や、類似トラブルの予防策や、制度設計時の注意点率直に申し上げて、従業員の主張にも一理あるように感じており、どこまで返金を求めるべきか判断に迷っています。皆様のご経験に基づくアドバイスをいただけますと幸いです。
投稿日:2025/06/08 11:26 ID:QA-0153661
- 寧々さん
- 福岡県/広告・デザイン・イベント(企業規模 31~50人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
ご相談内容を拝見する限り、従業員の反論には一定の合理性があり、制度運用と実態の乖離、説明・記録の曖昧さが問題を複雑化させているように思われます。以下に、法的・実務的観点からの対応策と、今後の予防策について、整理してご案内いたします。
1. 現状に対する基本的な整理
(1)貴社の主張
交通費は毎月「前払い」で支給している。
従って、5月分として前払いした交通費(4月26日〜5月25日分)について、契約満了後(4月末)に使用しない分は返金対象と考えている。
(2)従業員の反論ポイント:
運用実態として「立替精算」に近い(定期券を自費購入→会社から後に精算)。
実際の定期券期間と貴社主張の期間にズレがある(4月15日~5月14日分を購入)。
交通費は支給されていない(未払いの状態である)。
支給されていないものを返金できないという主張は、論理的に妥当。
2. 法的・実務的な対応ポイント
(1)まず確認すべき事実
4月末時点で実際に支給された交通費は何月分か。
「4月26日〜5月25日分」が本当に支給されたのか(※未払いであれば返金請求は成立しません)。
給与明細に交通費の「対象期間」の記載があるか。
実際の記載内容が「3/26~4/25分の交通費」とあれば、主張との整合性が崩れます。
(2)返金請求の妥当性の判断軸
事項→判断基準
実際の交通費支給日→支給されたか否か(6月支給予定=未払いなら返金請求不可)
対象期間の明示→給与明細や規則等で明確にされているか
運用の一貫性→他従業員に対しても同様の運用か、例外があったか
定期券の購入実績→実際に購入された期間が返金請求対象の期間と重なるか
(3)給与規程等の情報開示について
「就業規則」や「賃金規程」は、労基法第106条により労働者へ周知義務があります。
労働者が「見せてほしい」と要求しているのであれば、個人情報保護を理由に開示拒否するのは不適切です(規則自体は個人情報ではありません)。
給与明細等の閲覧手段が限定的(会社PCからのみ)であるなら、十分に閲覧の機会を与えたとは言い難いです。
3. 実務的な対応策(現時点)
(1)冷静に事実を再確認・整理する
(2)実際に支給された交通費の期間・金額
(3)従業員の定期券の購入期間(写しの提出を求める)
(4)社内制度文書の内容(就業規則・賃金規程)
(5)従業員への回答方針
「前払い制」との認識と社内説明はしていたことを伝えつつも、
実際に「支給されていない」または「対象期間のズレ」が確認された場合は、返金請求を取り下げるのが妥当です。
(6)社内合意形成
担当部門だけで判断せず、総務・法務・経理部門と連携して判断材料を揃え、今後の対応方針を固めておく。
4. 今後の制度改善・トラブル予防
制度設計・明文化のポイント
「前払い」「後払い」「立替精算」など支給方式を明確に規定する。
交通費の「対象期間」を給与明細に明示。
定期券購入期間と会社支給対象期間を一致させるか、ズレる場合はその理由を説明する。
トラブル回避のための運用見直し
交通費は定期券の写しをもとに「実費精算」として運用するのも選択肢。
支給条件(例:出勤日数、在籍条件など)を明文化し、契約終了者への対応基準を設ける。
5. 結論と推奨対応
現時点で、交通費が未支給であるなら返金請求は困難です。
対象期間にズレがあるなら、従業員に不利な請求は避けるべきです。
規程類や明細の不備を補う証拠がない限り、従業員主張を尊重するのがリスク管理上適切です。
結論→制度運用と事実確認に曖昧さがある以上、返金請求は取り下げた方が妥当です。そして今後の制度運用を見直す契機とすべきです。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/09 09:45 ID:QA-0153670
相談者より
丁寧にご回答いただき、ありがとうございます。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/06/09 15:37 ID:QA-0153719大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
社員の申立てが正しいのであればそちらに合理性があり、疑義のある交通費返還に問題があるように思います。無理な返還請求はやめて、正しい事実に基づいて対応すべきです。
基準をあいまいにしているのは会社であって、広く全社員に基準含めて明示して周知が義務です。
逆に社員の申立てで間違っていることがあれば、それを指摘するのは問題ありません。じょうきょうからして、正しいのは社員で、会社の対応や制度(これまで)に問題があるのであれば、大至急改善すべきでしょう。
投稿日:2025/06/09 11:55 ID:QA-0153691
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
・従業員さんも感情論というよりは、論理的に意見を言ってますので、
会社としては、従業員さんの意見が事実と異なるでしたら、反論してください。
・以下が事実かどうかです。
→給与サイクルでは4月26日〜5月25日分は6月5日支給予定だったが、実際は未支給。「受け取っていない交通費を返金することは不可能」
・文面を拝見する限り、会社の運用と規定に整合性がないように思われます。
投稿日:2025/06/09 11:59 ID:QA-0153692
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
4月末で契約満了となる事は、いつ時点で、確定したのでしょうか?
1ヶ月前の3月末に契約満了がわかっていたならば、会社側から
・前払い定期代の支給ストップ
・本人への交通費取扱いの説明(定期は購入しないように等)
の対応・本人伝達もとれていたはずかと思います。
仮に3月末にすでに契約満了がわかっていたならば、会社としての説明対応
も不十分であったと思案しますので、返金対応は難しいでしょう。
また、本人の意思により、4月末の退職が急遽決まった場合においても、
入社月・退職月における通勤交通費の清算・支給ルールが、会社規程に明記
されていない限り、返金根拠も弱いと思案いたします。
事前に会社として、十分な説明を行っていたのかどうか、返金を求めるに値する
会社規定があるか否か、今一度、ご確認ください。
投稿日:2025/06/09 12:17 ID:QA-0153695
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、まず賃金規則等につきましては、個人情報等に関係するものでもございませんし、従業員に対して当然に周知されていなければなりません。仮にこれまで開示されていなかったとすれば、法令違反になり定められた内容も有効とはなりませんので注意が必要です。
文面内容を拝見する限りですと、当人から「交通費の対象期間の明示の確認に加えて、賃金規則や労働規則の明示を求めています。」という事で、そうであれば上記周知義務を果たしていなかったものと考えられますので、直ちに明示される義務がございます。
その上で、会社側に手落ちがあった以上この度は陳謝の上当人の希望に沿った対応をされ穏便に済まされるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/06/09 19:00 ID:QA-0153732
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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