スタッフの絆を組織の強みに
――「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの“人自”戦略とは
想像戦略室 室長
梅澤 孝之さん
「ボーナスは全員同額」でもなぜ不満が出ないのか
個人にも組織にも競争原理を積極的に持ち込み、成果を競うことで強くなろうとしてきたのが、バブル崩壊後の日本の企業社会の流れでした。しかし御社の前澤友作代表は、かねて「競争は何も生まない」と強調しておられます。
弊社も以前は、人事考課でスタッフの成果を点数化し、個々に差をつけていましたが、今春から廃止しました。率直に言って、売上の数字とか、そういう目に見える成果はほとんど見ていません。たとえば「ZOZOTOWN」の中核として弊社の業績に直接貢献するEC事業本部でも、スタッフ一人ひとりのあげた数字の差は評価の対象にならないんです。それよりも数字に表れない、部署やチーム全体に対する定性的な貢献をきちんと評価していきたい。売れる商品を買い付けたり、ブランドとの契約を獲得したりという結果を否定するわけではありませんが、売上の金額や契約の数よりも、仲間にいい刺激を与えられるような、影響力のある行動や働く姿勢そのものを評価につなげる仕組みになっています。
ボーナスも全員同額。勤続年数や成果に関係なく、均等に支給しているそうですね。これも競争ではなく、スタッフの和や絆を大切にしようというメッセージですか。
そのとおりです。弊社では、ボーナスは全員の努力で得た成果を全員でシェアする副産物だと考えています。代表はよく会社を大型漁船にたとえるのですが、漁船には魚を獲る人だけでなく、船を操る人もいれば船の掃除をする人もいます。誰ひとり欠けても、漁はちゃんとできません。だから獲れたものは全員で分け合おう、ということなんです。
たしかにギスギスした変な競争心が働く心配はないでしょうが、逆に頑張っても差がつかないことに、現場から不満が出ませんか。
僕の知る限り、ボーナスの均等支給についてそういう声は聞かないですね。やはり従業員同士の仲が良く、お互いをよく知っているということがベースにあるからではないでしょうか。それぞれの持ち場でどんな業務を担っていて、どれだけ苦労しているかを知っている。だから少々つらくても、自分だけが大変で、頑張っているわけではないと思えるんです。たとえばオフィスと倉庫は離れていますが、セールなどで倉庫が忙しくなるとオフィスからヘルプにいきます。そうすることで相手の自事の大変さや大切さが、身をもって実感できるし、一体感がより強くなるんです。スタッフや組織の間に変な壁があって、そのあたりが見えないと、お互いへの不信感も生まれやすいんでしょうね。