スタッフの絆を組織の強みに
――「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの“人自”戦略とは
想像戦略室 室長
梅澤 孝之さん
日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイがいま注目を集めているのは、今年2月に東証一部上場を果たした成長ぶりだけが理由ではありません。「1日6時間労働」や「ボーナスの均等支給」「FRIENDSHIP手当」「幕張手当」など、ユニークな人事施策を次々と導入し、楽しく快適な職場づくりを実現しているからです。その型破りな人材マネジメントの原点には、意外にも“古くて新しい”発想が――。無意味な競争を排し、何よりもスタッフ同士の絆と一体感を大切にしたいという思いが、スタッフ平均年齢27.8歳(2012年6月時点)という若い企業の元気を支えています。同社で人事を担当する想像戦略室室長の梅澤孝之さんに、その躍進の秘訣をうかがいました。
- 梅澤 孝之さん
- 株式会社スタートトゥデイ 想像戦略室 室長
(うめざわ・たかゆき)● 2004年株式会社スタートトゥデイに入社。商品管理部門(現フルフィルメント部)に配属後、出荷、入荷、撮影を担当。2007年フルフィルメント部ディレクターに就任。2009年4月総務部に異動し、総務、労務等を担当。2012年4月より現職。人事部門(人事制度、採用、コミュニケーション施策、福利厚生など)を担当。「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念のもと、様々な制度、施策の立案・推進を行う。
仕事ではなく「自事」、人事ではなく「人自」
御社では「仕事」という言葉をあえて使わないそうですね。仕事ではなく、“自事(しごと)”と言い換えて社内外に発信されています。そこにはどういうメッセージが込められているのでしょう?
単なる言葉一つの違いに過ぎないのですが、僕たちスタッフにとっては、それが自分の働き方を考える、あるいは見つめ直す羅針盤のような役割を果たしています。弊社では、スタッフに「仕事(仕える事)ではなく、自事(自然な事、自分らしい事)をしよう」と呼びかけています。言葉に込められた思いやメッセージを、スタッフ一人ひとりが理解して行動すれば、働き方だけでなく、態度や表情、周囲への接し方なども自然と変わってくる。それは、社外の方々にも伝わっていくと思うんです。弊社の価値観をスタッフ自らが体現することによって、世の中にも広く発信していけたらと考えています。
梅澤さんの所属する想像戦略室にも人事部ではなく、「人自EFMブロック」という部署があるんですね。
「ZOZOTOWN」のトップページ「人のことも自分のことのように考えられるような職場環境をつくりたい」との思いから、弊社ではもともと“人事部”ではなく、“人自”ブロックという部署が設けられていました。その人自ブロックが2011年にできたEFMブロックという別部署と統合され、2012年4月から人自EFMブロックに衣替えしました。EFMとはEmployee Friendship Managementの略。簡単に言うと、「従業員同士が親友のように」というミッションを実現するために、さまざまな施策を立案・実施する取り組みのことです。
スタッフの絆を深めるために、具体的にはどういう施策を?
たとえば、「STフェイス」という従業員名鑑のデータベースを立ち上げました。当社も徐々にスタッフが増えてきて、前から「スタッフ名鑑みたいなものがあったらいいね」という意見がありました。自事で関わりの少ないスタッフ同士がお互いの趣味や、好きなことを知ることができたら、もっと絆を深めるきっかけになるんじゃないかと思い、「STフェイス」をつくることにしました。スマートフォンを利用しているスタッフの携帯電話にはアプリも入っています。また前年度は、部活動の推進にも力を入れました。部をつくる場合、原則3人以上のメンバーを集めるのが申請の条件で、趣旨さえきちんとしていれば活動の種類や内容は問いません。会社からも一定の支援を受けられることになっています。
部活動というと、野球とか、サッカーとか……
ええ、いろいろありますよ。野球やサッカー以外にも、バスケットボール、ボルダリング、自転車、ダーツ、英語などなど。以前は「韓国部」というのもありました。韓国文化を勉強したり、韓流アイドルで盛り上がったり、いろいろな活動をしていましたが、とにかくきっかけは何でもいいんです。要は、部活を通してスタッフ同士がもっと仲よくなってほしい。お互いを知り合い、絆やつながりを深めてほしい。僕たち人自EFMからすると、そこが一番のねらいなんです。実際、弊社のスタッフはみんな仲がすごくいいし、プライベートでもよく週末に集まったり、グループ旅行へ出かけたりもしています。そういうつながりは本人たちだけでなく、実は会社にとってもすごく大切なんです。会社の枠を超えた人と人との絆こそが、弊社の組織としての強みだと思っていますから。