応募者の入社意欲や面接満足度をどう
高めればいいのか
テクノロジーで採用面接の
コミュニケーションを“見える化”した
村田製作所の取り組み
株式会社村田製作所 企画管理本部 人事グループ 人事部 部長
畑尾直哉さん
面接官の感覚値でしか語れなかったことを可視化する
どのようにして「NAONA」を面接の場へ取り入れたのですか。
当社や協力会社の中途採用面接において、面接官のトレーニングが目的であることを説明し、事前に応募者の方から許諾をいただいた上で実証実験を行いました。「NAONA×Interview」では、面接で話した内容は録音せず、音声データもその場で破棄。クラウドに発言回数や発言長、発言割合といった非言語情報の特徴量をアップロードして、その内容を演算しています。
「NAONA×Interview」で定量化したのは、面接における「会話の量」「発言の長さ」「感情の変化」など。面接終了後にはアンケートも実施しています。面接官には「応募者の合否判定に必要な情報を聞き出すことができたか」「応募者の入社意欲を高めることができたか」などを、応募者には「自身が伝えたい内容を伝えられたか」「入社意欲が高まったか」などを聞き、「NAONA×Interview」のデータと照らし合わせました。
分析を通じて、どのようなことが見えてきたのでしょうか。
非言語情報のコミュニケーションを定量化したことによって、例えば、面接官がどの程度傾聴ができているかを客観的に計測できるようになりました。面談中の時間経過を追って、会話の分布を見ることも可能です。
これまで面接における中身の分析は、面接官の感覚値や自己満足によるものでした。面接官が「この人は満足してくれたはず」「自社の入社意欲が高まったはず」と手応えを感じても、それが実際の入社や定着につながっているかどうかは検証できていませんでした。他社と競合している応募者の面接では、人事からオファーするだけではなく、入社後に応募者の上司となる人物や現場の最前線で働いている人物の生の声を伝えていましたが、これらの取り組みも客観的に成果を可視化するには至っていませんでした。
こうした感覚値の世界が、「NAONA」を使った客観的なデータとアンケートで振り返ることで可視化することが可能になりました。もちろん、この結果が全てではありませんが、主観ではない情報として、面接の内容を振り返ることが可能になったのは大きな変化でした。
面接官は傾聴ができている人もいれば、応募者に対して一方通行で話している人など、実にさまざまです。応募者に回答してもらった事後アンケートをみると、前者の場合は「話を聞いてもらえて入社動機が高まった」という声につながっているのに、後者の場合は「もっと自分の話を聞いてほしかった」という声が多いことがわかります。
取り組みを進めるにあたって、面接官となる社員の方々からはどのような反応がありましたか。
自社のプロダクトを活用した実証実験でもあったため、エンジニアを中心に大変協力的でしたね。私も協力を依頼された際、非常に興味深い取り組みだと感じました。それまでは、面接で自分が正しく傾聴ができているか、応募者への動機づけができているかについて、定量的な分析はできないと考えていたからです。だからこそ、実証実験を行う意味があると思いました。
もちろん、面接内容の評価としては、ときとして良くない結果が出ることもあります。しかし、それはあくまでも客観的なデータであり、否定のしようがありません。次回の改善につなげていく材料として、良い結果も悪い結果も正面から受け止めるようにしています。