応募者の入社意欲や面接満足度をどう
高めればいいのか
テクノロジーで採用面接の
コミュニケーションを“見える化”した
村田製作所の取り組み
株式会社村田製作所 企画管理本部 人事グループ 人事部 部長
畑尾直哉さん
人材の採用難が深刻化する中、採用力強化に直結する「面接力の向上」を課題とする企業は少なくありません。しかし、面接官と応募者が閉じられた空間で対面し、定性的なレビューに終始することが多い面接は、客観的に検証することが難しいのも事実です。こうした現状に一条の光を差し込むのが、自社開発したセンシングデータプラットフォームを活用する株式会社村田製作所の取り組みです。面接時の非言語コミュニケーションを可視化する「NAONA×Interview」の仕組みを通じて自社の面接傾向を分析、応募者の入社意欲向上や面接官のスキル向上につなげています。同社人事部 部長の畑尾直哉さんに本取り組みを通じた採用面接の変化や、今後の展望などをうかがいました。
- 畑尾直哉さん
- 株式会社村田製作所 企画管理本部 人事グループ 人事部 部長
はたお・なおや/1991年に自動車関連会社入社後、2000年に株式会社村田製作所へ入社。関係会社(生産事業所)出向や本社での人事業務を経て、2013年に海外(中国)現地法人、2016年に国内関係会社の管理部門長を経て、2018年より人事部長(現職)を担当。
「幅広い年齢層に1対1で向き合う」中途採用ならではの課題
貴社における採用活動の現況をお聞かせください。
当社の事業領域の拡大を受けて、ここ数年はグループ各社で採用が盛んになっています。グループ全体では新卒採用と中途採用でそれぞれ年間250人ずつほど、多いときには300人近く採用しています。私自身も中途入社者の一人ですが、新卒採用と同程度の採用規模になったのは最近のことです。
中途採用は一昔前まで、買い手市場の印象が強くありましたが、ここ数年は完全な売り手市場。能力のある魅力的な人材は、引く手あまたの状況です。特にエンジニアなど技能職の採用では、まったく異なる業種ともバッティングするようになりました。
新卒採用にはない、中途採用ならではの課題はありますか。
選考過程で辞退する応募者が多いことが、一つの課題でした。採用活動では、応募者に自社のビジネスの将来性やビジョンを伝えていくことが重要です。しかし、大規模な説明会などでメッセージを伝えられる新卒採用とは異なり、中途採用は応募者とのコミュニケーションの場が面接や入社後のオファー面談など、1対1の場に限られがちです。また、中途採用者の年齢層は、以前であれば20代から30代前半が中心でしたが、現在は20代から40代までと年齢層が広がっています。併せて、さまざまな職種での募集であることから、一律の説明ではなく、応募者一人ひとりに向き合う必要もあります。
現在、当社の中途採用チームは10人弱。各事業部門やスタッフ部門などから面接に参加してもらっていますが、採用活動における対応が増えていることは間違いありません。
面接は、応募者の入社意思決定における重要な場。面接を通じて応募者の入社意欲を向上させるアプローチは重要で、コミュニケーションが一方通行ではうまくいきません。これは新卒採用でも同じことで、入社後に「思っていた仕事とは違う」と感じることがあれば、その後の定着にも影響を与えます。入社後に長く働いてほしいのであれば、面接の場で可能な限り、応募者に対して動機づけをすべきでしょう。
それでは、どのような工夫が必要なのか。例えば、面接官から応募者に「伝える中身」は当社でも考え続けていましたが、その中身の「伝え方」はあまり検証できていませんでした。こうしたタイミングで始まったのが、当社のセンシングデータプラットフォーム「NAONA」を活用した実証実験でした。