第88回 ソニー株式会社
異業種へのチャレンジが、個の力を伸ばし組織を成長させる!
社員の“主体的なキャリアチェンジ”をサポートする、ソニーの社内募集制度
ソニー株式会社
人事センター 人事1部 統括部長 北島久嗣さん
人事センター 人事1部4課 統括課長 堀田綾子さん
テレビやオーディオなどのプロダクトから、音楽や映画といったエンターテインメント、金融まで事業を幅広く展開するソニー。新しい時代に対応できる組織へと構造改革を図り、成長のフェーズへと舵を切った2015年に、一人ひとりが主体的にキャリアを築ける施策をスタートさせました。ベースとなったのは、1966年から続く社内独自の社内募集制度。個々のチャレンジ精神とビジネスニーズに基づく求人のマッチングをより柔軟に行えるように、多様な仕掛けを設けています。運用開始から2年が過ぎた今、社内にはどのような変化や効果が見られたのでしょうか。施策に携わった人事センターの北島久嗣さんと堀田綾子さんにお話をうかがいました。
- 北島久嗣さん
- 人事センター 人事1部 統括部長
(きたじま ひさつぐ)ソニー株式会社入社後、労務、人事、研修、採用、事業部人事、海外事業所人事を担当。2015年3月より本社組織の人事に着任。2016年2月より採用部に兼務し、リソースマネジメントを担当。
- 堀田綾子さん
- 人事センター 人事1部4課 統括課長
(ほった あやこ) ソニー株式会社入社後、採用、国際人事、人材育成、組織開発などを経験。2014年度より社内募集等キャリア・リソース施策を担当。
50年以上続く制度を刷新し、成長フェーズを軌道に乗せる
ソニーでは、かなり古くから「社内募集制度」が根づいているそうですね。
北島:はい。創業者の一人である盛田昭夫が旗振り役となって1966年から導入し、50年以上続いています。新たなメンバーを求める部署が社内に求人を出し、社員が応募するという仕組みです。現在では大手を中心に多くの日本企業が採用していますが、ソニーの場合は、個人の意思を尊重し、組織風土の源泉の一つになっているところが大きな特徴といえるでしょう。応募にあたり、基本、上長の承認は必要ありません。応募した部署とうまくマッチングしたら、その時点で成立します。
マネジメント職には社員の成長をサポートする役割が求められますが、社員それぞれがキャリアを築いていく中で、組織は邪魔をせず、一人ひとりの想いに真剣に応えることも重要。それが社内の風通しをよくし、組織の推進力へとつながると考えられてきました。
その社内募集制度を、2015年にリニューアルしたそうですが、どのようなねらいがあったのでしょうか。
堀田:2015年、成長と変革のフェーズに切り替わる中、会社を軌道に乗せるために人事部門ができることは何なのかについてディスカッションを重ね、社内募集制度にフォーカスしました。これまでのべ7000人に利用され、新しいキャリアを築くきっかけとなってきた社内募集制度は、社員にとってもなじみ深く、ソニーのDNAであるチャレンジ精神の象徴ともいえます。それを発展させることで、さらに多様な挑戦の場を提供したいと考え、リニューアルを行うことにしたのです。
北島:ソニーの事業は、ハードウェアに始まり、ゲーム・ネットワークに半導体、エンターテインメント、それから金融と非常に多岐にわたります。私たちのビジネスも、新しいものの見方を取り入れた、今までの延長線上にはない展開を求められています。その実現には一人ひとりの社員が持つ“個の力”が問われるわけですが、考えてみればこれまでのソニーを支えてきたのも“個の強さ”があってのことでした。そこで社内募集制度のバリエーションを増やし、より個の力を引き出す環境を整えようとしたわけです。