株式会社アサツー ディ・ケイ:
応募者に「どんな人と、どう働きたいか?」というリアルなイメージを喚起
新卒採用活動の既成概念をリセットし、応募者と社員の相互理解を図る「相棒採用」とは(後編)[前編を読む]
株式会社アサツー ディ・ケイ 執行役員 人事・ガバナンスセンター統括
春日 均さん
「コンシューマー・アクティベーション(消費者に行動を起こさせる)」をビジョンに掲げる、大手広告会社アサツー ディ・ケイ(以下、ADK)。ブランド・メッセージを伝えるだけでなく、消費者とブランドが出会い、共感・理解しあえる場を創出し、クライアントの成長に貢献しています。そうした企業姿勢を新卒採用活動に生かした独自の採用ソリューションが「相棒採用」。学生に社員一人ひとりのリアルな姿を伝え、ADKの魅力を理解してもらうだけでなく、応募への行動をアクティベートしていく新たな仕掛けです(前編参照)。その施策づくりを取りまとめたのは、執行役員 人事・ガバナンスセンター統括である春日 均さん。長年の営業として同社のビジョン実現にまい進した経験を生かし、採用手法の変革にチャレンジし続けています。インタビュー後編では、「相棒採用」を行った手応えや今後の展開についてうかがいました。
- 春日 均さん
- 株式会社アサツー ディ・ケイ
執行役員 人事・ガバナンスセンター統括
かすが・ひとし●1985年に大学卒業後、流通系ハウスエージェンシーを経て1989年に旧旭通信社入社。広告営業としてビールメーカーを中心に、化粧品、人材紹介などのクライアントを担当。2006年より営業局長としてビールのナショナルブランドのCM制作、キャンペーン開発をAEとして担当。その後2009年より営業を調整、統括する営業企画室室長、2012年より総合企画本部本部長を経て、2013年より執行役員 総合企画本部長。2014年、執行役員コーポレートセンター統括を経て現職に至る。
「相棒採用」で入社した人材に期待するものとは
「応募者の質がかなり向上した」とのことですが、最終面接ではどんなやりとりがあったのでしょうか。
面接自体は非常にフレンドリーです。落とすのではなく、その人の良さをどうやったら引き出すことができるかをテーマにしています。ただ、経営層が面接官を務めることもあって、自ずと質問のレベルが高くなるので、応募者からすると非常に難しく映るかもしれません。特に広告業界自体が現在ターニングポイントに差しかかっており、従来までのメディアに頼るマージンビジネスが継続するとは言いにくい状況にありますから。ある意味業態転換というか、利益構造の転換を図っていかなければならない時期だからこそ、学生の生の声や意見を聞きたいと考えています。例えば、「スマホを活用して若い人たちにものごとを伝え、マネタイズできる方法はないでしょうか」などといったことを聞いたりします。せっかくの機会なので、いろいろとコミュニケーションを図りたいというスタンスで臨んでいます。
「相棒採用」を通じて、応募者をアクティベートできたという手応えをお持ちですか。
我々はビジネスにおいては、メディアに広告を打つだけでなく、クライアントの商品やサービスが実際に売れたり、成果が出たり、利益が上がったりするところまで何らかの指標を持って仕事をしています。人事にとってアクティベートする対象は、採用であれば学生であり、社員です。その意味では、学生を少しはアクティベートできたかなという手応えがありますし、相棒として関わってくれた社員も以前より採用に関心が高まり、能動的に参加できるようになったのではないかと思います。
「相棒採用」によって入社する社員の方々に、どんなことを期待されていますか。また、どのような教育や研修を行う予定ですか。
これから彼ら・彼女たちが10年、20年経ってどうなるかが、人事としての結論が出てくるタイミングです。なかには、即戦力として活躍してくれる人もいるかもしれませんが、「相棒採用」を行ったからといって急に現場から「すごく良い人が入ってきた」という声が出て来るとは思っていません。そうではなく、ADKへの愛情と熱意を持った人材が少しでも入ってくれば、当社の競争力が強化されますし、事業にプラスの影響も出てくるだろうと考えています。
広告会社である当社の事業は、工場があって土地があるというものではありません。人材にいかに投資していくかが事業の根幹になってきます。サポート面に関して考えているのは、若い人たちに対するケアが必要だということです。相棒社員の人たちはこれまでさまざまな形でコミュニケーションしてくれているのですから、配属後もメンターとして、そして会社の先輩としてアドバイスをしてくれる仕組みを作りたいと思っています。教育・研修などに関しては、「相棒採用」だからというわけではないのですが、研修体系を大幅に見直していて、ADKユニバーシティというものを立ち上げました。個々人がいろいろなソリューションや技術・発想を持ったプロフェッショナルになろうというテーマのもと、さまざまな講座を開講しています。会社としても積極的に投資していきたいと考えています。