株式会社アサツー ディ・ケイ:
応募者に「どんな人と、どう働きたいか?」というリアルなイメージを喚起
新卒採用活動の既成概念をリセットし、応募者と社員の相互理解を図る「相棒採用」とは(前編)
株式会社アサツー ディ・ケイ 執行役員 人事・ガバナンスセンター統括
春日 均さん
面接での回答内容の精度が大幅に向上
相棒社員の人選はどのように行われたのですか。
一旦人事で、ある程度職種や年齢、性別、部署・支社などが均一になるように候補者をピックアップして、同意してくれる人にお願いしました。一定の経験を積んでいた方が良いということで、在籍年数は5年以上10年目ぐらいまでが中心。現場の最前線でバリバリ働いていて、自分が入社した時のイメージをまだ持っている人に参加してもらうのが、一番効果的だと思ったからです。
学生は、87名の社員のなかから5名を指名します。一人に集中してしまうと対応できないので、幅をもって選んでもらい、その中から誰かが責任をもってきちんと対応することにしました。本当は100人、200人いればもっと自由に選べるのですが、なかなかそこまではいきませんでした。我々としても、強制的に「やってください」とは言いたくありません。積極的に「自分たちの後輩を選びたい」「若い人たちに入ってきてほしい」という気持ちを持った人に絞って対応してもらいました。
書類選考や一次面接を行うにあたって、会社としての方向性を相棒社員にある程度は提示しました。それぞれに見極めのポイントはあるでしょうが、会社としては「こういう人材像を採りたい」という大枠を事前に話して、その上で各自の経験や知見を基に「この人がいいのでは、伸びしろがあるのでは」という人材を選んでもらうようにしました。
貴社の社員からは、「相棒採用」を行うことについて、どのような反応がありましたか。
例年社内で採用がそれほど話題になることはほとんどなく、「人事が言うから手伝うしかないなあ」という感じの社員もいたと思います。それに、新しい仕組みだったので、戸惑いも多かったかと思います。実際、最初は反応が少し控え目でした。第一期選考と第二期選考とに分けたのですが、第一期は6割弱の受諾率でした。それが、徐々に社員の間で話題に上るようになった第二期は、こちらからオファーをしなくても、「相棒社員になりたい」「選考に関わりたい」という声が寄せられるようになりました。2018年度採用は、受諾率がさらに上がり9割を超えている見込みです。多くの方が「ぜひやらせてほしい」と快く引き受けてくれています。
学生からの反応も良かったのではないですか。
実際、「楽天みんなの就職活動日記」の「2017年卒新卒就職人気企業ランキング」で、採用広報のイメージが良い会社第1位に選ばれました。学生には、営業やプランニング、クリエィティブなど、それぞれにADKで就きたい職種があるはずです。面接官がどういう職種の人か分からず、自分の話も全く理解されずに落ちてしまうのと、面接官の仕事ぶりや発想など、いろいろなものを「相棒採用」を通じて知った上で応募し、面接に臨めるのとでは、リラックス度も話す内容も違ってきます。何よりも、お互いに理解しあえるのは大きなメリットだと思います。
「相棒採用」を行ったことで、どのような成果がありましたか。
一番実感したのは、「相棒採用」を経て最終面接に残った学生の質が高かったことです。明らかに、前年とは手応えが違いました。仕事に対する意識、熱意が格段にアップしましたね。最終面接は役員数名で行うのですが、終了するやいなや「今年はいいねえ」と誰もが口にしていました。例年だとあまり準備を行わず、「ポテンシャルで何とかなるのでは」と考えているような学生も何人かいました。「何となく将来の私を評価してください」という感じのタイプです。でも、今年度は誰もが話すことにリアリティーがあり、広告会社を理解していて、的確なアピールができていたように思います。
恐らく、当社の社員とのコミュニケーションの絶対量が従来とは全然違っていたからでしょう。関わった学生が本部長面接を突破して、いよいよ最終面接という段階になると、相棒社員はまるで自分の弟や妹のように応援します。「こういうところを注意した方がいいぞ」「こういう質問がくるかもしれないぞ」など、いろいろとコミュニケーションをとってきたことで、面接の答えや当社に対する理解がかなり精度の高いものになり、驚かされることもありました。大学生が自分で考えるよりも、企業に入って数年経っている人からアドバイスをもらった方が、働くことに対するイメージや思いが固まってくるのでしょう。私も面接で話をしていて、それを痛感しました。数値的な面を見ても、相棒社員のフィードバック後の選考過程では辞退者が一人も出ず、内定受諾率は前年度比23%増加しました。