KDDI株式会社:
なでしこ銘柄もグローバル化も「信頼ある人事」から
「現地現物」で変革を加速するKDDIの「アクティブHR」とは(前編)
KDDI株式会社 理事 コーポレート統括本部 総務・人事本部 副本部長
白岩 徹氏
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現地現物に徹する「アクティブHR」で経営との関係も変化
現場からの信頼強化のためのキーワードとして、われわれは「現地現物」を掲げています。後ほどご説明する当社の「KDDIフィロソフィ」の中にも、「現地現物で本質を見極める」という文言が掲げられていますが、これは現地に出向き、現物と直接対峙(たいじ)して、事の本質を見極めることが肝心だという意味です。人事の仕事もまったく同じ。ところが、人事の旧弊では、なぜかこちらから現場へ出向かず、用があると社員を呼びつけるんです。それではダメで、足しげく現場へ通い、社内の声を直に聞いて回らなければなりません。そういうことを着任以来、私自身が率先して行ってきましたし、部のメンバーにも徹底してきました。現場へ行けば、現場の空気がわかります。たとえば携帯電話各社にとって、毎年10月は“iPhone戦争”と呼ばれる繁忙期。特に営業はピリピリしています。そんな時期に社内アンケートを実施するなんてとんでもないのに、旧態依然とした人事は現場に出ないから、そのピリピリした空気もわからない。
現場へ出てみれば、空気だけでなく、“人”もわかります。当社は4年連続で「なでしこ銘柄」に選ばれるなど、ダイバーシティの面で高い評価をいただいていますが、まだまだ目指すところには足りません。そこで最近、女性活躍推進の対象者となる約200人の女性社員一人ひとりをもっと深く知るために、こちらから出向いて面談する取り組みを行いました。これは大きかったですね。「現地現物」だけで事業部の信頼が得られるわけではありませんが、初めの一歩になることは間違いない。まずは誠心誠意、何度でも現場へ足を運び、相手と腹を割って話し合う。その覚悟が持てない人事部にだけは、したくなかったのです。
自己変革への努力を重ねた結果、白岩さんの目から見て、人事部はどれくらい変わりましたか。現時点での評価をお聞かせください。
先ほど、私が異動してくる前は、人事部の『解体新書』の結果が最下位に近く、全社平均を上回る項目は全体の2割弱しかなかった、という話をしました。それが3年目の昨年は、すべての項目にわたって平均を上回りました。その意味では、部のメンバーも、組織の風通しが良くなったとか、自分たちのやりたいことがやれるようになってきたとか、雰囲気の変化を少しずつ実感できているのではないでしょうか。どんどん現場へ出て事業部門の社員とディスカッションしたり、自ら率先して変化を起こしたりするような人事のあり方を、私は「アクティブHR」と呼んで、提唱していますが、そうした文化も徐々に根付きつつあるように思います。最近は「ミニ合宿」がよく行われるようになりました。特定のテーマについて集中的に議論したいと思っても、人事部全体がアクティブになったせいか、平日はなかなかみんなの時間が合いません。そこで「ミニ合宿」と称して、休日などにメンバーが集まるわけです。グループリーダーだけでなく、非管理職の社員まで。あくまでも自主的に、です。
経営との関係性も明らかに変わってきました。われわれの意見を聞く耳を、経営陣が持ち始めるようになったのは、やはり少しずつでも人事が信頼を得ているからでしょう。もちろん、まだ全幅の信頼とまでは行きませんが。私個人も、社長や各事業部門のヘッドから直に呼ばれる機会が多くなりました。ちょっと相談があるからと、秘書を通すことなく、私の携帯電話に直接かかってくるんです。非常にありがたいですね。