企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

となりの人事部
第69回 三菱樹脂株式会社

男性中心組織から「女性が働きやすく活躍できる組織」へ
12名の女性が議論・提言した
三菱樹脂「ダイバーシティ推進女性委員会」の取組みとは(前編)
[ 1/3ページ ]

三菱樹脂株式会社 人材開発部ダイバーシティ推進グループ 課長代理 古西宏枝さん
三菱樹脂株式会社 人材開発部ダイバーシティ推進グループ 兼人事部給与・厚生グループ 佐藤慶子さん
2016/4/21
近年、さまざまな企業で女性活躍推進に関する取り組みが行われていますが、その多くは期待通りに進んでいないのが実情です。その原因の一つは、日本企業が依然として「男性正社員モデル」を組織の基本にしていることです。長年根付いた組織風土や人事制度を変えていくことは、そう簡単ではありません。そのような状況下、三菱樹脂は女性活用が進展しない実態にメスを入れ、大胆な改革に着手。2014年から多様な人材がイキイキと活躍する職場の実現を目指す「ダイバーシティ&ワークライフバランス推進」をスタートさせ、1年後、その取り組みは大きな「成果」をもたらしました。同社では、どのようにプロジェクトを進め、どんな成果や知見を得ることができたのでしょうか。また、今後はどのような方向に活動を展開していこうとしているのでしょうか。「ダイバーシティ推進女性委員会」事務局を担当したお二人に、詳しいお話をうかがいました。
プロフィール
三菱樹脂株式会社 古西宏枝さん プロフィール写真
古西宏枝さん
人材開発部ダイバーシティ推進グループ課長代理
こにし・ひろえ●大学卒業後、三菱樹脂に入社、能力開発室に配属される。2001年 総務部秘書グループ社長秘書(統合までの7年間、二人の社長を担当)。2008年4社1事業の統合を機に、能力開発室(現:人材開発部・2010年4月に名称変更)に異動する。主な業務は研修企画、講師、通信講座、語学講座、新卒・派遣社員採用など。2014年人材開発部ダイバーシティ推進グループ発足に際し、課長代理となる。日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー(CDA)の資格を持つ。

三菱樹脂株式会社 三菱樹脂株式会社 佐藤慶子さん プロフィール写真
佐藤慶子さん
人材開発部ダイバーシティ推進グループ 兼人事部給与・厚生グループ
さとう・けいこ●大学卒業後、都市銀行に入社。2006年三菱樹脂に入社、総務人事部人事グループにて給与・社会保険を担当する。2010年育児休業、2011年人事部(給与・厚生グループ)に復職。2013年 育児休業、2014年人材開発部(ダイバーシティ推進グループ)に配属される。主な業務は、研修企画、通信講座、語学講座、育児休業者復帰支援、給与関係など。

女性活躍推進を阻む「原因」は、旧態依然とした実務職に関する認識と対応だった

―― 女性活躍推進に取り組む以前の貴社には、どのような課題があったのでしょうか。

古西: 当社が女性を「総合職」として定期的に採用するようになったのは、2003年からです。採用人数は総合職全体の1割未満で、しかも最初は研究職などの技術系が中心で、女性総合職が営業に配属されることは、ほとんどありませんでした。

三菱樹脂株式会社 古西宏枝さん Photo

一方、一般職に相当する「実務職」は1960年代から定期的に採用していましたので、当社には「女性=実務職」という考えが根強くありました。総合職の男性社員を支える、縁の下の力持ちという役割です。かつては、当社に限らず世の中の流れとして、女性社員は、就職して数年勤めたら結婚を機に退職する人が多く、短期間で実務職の入れ替わりがありました。そのため、長く勤めるという考えは薄く、職級を積極的に上げていくような仕事の与え方にはなっていなかったため、研修の機会もありませんでした。しかし近年、世間では女性の働き方や意識が大きく見直されるようになり、当社でも、結婚後や出産後も働き続ける女性が増え、女性社員の働き方や意識が徐々に変わっていきました。

―― 具体的には、どのように変わっていったのでしょうか。

古西: ここ数年、女性総合職の採用が増えているとは言え、当社の女性社員の大多数は実務職です。平均勤続年数は19年と長く、以前のように入社後数年で結婚し、退職していたような状況ではなくなり、次第にスキルや経験を積んだ実務職の仕事の範囲も広がっていきました。しかし基本的には、会社の中における実務職の役割、立場は依然として変わっていないのが実状でした。

当社には役割等級という資格体系があり、実務職の大半は入社後5級からスタートします。現在の女性社員の役割等級を見ると、実務職の9割が入社時のまま(5級)か、そこから一つ上の等級(4級)となっていて、入社してから4級に昇級するまで、平均17年もかかっていました。勤続年数が長く、スキルアップもしたことで仕事の幅も広がり、各職場で大きな役割を担うようになったのにもかかわらず、役割等級の運用は十分に見直されないままだったのです。

―― そのような状況を受けて、「ダイバーシティ&ワークライフバランス推進」を行うことになったわけですね。

古西: 多くの企業で少子高齢化とグローバル化対応の動きが加速していますが、それは当社でも同様です。特に競争力の一つとして、ダイバーシティ対応が非常に重要になっています。中でも、最初に女性活躍推進を推し進めていきたいという考えが、経営陣にはありました。しかし、社員の意識が追い付いていなかったため、2014年3月31日に社長が自ら「女性活躍宣言」を発表。翌日の4月1日、人材開発部に「ダイバーシティ推進グループ」が発足しました。経営課題の一つとして、積極的に女性活躍推進に取り組んでいくことを会社として宣言したのです。

三菱樹脂株式会社 佐藤慶子さん Photo

佐藤: ダイバーシティ推進の中では、「性別」「年齢」「ハンディキャップ」「国籍」を超えるという四つの重点課題を決めましたが、まずは当社が一番遅れていると考えていた「性別=女性活躍推進」に全社を挙げて取り組んでいくことになりました。そこでスタートしたのが「ダイバーシティ推進女性委員会」です。

「仕事を取り巻く多様な課題を抽出し、優先順位付けを行い、具体的方策の方向性を絞り、経営提言を行う」というミッションの下、「女性の活躍推進について、女性自らの参画により、実際的なニーズを掘り起し、働きやすい環境づくりの実現に向けて課題に取り組む」ことを目的としました。参加メンバーは全社から選出され、管理職、総合職、実務職の各層からなる、女性社員12人に決定しました。

古西: 2008年に4社1事業が統合し、現在の三菱樹脂ができたわけですが、私自身、その頃からダイバーシティに注目していました。女性がもっと活躍すべきだという思いを持った女性8人で、ダイバーシティ・プロジェクトを発足させ、会社に対して女性が活躍できる制度・仕組みを作ることを提言しましたが、オフィシャルな活動ではなかったので、実現には至りませんでした。そうした経験があるだけに、今回、社長宣言の後、ダイバーシティ推進グループが正式に発足したときは、長年の夢が叶ったようで感無量でした。

佐藤: 私は人事部で給与や社会保険を担当していたのですが、育児休業から復職してダイバーシティ推進グループに配属されました。配属当初は、ダイバーシティ女性活躍推進と言われても、ピンときませんでしたがプロジェクトを進めていく過程で、女性社員、中でも実務職の置かれている現状を知り、何とかしなければならないという意識が非常に強くなっていきました。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

となりの人事部のバックナンバー

サントリーホールディングス株式会社:
「やってみなはれ」で次世代リーダーを抜てき
グループの垣根を超えて世界をつなぐ、サントリーの人材育成とは
世界各国のグループ企業は312社・従業員数3万7000人超。真のグローバル企業へと突き進む同社は、いかにして「次代を担う経営人材」を発掘し、育成しているのでしょ...
2018/11/09掲載
株式会社ユナイテッドアローズ:
すべてはCSマインドから始まる リピーターを生み出し続けるユナイテッドアローズの「理念経営」とは
まもなく創業30周年を迎えるセレクトショップ最大手、ユナイテッドアローズ。その人気を支えている理由の一つが、徹底したCSマインドにもとづいたクオリティーの高い接...
2018/09/25掲載
エイベックス株式会社:
ベンチャーに負けない、スピードとイノベーションを。
創業30年、エイベックスが目指す構造改革とは?
今年で創業30年を迎えるエイベックスは、「第三創業期」として、大きな改革に乗り出しています。ベンチャーに負けないスピードとイノベーションを目指し、さまざまな改革...
2018/08/30掲載

関連する記事

女性活躍推進が成果を「上げている」企業は約半数。
「上げていない」と答えた企業では、女性従業員の「昇進意欲」や「モチベーション向上」が課題
多くの企業が女性活躍推進に取り組んでいる。その成果については、「上げている」(8.9%)「どちらかといえば上げている」(36.6%)が合わせて45.5%と、半数...
2018/08/02掲載人事白書 調査レポート
いま考えるべき人事の「未来像」
~新しい時代における人事の存在意義とは~
グローバリゼーションやテクノロジーの急激な進化により、いま世界は大きく変わろうとしている。企業もビジネスモデルの変革を余儀なくされているが、こうした環境の中にお...
2018/06/11掲載注目の記事
社員53人で100億円を売上げる驚異の生産率
女性活躍を推進し、チームの力を最大に高める秘訣とは
オリジナル化粧品「マナラ」を展開する、株式会社ランクアップ。従業員は53人と少数精鋭ながら、100億円近くの売上を計上する同社では、増収増益を続けているにもかか...
2017/12/06掲載編集部注目レポート
「女性管理職増加」「多様性の達成」は通過点 マタハラにいち早く取り組んだプルデンシャル生命に聞く“多様性のその先”
プルデンシャル生命保険株式会社は、2008年頃には管理職の3割を女性が占めるなど、女性活躍推進に関して先進的な企業として知られます。現在は数字からは見えない、真...
2017/09/20掲載編集部注目レポート
ダイバーシティを推進する上での問題や困難として最も多かったのが「管理職の意識や能力の不足」
ダイバーシティを推進する上での問題や困難を複数選択形式で聞いたところ、最も多かったのは「管理職の意識や能力の不足」(45.0%)。2番目が「従来の一律的な価値観...
2017/07/12掲載人事白書 調査レポート
次世代リーダー育成に役立つソリューション特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

タレントパレット 優秀な人材確保のために、女性活躍推進を!

注目コンテンツ


次世代リーダー育成に役立つソリューション特集

次世代リーダー育成に役立つセミナーやサービス、ダウンロード資料をご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


「入社前に、“ストレス耐性”を確認したい」<br />
――辞めない人材を採用する、科学的な採用手法とは

「入社前に、“ストレス耐性”を確認したい」
――辞めない人材を採用する、科学的な採用手法とは

能力が高くても、ストレスにうまく対応できなければ思うような成果をあげる...


「働きがい」が業績向上を実現する<br />
~成長する組織をつくる働き方改革~

「働きがい」が業績向上を実現する
~成長する組織をつくる働き方改革~

すでに関連法令も成立し、「働き方改革」への対応は待ったなしの状況といえ...