株式会社リクルートホールディングス:
「起業家精神を持ち、成長し続ける人材」をいかに育てていくか?
株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 室長
今村 健一さん
今後の課題~エンジニアの採用と次世代リーダーの育成
今後の課題として、どのようなことを認識されていますか。
特に力を入れているのがIT化です。そのため、エンジニアの採用だけはリクルートホールディングスで引き続き行っています。これは採用効率、採用ブランドの両面でホールディングスが行う方がいいと判断したからです。
ここ数年、幸いにも、名だたるIT企業に合格するような人たちを採用できています。一部のアプリケーションエンジニアは、2年前にM&AしたアメリカのIndeedという会社が東京・恵比寿に開発の拠点を構えていますので、そこにいきなり配属します。オン・ザ・ジョブで最先端の現場でトレーニングを行っているのです。まずはレベルの高いIT企業で、世界での戦い方を学ばせようと考えました。このようなOJTでのエンジニア育成プログラムが一つの特徴です。逆に言うと、これがエンジニアからみたリクルートという会社の魅力の一つになっています。
一般的に、本社以外の開発拠点はそのローカルで提供されるサービスに限った部分での開発しか行いません。しかし、Indeedでは、東京・恵比寿のオフィスで、世界55ヵ国以上に展開する開発を担っています。開発本社はアメリカ・テキサス州オースティンにありますが、この恵比寿もグローバルの開発拠点なのです。エンジニアからすると、非常にやりがいのある環境と言えます。会話は英語で、Indeedの優秀なエンジニアの下で働くことができます。採用・育成の両面で、大きなアドバンテージがあります。
また、新卒の学生は、恵比寿オフィスに配属される前の3ヵ月間、開発本社であるオースティンに送り込みます。エンジニア志望の人たちは、先進国での海外経験を重視する傾向があります。ゆくゆくあるかもしれないということではなく、入社してすぐその経験を提供することで、さらなるモチベーションや成長を引き出しています。
エンジニアに関しては、採用、その後の育成、配属について、一応の形はできていますね。
今後の課題は、エンジニアをどう評価していくか、ということです。Indeedというお手本となる企業が身近にあるので、そこで行われている施策などをベースに、いろいろと考えている最中です。ソフトウエアでいかに日本の企業が世界に勝てるか。そこに、リクルートがチャレンジしていくためにも、IT人材のHRMがすごく大きなテーマになっています。
もう一つの課題が、次世代リーダーの育成です。次の役員の候補者となるエグゼクティブクラスの人たちが、グループ全体で120人くらいいます。そこの人事権をホールディングスは持っていて、配置や、全社人材開発委員会などを通じた人材開発の施策に対し力を入れています。
また、この層の人たちに対しては、「6×4」をさらにバージョンアップした「バリューズ&スキルズ」というもので、求めるスタンス・スキルを新たに定義し直しています。そして、360度評価のアセスメントを行い、人材管理を行っています。そして、グローバル化については、M&Aにおいて、リクルートから移植できるものは何があるのか。その一方で、現地企業の良さを生かすには、どうすればいいのか。そのように考えた場合、共通するのは経営理念の部分だけかもしれない、と思ってもいます。その辺りの整理を、行っている最中です。
インターネットのビジネスで、情報を介してユーザーとクライアントを結び付ける。このビジネスモデルでリクルートはやってきました。そして、これからはITの世界で戦うということが、必然となっています。
一般的な雑誌や広告の会社と違うのは、「情報でどれだけの人が行動を起こしたか」を、大変重視していることです。紙の情報誌の時代から、「このスペースの広告で何人応募が来たのか」「次回はキャッチコピーをこんなふうに変えてみよう」などと、費用対効果に対するアプローチを熱心にやってきました。ツールがITに代わったことで、リクルートとしては、本来持っているビジネスの真髄をより発揮できるようになってきたと思います。
最後に、事業会社に期待することは何ですか。
前提として、採用も含めて人事制度は各事業会社に任せています。分社をしてまだ2年間しか経っていませんが、いろいろな人事制度や規定を、各事業会社がそれぞれのマーケット特性に対応しながら、変えています。これはすごく良いことだと思っています。まさに分社をしたことの狙いに、そのスピード感があるからです。自社のマーケットの中でスピード感を持って事業運営をするということが、人事部門でも実現できていることの「証」だと思います。この部分は、今後とも期待していきたいですね。
今村様のお話をうかがって、リクルートが「人材輩出企業」であることの理由がよく分かりました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
第1回目は、リクルートホールディングスによるグループ全体に関するヒト作りの考え方と具体的な施策についてお話を伺いました。第2回目は、事業会社のリクルートライフスタイル。同社ならではの人事施策について、具体的な取り組みを聞いていきます。