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海外駐在員の特別休暇、一時帰国制度等の実施状況

『労政時報』では、1972年から毎年、海外駐在員の給与水準と給与制度の設定内容ほか駐在員管理にまつわる諸事項について実態調査を行っています。今年はこれに加え、(1)赴任(帰任・転任)時の特別有給休暇(2)一時帰国(休暇)制度(3)単身赴任者の国内残留家族の一時呼び寄せ(4)駐在員が帰任または転任した後、現地に残留する家族に対する補助――の4項目についても調査。今回の記事では(1)と(2)について取り上げます。

帰任時にはほとんどの企業が特別休暇を付与

ここではまず、駐在国への赴任や日本への帰任、海外駐在先での転任に際して、国内の労基法(または駐在国の法規)に基づく年次有給休暇以外に、異動に伴う準備や諸手続き等に配慮して特別有給休暇を付与する制度の有無について尋ねました。

集計結果は図表1のようになり、付与するケースが最も多いのは「帰任時」(96.9%)で、これに次ぐ「赴任時」(89.2%)も9割近い高率となっています。一方、駐在先から別の国(地域)の駐在先へ転任する際に休暇を付与している割合は58.5%と、他のケースに比べて低めとなっています。

図表1 特別有給休暇の付与の有無

図表1 特別有給休暇の付与の有無

付与する休暇日数の決め方については、主に、(1)帯同家族の有無によらず一律(2)単身赴任(独身)・家族帯同のケース別に設定――という二つのパターンが挙げられます。これらの採用割合を尋ねたところ、図表2にみるように赴任・帰任・転任とも、「一律」のパターンが50%超で主流を占めており、傾向に大きな違いはみられません。また、一律・帯同家族の有無別以外の「その他」の回答では、「上司が必要と認めた日数を付与」「赴任先の現地法人規程による」「赴任予定期間により異なる」「ケースバイケースで決定」などの例がみられました。

参考まで、赴任・帰任・転任のいずれの場合も休暇付与を行っている企業(38社)のうち、ケースによって休暇付与日数の決め方が異なっていたのは2社のみでした(「赴任は必要日数、帰任・転任は一律」「赴任・帰任は帯同家族の有無別、転任は必要日数」が各1社)。

図表2 休暇付与日数の決め方

図表2 休暇付与日数の決め方

休暇の付与日数は、赴任時7日、帰任時・転任時5日が主流

赴任・帰任・転任のケースごとに休暇付与日数の記入があった企業について集計したところ、図表3のような結果となりました。

これらを概観すると、三つのケースによる休暇付与日数の差はほとんどみられません。分布にややバラツキがあるものの、「一律」および「家族帯同」の場合は「5日」または「7日」とするところが多く、「単身」の場合は各ケースとも「3日」が3割超で最多となっています。

なお、個別の回答では、「赴任前○日+赴任後○日」というように赴任前後で分けて付与日数を決めている例や、「赴任前1ヵ月から赴任後1ヵ月の範囲で取得可」など取得期間に幅を設けている例などもみられました。

【図表3】赴任・帰任・転任時の特別休暇の付与日数分布- (社),% -
区分 任地への赴任時 任地からの帰任時 海外任地間の転任時
一律 単身・帯同別 一律 単身・帯同別 一律 単身・帯同別
単身 帯同 単身 帯同 単身 帯同
合計 (31)
100.0
(22)
100.0
(22)
100.0
(37)
100.0
(22)
100.0
(22)
100.0
(22)
100.0
(14)
100.0
(14)
100.0
2日 6.5 22.7 2.7 18.2 4.5 28.6
3日 22.6 31.8 10.8 31.8 18.2 35.7
4日 22.7 18.2 27.3 18.2 7.1 21.4
5日 25.8 13.6 27.3 35.1 13.6 22.7 31.8 14.3 28.6
6日 6.5 4.5 18.2 8.1 4.5 18.2 13.6 7.1 7.1
7日 32.3 27.3 29.7 27.3 27.3 28.6
8日 4.5 4.5 4.5 7.1 7.1
9日
10日 6.5 13.5 4.5 4.5
11日以上 4.5 4.5 4.5 7.1
平均 (日) 5.4 3.6 6.0 6.1 3.9 6.5 5.4 3.6 6.1
最高 (日) 10 8 12 10 11 17 10 8 12

休暇日の設定方法は「暦日数」が5割、「労働日数」が3割

本国と駐在国との間を移動する際に付与する休暇日数の決め方に関しては、「カレンダー上の休日を含む暦日」で決める場合と、これら「休日を除いた労働日」だけで決める場合とが考えられます。前掲の赴任・帰任・転任のケースと、次項で触れる一時帰国の際に付与するケースとを併せ、これらの休暇をどのように定めているかを尋ねてみました。

全体では「労働日数に休日数を加えた暦日数で設定」(53.8%)が過半数を占め、「労働日数のみで設定」は26.2%と、前者の半数程度の割合となっています。また、「特別休暇の種類によって異なる」とする企業も2割に上っており、一時帰国の場合など、帰国を認める(休暇を付与する)事由がさまざまであることなどを反映して、決定方法が分かれているものと推察されます。

弔事ではすべて、結婚・慰労で約9割が一時帰国制度を設定

次に、一時帰国制度について尋ねました。海外で勤務する駐在員に対して、プライベートで生じるさまざまな事由への対応や、長期駐在への慰労などを目的として、多くの企業が一時帰国制度を設けています。制度内容としては、事由に応じて一定日数の特別有給休暇を付与し、駐在国と本国とを往復する際の航空運賃、空港税などの諸費用を会社負担とする例が一般的。また、家族全員を帯同して赴任しているために、本国での住居を引き払っている場合などは、帰国期間中の宿泊費用まで補助する例もみられます。

図表4 事由別にみた一時帰国・休暇制度の実施状況

図表4 事由別にみた一時帰国・休暇制度の実施状況

こうした一時帰国制度の実施割合を、(1)結婚(本人または子女)(2)慰労(3)弔事(4)妻の出産(5)子女受験の事由別に示したものが図表4です。配偶者や親族の死去に際しての「弔事」については、回答企業のすべてが一時帰国制度を設けており、これに次いで「結婚」(90.8%)、「慰労」(87.7%)の実施割合が高くなっています。一方、これらに対して実施割合が低い「子女受験」(66.2%)と「妻の出産」(58.5%)は、駐在員本人に対する休暇付与は行わず、子女や妻の帰国費用等の補助のみとしている例も少なくありません(駐在員本人が付き添う場合の条件を定めて補助を行うケースもあります)。

注) *ここでは、労務行政研究所が2006年8月18日から10月19日にかけて、東洋経済新報社『2005海外進出企業総覧』所載の企業のうち、全国証券市場の上場企業1236社と従業員数500人以上の非上場企業318社の合計1554社を対象として(回答があったのは67社)行った調査をもとに、『日本の人事部』編集部が一部をピックアップし記事を作成しました。調査は「海外駐在員の給与と休暇等の取り扱い」と題されたもので、詳細は『労政時報 第3691号』(2006年12月8日発行)に掲載されています。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください → 「WEB労政時報」体験版

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