相談相手としての人材紹介会社仕事関係の人はもちろん、 家族にも友人にも相談しづらい「転職」
ネットなどを使った新しい転職支援サービスが次々と登場してきても、人材紹介を利用する求職者は後を絶たない。それには、人材紹介ならではの特徴が関係している。コンサルタントが、求職者の「相談相手になる」ということだ。
話しているうちに考えがまとまった
「希望は、一言でいうと今より良い会社です。でも、それだとはっきりしないですよね。うーん、とりあえず年収はアップしたいですね……」
人材紹介会社に転職相談に来る人の中には、「次はこういう会社を探している」と希望がはっきりしている人が多いが、「いい転職先があれば」という程度で、まだ考えをまとめていない人もいる。この日、相談に来ていたDさんもそんな一人だった。
「仕事内容に関して、何か希望はありますか」
「今までの経験が生きればいいのですが、まったく違う仕事でも、チャレンジさせてくれるならやってみたいですね。そんな会社はあるんでしょうか」
「日本系企業と外資系企業、どちらがいいですか」
「どっちでも。ただ、英語はあまり得意ではありません。ところで、外資系企業は業績が悪くなるとすぐ解雇される、というのは本当ですか」
「ベンチャー企業などに興味はありますか」
「ベンチャー企業のことは、よくわかりません。求人は多いんですか」
基本的には本人の希望を確認しながら、そのつど情報を補足していく。「あなたはこういうタイプだから、このような会社や仕事が向いていますよ」などと、上から目線で提案することはあまりない。
情報提供といっても、出版物やネットを調べれば出てくるような情報が主体で、人材紹介会社だけが知っている「裏情報」などはあまりない。それでも話し合っているうちに、小一時間もすると「希望」がまとまっていくから不思議なものだ。話を一通り聞き終わると、その方向性に沿った求人票を何枚か見てもらう。
「なんとなくイメージがつかめてきました。相談に乗ってくださり、ありがとうございました」
Dさんも、そんなコメントを残して帰っていった。しかし、こちらからすると特別な提案をしたわけでもなく、単にDさんの希望を聞いていただけなのだ。話しているうちに、それまで散らかっていた考えがまとまった、という経験は誰でもあるだろう。この日の相談でまとまったDさんの「希望」もまた、もともとDさんの中にあったものなのである。