政治経験者の再就職「政治」はキャリアになりうるか?
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できれば一般企業に再就職したい
「その後、求人の状況はいかがでしょうか?」
求人情報を提供できないまま数週間がたった頃に、Aさんから連絡があった。私としてはおわびするしかない。
「申し訳ありません。今のところ、ご経験にあう案件が出てきていないんです」
「そうですか。実は、ずっとお待ちするわけにもいかない状況になっていまして……」
他社も含めて、人材紹介会社からあまり良い情報を得られなかったAさんは、知り合いに仕事の紹介を依頼していたのだという。
「以前とは違う政治家の事務所で秘書をやらないか、という話をもらっているんです。先方は即戦力として評価してくれているようです。しかし、私の希望はあくまでも一般企業。正直に言うと、個人的にあまり乗り気ではないんです。あと一週間くらいで、良い求人情報が出てくるようなことはないでしょうか」
数週間待って具体的な案件がなかったのだから、一週間で急転するとは考えにくい。私はありのままをAさんに伝えた。
「やはり、そうですか。他の紹介会社からもいい話がありませんし、先ほどお話しした政治家の事務所からも来るなら早めに来てほしいと言われているので、いったん来週から秘書として勤務することになると思います。ただ……」
Aさんは残念そうな声で言葉を続けた。
「いったん再就職はしますが、御社への登録はそのままにしておいてください。いい求人があれば教えて欲しいんです。秘書の仕事は、企業への転職が決まったら辞めるつもりです」
「承知しました。ご登録はそのままにしておきます」
そうは言ったが、その後もAさんに具体的な求人を紹介することはできなかった。
「政治」は、社会に必要な仕事であるにもかかわらず、特殊なキャリアとして扱われ、企業からは「ブランク」として捉えられることも多い。選挙が始まって、Aさんのことを思い出すたびに、私は「これでいいのだろうか」という思いにかられてしまう。
いったん会社を辞めて大学で学びなおすことや、ボランティアに参加することなども、企業から「ブランク」として扱われることがある。再就職の心配をすることなく、もっといろいろな挑戦ができる社会になってほしいと考えるのは、私だけではないだろう。
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