40~50代の転職も増加中転職経験者も多いが…… ベテランの転職サポートに必要な配慮
長い間、「転職するなら35歳まで」と言われてきた。それ以上の年齢になると求人件数が急激に少なくなるからだ。しかし、この数年で「40代、50代でも経験重視で採用したい」というケースが徐々に増えてきている。もともと経験重視のキャリア採用をサポートしてきた人材紹介会社としては、この傾向は非常にありがたい。ただ、ベテランになると若手や中堅とはまた違う配慮も必要になる。この世代のサポートにあまり慣れてない人材紹介会社には、より慎重な対応が求められている。
ベテランの転職にありがちなミスマッチ
もう十年以上昔の話になるが、50代の管理職クラスのNさんを紹介したことがあった。当時はまだベテランの転職を扱う機会は少なかったので、無事に入社が決まった時は、正直ほっとした。しかし、入社から数週間後、Nさんからかなりの剣幕で電話がかかってきた。聞いていた仕事内容とまるっきり違うというのだ。
「面接では経験を生かしてほしいと言われたのに、実際にやらされる仕事は単純な事務作業なんですよ!」
確認のために企業側に連絡したところ、さらに予想外の事態が待っていた。
「Nさんですか? もう昨日付で退職されましたよ。うちの業務スタイルに慣れてもらうために、最初は実務をやってもらったんですが、どうもそれが嫌だったようです。あんなにプライドの高い方とは思いませんでした。残念ですが、私どもの採用ミスでした」
一般的な人材紹介では、早期に退職した場合、紹介料が一部返金される契約になっている。企業側は自分たちの採用判断の甘さは認めながらも、しっかりと返金を要求してきた。紹介会社の私たちとしては、二重のショックとなったのである。
そんな経験から十年以上。「転職適齢期は35歳まで」と言われていた時代から状況は大きく変わり、40代、50代の人材を対象にする求人は当時よりも大幅に増えている。若手の人手不足感が慢性化していることもあるが、40~50代のベテランが自身の体調不良や親の介護などで離職したケースには、同じくらいの経験値を持った人材で補おうという中途採用に対する考え方の変化もありそうだ。
中堅・若手のみならずベテランの求人も増えることは、人材紹介会社にとっては朗報だ。ただ、キャリアの豊富な人材にはNさんのケースのように、それなりの難しさもある。
転職とはそれまでと異なる社風の企業に飛び込むことであり、入社後にカルチャーショックを受けることがよくある。しかもベテランの場合、同じ会社で長く働いてきて、それまでの仕事の進め方に自信やこだわりを持っている人が多いので、どうしても摩擦が生じやすくなる。