行ってみたら事務所がない? 妙に強気の人気企業 直接訪問して確認したいのだが……。「とにかく紹介だけしてほしい」というケース
- 1
- 2
超人気企業にありがちなスタンス
幸いなことに、Uさんは緊急事態にも落ち着いていた。
「たった今、G社に着きました。今度は間違いありません。」
事務所に入る前に、私にも電話をくれた。なんと「できた人」なんだろうと、あらためてUさんに謝りたくなった。完全にこちらの責任なのに、こちらにも気を使ってくれている。なんとしてもUさんには面接通過してもらいたい、と私は心の底からそう願ったのだった。
その夜、オフィスに戻ってきた営業担当から詳しい報告を聞いた。
「ご存じのようにG社は、代表の○○さんがすごく有名な会社です。私も最初に電話を貰った時には、おおっと思ってしまったくらいで」
そう、G社は規模こそ小さいが、社長がテレビや雑誌によく登場している若者に人気のクリエイターなのだ。あまりにも有名で、公募すると候補者が殺到して面倒だから「人材紹介で絞り込んだ候補者の中から採用したい」と、私たちに依頼してくれたらしい。
そういうケースには営業担当が事務所を訪問して確認することになっているのだが、G社は忙しいから来なくていい、求人票はちゃんと記入して送るから、の一点張りだったという。来ないと紹介できないのなら、他の人材紹介会社に依頼するとまで言われてしまい、営業担当は事務所訪問を断念したそうだ。有名な会社だから間違いはないだろう、という油断もあったのだろう。しかし、もし訪問していれば、事務所が移転していたことに気づいていたはずだ。
こういったトラブルは、時々発生する。人気業界や有名企業で採用にまったく苦労したことがない会社に時折あるケースだ。公募をかければ応募者が殺到、人材紹介会社に頼んでもすぐに候補者が集まる。だから、細かい気配りがいい加減になってしまうのだ。
UさんにはG社を「小さい会社ですがおもしろい案件があるんですよ」といって紹介したのだが、すぐに「応募してください」と言われた。企業規模などからは考えられないことで、私もG社、いや、それ以上に有名な社長の人気ぶりを実感したのだった。
今回はなんとか事なきをえたけど、今後も予想外のことが起こる会社かもしれない――Uさんからの「無事面接を終わりました」という電話を受けながら、私はすでに雇用契約や就業条件など、この先のことを考えてしまっていたのだった。
- 1
- 2