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キーパーソンが語る“人と組織”

メンバーが自発的に動き、新たなアイデアが次々生まれる企業へ
ヤッホーブルーイングを変えた、チームビルディング研修とは(後編)

井手 直行さん
(株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長)

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たとえチームの状態が振り出しに戻っても、人事異動はやめない

―― 社内では、チームごとに結束力の違いは見られますか。

井手直行さん 株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長

グループからチームに変遷するプロセスとして、四つの段階があります。まずは「フォーミング」、形成期です。お互いのことをよく知らず、様子見をしている状態。次に混乱期の「ストーミング」で、お互いの主張がぶつかり合う時期です。うまく機能しているチームには必ず“意見が対立して少し仲が悪くなる”時期があります。でもそこを乗り越えると、「ノーミング」と言われる規範期が訪れます。お互いの個性が分かってきて、足並みが揃う穏やかな時期。そして、向かうべきは「トランスフォーミング」、達成期です。チームの完成形で、個人が役割を全うし、チームとしてパフォーマンスを発揮する時期です。

正直に言えば、現在ヤッホーブルーイングにある14の部署のうち、チーム状態のいいところと、そうでないところの差はあります。チームづくりというのは、メンバー構成が変わると、最初の「フォーミング」に戻ってしまうんです。例えば、五人チームのうち一人が異動になると、パワーバランスが崩れますよね。そこに優秀な人材が入って、既存のリーダーに代わってその人が新リーダーになることもあります。あるいは、新人が入ってきて、育成のためにメンバーが時間を割くことで、一時的にチームのパフォーマンスが落ちることもあります。一人が抜けても、一人だけ加わったとしてもそのバランスはまた一から構成しなければならなくなる。

しかし、確実に言えるのは、一度「トランスフォーミング」を経験しているメンバーがいると、「フォーミング」から段階を上げていくスピードが格段に速いということ。そのため、正社員の8割ほどがチームビルディング研修を経験しているという今の状態は、僕にとっても非常に頼もしく、期待が持てます。

―― 「トランスフォーミング」状態のチームをたくさん作るには、極論ですが人事異動は少ない方がいいですよね。複数の部署を経験することのメリットもあると思いますが、どのようにバランスをとっていますか。

チームのパフォーマンスだけを考えれば、確かにチームメンバーを固定化した方が効率的です。けれどもヤッホーブルーイングでは、新しいアイデアや、「見たことがない」ものを創り出すことを大切にしています。そのために、個人の発想の幅を広げる人事異動は、不可欠です。過去に経験した部署の視点を持って新しい部署に行くと、思わぬ化学反応が起きることがあります。また、「自分はこの仕事が向いている」と思っていても、やってみなければ適性は分からない。もしかしたら他の部署の方が能力を発揮できるかもしれません。新入社員は特にそうですね。2、3年ごとに別の部署での仕事を経験することで、自分に合う仕事、楽しい仕事、苦手な仕事が分かってきます。それが分かった後に、本当に自分の人生を捧げたい仕事を決めていけばいいと思います。

「超宴」「定時退社協会」 社内プロジェクトから生まれたユニークな取り組み

―― チームビルディングを通じて、新たなプロジェクトが生まれやすくなったとのことですが、これまでに立ち上がったプロジェクトには、どのようなものがありますか。

たとえば、「超宴」という大規模なファンイベントは、始まって今年で三年になります。「よなよなエール」をはじめとする、弊社のビールのファンの方々が集まるイベントで、前回は北軽井沢のキャンプ場で自然に囲まれながら、青空の下でビールを楽しみました。次回は神宮外苑軟式球場を貸しきって実施予定で、販売したチケットも15分で完売。今やヤッホーブルーイングの基幹的なプロモーションになっているこの「超宴」も、実は新人の研修課題から生まれたんです。

よなよなエールの超宴 よなよなエールの超宴
▲よなよなエールの超宴

入社後1ヵ月間の研修の中で、新入社員と入社間もない中途社員に出されたのが、「参加者が1,000人を超えるファンイベントを企画せよ」というお題でした。そこで考えてもらった企画が面白かったので、各部署にメンバーが配属された後も、部をまたいだプロジェクトとして展開してもらうことにしました。

しかし、当時は1,000人規模のイベント運営など誰も経験したことがなく、試行錯誤の連続でした。プロジェクトは進んだり、止まったりしながら、準備に2年以上もかかりました。途中でモチベーションの下がるメンバーがいれば、皆でフォローし合い、僕も辛抱強く見守っていました。半分は育成、半分は、「それが実現すれば必ず大きな成果につながる」という信念でした。ようやく2015年春に「超宴」を開催することができたとき、ファンの方々が喜んでくれたのはもちろん、スタッフも感動して泣いていました。この大成功を経験して、「やっぱりうちのメンバーはすごい」と僕自身が感激しましたし、チームビルディングの大きな成果を実感しました。

また、最近では、東京営業所のメンバーが中心となり、「定時退社協会」という団体を立ち上げました。『ビールに味を! 人生に幸せを! 』をモットーにするヤッホーブルーイングが定時退社を推奨する団体を立ち上げて、世の中の方々がもっと柔軟に働くようになり、仕事終わりにビールを楽しんでもらえるように応援ができれば面白いんじゃないか。そんな思いから、メンバーたちはプロジェクトを進めていたようです。僕がプロジェクトの存在を知ったのは、いつも着ているよなよなエールTシャツを脱いで、スーツを着た写真を撮られ、「定時退社協会 理事長」にされた時でした。

「定時退社協会」では、集まってくれたヤッホーブルーイングのファンの方々と「定時退社訓練」を行い、訓練後においしいビールを飲む動画も作成しました。この取り組みはたくさんの反響やお問い合わせをいただき、ヤッホーブルーイングやよなよなエールのPRにもつながったのではないでしょうか。


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