グローバルで女性が活躍するためには何が必要か
――レースクイーンから「世界最速の女性レーシング・ドライバー」になった井原慶子さんに聞く(後編)
~女性活躍推進には、「制度」よりも、まずは「ムーブメント」~[前編を読む]
レーシング・ドライバー/FIA国際自動車連盟アジア代表委員/
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授
井原 慶子さん
- 1
- 2
世界で通用する日本人女性のコミュニケーションスキル
では、日本人の「女性」が世界で活躍するために必要なことは何でしょうか。また、そのような人材をどのように育成すればいいのでしょうか。
まず、女性の持っている、コミュニケーションスキルやマルチタスクスキルを生かすことが大事だと思います。男性だと乗り越えられない枠組みも、女性は人とうまくつながる能力や人をまとめる能力が高く、さらにそこから新しいものを生み出す能力も高い。また、女性の視点が技術開発などの発展にも貢献すると思います。そもそも女性は、出世や上昇志向という意識よりも、人がつながって達成することや、人のためになることがモチベーションにもなります。
日本人は優れた教育を受け、素晴らしい能力を持っています。さらに女性の能力を大きく生かせば、日本のみならず、アジアの近隣諸国とのつながりを持ち、女性の力でアジア全体が大きく発展するように思います。その結果、日本の高い技術力も、さらに世界に貢献できるのではないでしょうか。
また、これまでは「モノづくりの日本」でしたが、これからはサービスの高付加価値化がとても重要になります。販売的なスキルだけではなく、女性の新しいアイデアを生み出す力が、最終的に高付加価値化に向けて役立つのではないでしょうか。
そのためにも門戸を広く開け、機会を与え続けることが大切ですね。
その通りです。そして、活躍する女性の絶対数を増やさなくてはいけません。管理職の数が、諸外国と比較してあまりにも少なすぎます。先日、「女性活躍推進法」が制定されましたが、「こんな法律ができて困る」とおっしゃる大企業のトップの方もいらっしゃいます。女性と伍して働いた経験がない世代だと、女性と協働するイメージがわきにくいのかもしれません。
しかし、今や時代は大きく変わってきています。新しい女性活躍に向けた制度ができて、女性を積極的に登用していこうという新しい風潮になりつつある時に、リーダーたる人は、その環境下でどうしたら女性の活躍を業績に結び付けられるかを考えられなければいけません。その点からも、「ムーブメント」を起こして、女性が活躍するのが「普通」であるという状況を作り出すことが重要だと思います。
私自身、これまでの人生を振り返ると、「非日常」を「日常」に変えることをずっと行ってきました。できないことをできるようにしていけば、それは「普通」になります。そうなった時に、新しく面白い社会が実現できるのではないでしょうか。
本当にそうですね。最後に、「グローバル人材の育成」「女性活躍推進」に取り組む企業のリーダーに対して、メッセージをお願いします。
今、日本には2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催という大きな契機があります。50年に1度という契機を大切にし、個人も組織も社会もより良い方向に皆で一緒に変えていきたい。チャンスが来た時は、思い切ってチャレンジすることが大事です。そうすれば、私達が思っている以上の力、成果が出るのではないでしょうか。
- 1
- 2
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。