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キーパーソンが語る“人と組織”

企業の海外展開の要諦
――グローバル・リーダーに求められる「グローバル・マインドセット」を、
いかに醸成していくのか [1/5ページ]

2014/4/25

白木三秀さん

早稲田大学 政治経済学術院 教授、トランスナショナルHRM研究所 所長

近年、中国以外のBRICs諸国への投資、小売業・サービス業の海外展開の活発化など、日本企業のグローバル展開が一段と進んでいます。このような状況下、多くの企業でグローバルに活躍できる「グローバル人材」が必要になっていますが、グローバルなレベルでリーダーシップやマネジメントに力を発揮できる人材が日本企業に育っているかというと疑問が残ります。例えば、現地法人における日本人のリーダーやマネジャーに対する評価には、非常に厳しいものがあるからです。この問題に詳しい早稲田大学教授の白木三秀先生は、「グローバル・リーダーの育成には、グローバル・マインドセットを醸成し、資質のある人材を選抜することが重要」と仰います。それでは、日本企業は具体的に、どのようにして「グローバル・リーダー」を育成していけばいいのでしょうか、また、「グローバル・マインドセット」とは、どのように定義すればいいのでしょうか――。5月21日に、日本の人事部「HRカンファレンス2014-春-」で開催されるパネルセッション「“グローバル視点”に基づく人材育成・マネジメントの最前線~世界で戦う日本企業に求められるものとは何か~」にもご登壇いただく白木先生に、詳しいお話を伺いました。

Profile
しらき・みつひで/1951年滋賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国士舘大学政経学部助教授・教授等を経て、1999年より現職。専門は社会政策、人的資源管理。現在、日本労務学会会長、国際ビジネス研究学会常任理事等を兼任。主な著書に『チャイナ・シフトの人的資源管理』(編著、白桃書房、2005年)、『国際人的資源管理の比較分析』(単著、有斐閣、2006年)、『内部労働市場とマンパワー分析』(監訳、早稲田大学出版部、2007年)、『チェンジング・チャイナの人的資源管理』(編著、白桃書房、2011年)、『新版 人的資源管理の基本』(編著、文眞堂、2013年)、『ケースに学ぶ国際経営』(共編著、有斐閣、2013年)などがある。

「グローバル・リーダー」が求められている背景

―― 白木先生は「グローバル・リーダーは、その基礎にグローバル・マインドセットを持つことが重要である」と仰っていますが、「グローバル・リーダー」「グローバル・マインドセット」とは、それぞれどのように考えればいいのでしょうか。

「グローバル・リーダー」とはグローバルな環境の下、世界のさまざまな人を引き付け、束ねて活用し、組織戦略を実現していくリーダーのことです。グローバルで活躍する人材(グローバル人材)が実務を通じて成果を出すには、各種の専門的知識やコミュニケーションなどの保有・獲得が必要ですが、その根底にはそれを実現に導くための重要な思考・態度が存在します。それが「グローバル・マインドセット」です。これによりグローバルな観点から知識、認知的特性を持って、柔軟に考えられるようになります。

「グローバル・マインドセット」という言葉が使われ出したのはつい最近のことです。「グローバル人材」も、2008年末のリーマンショック以降、日本企業が立ち行かなくなった時から使われるようになりました。国内市場が収縮し、新興国でマーケットを伸ばすことが必要になったけれど、なかなかうまくいかない。進出しようにも、韓国の企業に連戦連敗という状況が続いていました。そうしたマーケットで、グローバルに対応できる人材が必要だという議論が活発化していったんです。

―― 「グローバル・リーダー」が求められてきた背景には、そのような事情があったのですね。

そもそも「グローバル・マインドセット」がなければ、「グローバル・リーダー」になることができません。しかし実際は、立場上リーダーになっている人が少なくない。これは大きな問題ですね。

日本のビジネスパーソンが海外に行って、現地の部下から評価される項目と評価されない項目があります。評価される項目は「責任感が強い」「コンプライアンスを守る」「他部門のことを考える」など、要するに真面目なビジネスパーソンであるということです。これらは日本国内の企業に入ってからずっと鍛えられ、身に付いてきたコンピテンシーで、世界中で評価されているものです。

ただし、これだけで現地でのビジネスがうまくいわけではありません。早稲田大学コンソーシアムでは2008年から2009年にかけて、現地の上司と日本人の上司を比較するための調査を行いました。この調査では、トップ・マネジメントとミドル・マネジメントを分けて評価していますが、トップ・マネジメントにおいて、日本人が現地のトップ・マネジメントよりも優れているのは、58項目の中で一つもありませんでした。日本人トップのほうが劣っている項目には「現地での人脈が狭い」「組織外での交渉力がない」などがあります。現地の人材に、一日の長があるからです。

白木三秀さん Photo

次に、部課長クラスで派遣されている日本人のミドル・マネジメントを見ても、現地のミドル・マネジメントよりも優れている項目は、一つもありませんでした。ないどころか、過半数の項目で劣っていると評価されていました。特に、部下との関係に関する項目、例えば「部下に的確な指示を与えられる」「部下を公平に評価している」「部下が困った時に手助けする」といったものは、現地のミドル・マネジメントと比べて非常に低い評価が下されています。

「グローバル・リーダー」とはダイバーシティの下、いろいろな性別、人種、宗教、言語などの違いがある人たちの中で、ミッションを達成できる人です。残念ながら、それが日本人はできていないことが明らかになりました。

―― この調査では、中国、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インドといった地域別の分析も行っていますね。

評価が一番厳しかったのは、ASEANでした。中国では、日本人が高く評価される項目がいくつかあります。インドも同様です。その理由は、日本企業の中国・インドへの投資の歴史がまだ浅いからです。それに比べてASEANには長い歴史があります。古いところでは、1960年前後に投資しています。一方で、中国に本格的に進出したのは、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟することが決まってから。ASEANと比べて、中国でのオペレーションはかなり短いことが分かります。インドはその後ですから、さらに短くなります。

そうなると、現地の人材の育ち方が全く異なります。ASEANでは、大卒で入社してきた社員の中に、定年を迎えようとしている人もいることでしょう。40代、50代の社員が多く、人材も大きく成長しています。そこに日本本社から派遣されてくるのは、平均年齢45歳~46歳の人材。中には、30代の若い社員もいます。果たして、そういう日本人が現地のベテラン社員をうまく使いこなせるでしょうか。しかも、本社から派遣されている人材はポジションが高く、給料も高いわけです。すると、現地の社員の中には納得しない人もでてくる。すると、日本本社にクレームをつけるようになります。しかし、日本本社では、現地の人たちをうまく使っていくためのシステムが構築できていない。現地の人は、ますますフラストレーションが溜まってくことになります。


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