パート・アルバイトの職場に対する隠れた不満
アイデム人と仕事研究所 関 夏海(せき なつみ)
ES(従業員満足度)の低下がCS(顧客満足度)の低下を招く
Employee Satisfaction(以下ES)という言葉があります。日本語にすると、従業員満足です。組織において、従業員の業務内容や人間関係などの満足度を表す指標です。似た言葉で、Customer Satisfaction(以下CS)がありますが、こちらは顧客満足という意味です。顧客が満足できるサービスや製品を提供しているのかどうかを総合的に判断する指標です。CSの向上には、ESの向上が必要という考え方があります。ESの低い従業員から高品質なサービスや高い生産性が生まれるとは考えにくいためです。ESが低い、つまり働く人が会社や仕事に満足していない状態のとき、その不安・不満は忠誠心の低下や顧客へのサービスに表れ、CSの低下につながってしまいます。CS向上しいては業績の向上へつなげるためにも、ESを下げてしまう要因は摘んでいくべきですが、今働いている人はどんなことに満足して、何が満足できていないのでしょうか。平成29年版パートタイマー白書を元に、パート・アルバイトを中心に考えてみたいと思います。
平成29年版パートタイマー白書では、パート・アルバイトに現在の勤務先や仕事、働き方に関する10項目の満足度を聞いています。これによると、全ての項目で「どちらかと言えば満足している」が最多となりました。ですが、「給与(賞与含む)」「教育訓練の機会」「働きぶりへの評価」については、「どちらかと言えば満足していない」と「満足していない」の合計がそれぞれ45.4%、49.7%、43.8%となり、他の項目よりも高くなっていました。特に「教育訓練の機会」については「満足している」が1割未満となり、教育に関して多少なりとも不満や不安を抱えている方が多い部分と考えられます。
実際、教育の機会は少ないのでしょうか。企業にパート・アルバイトの入社時と入社後にどのような教育を行っているか、聞いてみました。実施状況が最も多いのは入社時の「就業規則や労働協約など労働条件の説明」で89.2%、次いで「業務マニュアル(基本オペレーション等)についての教育」で88.9%でした。入社時の教育項目と人の定着度合いの関係を見ると、「定着している」企業のほうが「定着していない」企業よりも大体5pt以上教育する企業数が多くなりました。
一方、入社後の教育項目で最も行われているのは「入社時教育のフォローアップ」ですが、63.9%となっています。入社時の項目と比較すると2割程度少ない印象です。
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