ダレのための解禁日なのか?
アイデム人と仕事研究所 研究員
関 夏海
このコラムのはじめに18卒の「学生の進捗」は前年より早く、「企業の進捗」は前年より遅れていると述べました。ここまでの内容を少しまとめると、
- 解禁日は設定する必要があると考える企業が多いが、現行を順守している企業は半数もしくはそれ未満
- 以前よりも指針を守っている企業の率が減少した
- 現行の指針の解禁日より前に「適切と思う解禁日」がある企業が多い
となっています。これだけみれば、指針の解禁日より早く動く企業がより多くなったわけですが、それならば採用選考の進捗も早まるのではないかと思うところです。実際には遅れている原因が他にあると考えられます。
ひとつは少子高齢化による新卒人口の減少と人材不足です。そもそも、採用選考活動を早めた企業が多くなってきているのはここが原因でもあるとも考えられます。求人数は増加する一方で、新卒学生の数には限りがありますから、先手を打って少しでも学生を集めようという結果ではないでしょうか。
学生の動きが変わってきた
もうひとつが、学生の就職活動に対する考え方が変化してきていることが挙げられます。いわゆる二極化が大きくなってきているのです。16卒学生・17卒学生・18卒学生に対し、「就職活動の開始時期に適切だ(16卒学生には「ふさわしい」)と思う時期」を聞いています。16卒学生では大学3年次(卒業前年次)の10~12月が最も多くの回答を集めていました。
16卒学生の広報解禁日は3月1日でしたが、2015年3月卒業予定学生(15卒学生)の採用選考に関する指針では、広報活動解禁日が12月1日だったことが影響していると考えられます。17卒学生では卒業前年次の3年生のときの1~3月が最も回答を集めました。16卒から変わらない広報解禁日で、その時期から取り組もうとする学生の多さがうかがえます。前年卒学生の「広報解禁日」を「就活開始日」と捉えている学生が多かった流れがわかります。
18卒学生についても、卒業前年次の1~3月が最多となりました。しかし、前年、前々年の結果と異なる部分が見られます。「卒業前年次になる前」が大きく伸びたのです。17卒学生では「大学3年になる前」は5.5%でしたが、18卒学生の「卒業前年次になる前」は18.9%、10ポイント以上増えています。18卒学生では「卒業前年次の4~6月」は13.0%となり、大学が夏休みに入り始める7月よりも前に就活を始めた方が良いと考える学生は3割を超えました。
例年より活動開始時期が早いほうが良いと考える学生が急増したのはなぜでしょうか。インターンシップへの参加が一般化してきた影響が考えられますが、インターンシップに関する調査からは「夏のインターンシップに参加する率が高まった」等の結果は得られていません(2018年3月卒業予定者の学生調査インターンシップ編)。
想像でしかありませんが、「指針の日程で進めていない企業が多くなっている」ことを感じ、年次や時期に関係なく動き始めている学生が増えた可能性があります。就活に意識の高い学生が増えることで、指針の解禁日時点で内定を持つ学生が増え、指針の日程通りに進めていた企業が活動し始める頃にはアクティブな学生が減り、その結果内定者が充足せずに採用活動の遅れがでているのではないでしょうか。
18卒学生の約半数は、広報活動・選考活動の解禁日を「必要だと思わない」「どちらかと言えば必要だと思わない」と回答しています。経団連の採用選考に関する指針では「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため」に設けられた採用選考活動開始時期の設定ですが、大きく見直さなければならない時期が来ているのかもしれません。
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●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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