国際会計基準(IFRS)の有給休暇引当金について
上場会社に対して国際会計基準(IFRS)が2016年までに全面適用となるとのことですが、その会計基準の中に有給休暇引当金というものがあります。
具体的にはどういうものか教えて下さい。
当社は月給者の有給休暇を通常の賃金で支払っており、退職による消化で日割り計算となる場合を除き、有給休暇を取っても取らなくても月の賃金額は変わりません。
この場合で引当金として計上するのは、人件費と二重計上ではないかと思うのですが...。
なお、パートタイマーは時給計算で、有給休暇の場合は平均賃金で支払ってるのですが、この計上の対象となるのはパートタイマーも含まれるのでしょうか?
このような制度ができると有給休暇取得促進に繋がり良い制度とは思いますが、当社は、従業員5人程度(社員1パート4)の事業所を複数か抱えており、パートまで取得促進をしてしまうと肝心の社員の有給休暇取得促進が進まなくなってしまいます。
投稿日:2010/02/09 15:44 ID:QA-0019235
- TYKMさん
- 愛知県/販売・小売(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
引当計上は、二重計上ではありません P1
回答者は税務分野の専門家ではありませんので、以下、理解している範囲で回答致します。
■ 労務提供の対価が賃金なので、労務義務があるにも拘わらず、労務提供がなかった場合、欠勤控除(賃金カット)すれば、労務(受取)と賃金(費用)のバランスは、常に保たれ、引当金の必要はないわけです。ところが、有給休暇の取得は、労働義務のある日に、労務提供を免除し、その賃金を保証する、つまり、受取(労務)がないのに、費用(賃金)が発生し、このバランスが崩れます。このまま放置すれば、IFRS の「公正で適切な会計表記」に反する表示になります。
■ 次のような超単純な組織・態様で考えてみます。
① 従業員数は10名
② 1人が休めば売上が1割減る
③ 各従業員には年12日の有給がある
④ 完全週休2日制(祝祭日は捨象)
■ 費用として計上する人件費は、257日分です。売上計画も257日分の営業日数を基準に立てます。然し、有休が完全取得されると、一人当たり12日分の売上が減ります(約4.7%)が、人件費は減りません。つまり、引当計上がないと、その経営計画には、約4.7%の売上未達成のリスクがあることになります。
■ 引当計上されていれば、有休取得の都度、計上金を取り崩していけば、損益に影響はでないことになり、会計の健全性が保たれることになります。従って、引当計上は、二重計上ではありません。引当計上は、予測可能な、合理的金額を現在の会計諸表に出来るだけ正しく反映させる行為とも言えます。
投稿日:2010/02/10 10:59 ID:QA-0019246
相談者より
投稿日:2010/02/10 10:59 ID:QA-0037523大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
引当計上は、二重計上ではありません P2
■ 米国では、期末に未消化の有休を買い取ることに労使ともさしたる抵抗がなく、その買取り原資も会計上確保されているので、決算に対する影響も中立的です。80年代初めには、既に大手日系の現地法人もこの米国基準を採用していたところもあったと聞いています。
■ 日本では、労働基準法制定初期の段階から、有休は、専ら、労働者の保護・権利の面のみが強調され、会計基準にどのように反映させるべきかに関する議論は置き去りにされてきました。この問題は、労働政策とは別のな問題です。日本では、基準も実務慣行もないことですが、IFRS において、計上が求められるのは当然のことでしょう。
■ 後半のご質問の件ですが、求められているのは、「公正で適切な会計表記」ということなので、パートタイマーであれ、正社員であれ、人件費の支払対象者はすべて含まれることになると思います。
投稿日:2010/02/10 10:59 ID:QA-0019247
相談者より
投稿日:2010/02/10 10:59 ID:QA-0037524大変参考になった
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