「モチベーション」「アイカンパニー」の次は
「リンク」を打ち出し、企業と個人を変革する
株式会社リンクアンドモチベーション代表取締役会長
小笹芳央さん
「アイカンパニー」の「信頼残高」を貯めよう
現在の人材ビジネス業界を、どのように感じていらっしゃいますか。
単純に儲かる・儲からないということではなく、個人の働き方や企業のあり方などについて、自分の経験から得た思想や哲学、ゆるぎないメッセージをもって、事業活動を行う人や企業がもっと増えたらいいと思います。私の場合は、「モチベーションカンパニー」が大事であるという企業向けのメッセージと、「アイカンパニー」を鍛えましょうという個人向けのメッセージを、ずっと発信し続けています。
ビジネスは、社会に対するコミュニケーションだと思います。何か伝えたいことがあるから、事業を行うわけです。共感を呼ばなければビジネスは成立しないでしょうし、共感を呼べばその共感の総量が売上になる、と考えています。
人材ビジネス業界で働く、これからの日本経済を支える若手の方にメッセージをお願いします。
人材ビジネス業界に限らず、特に若い間は、「アイカンパニー」の「信頼残高」を貯めていくことが大事です。この「信頼残高」を貯めるためには、いろいろな仕事を経験することです。仕事には、やりたい仕事だけでなく、日陰となる仕事、地味な仕事、下積み仕事などがあります。そこでは「アイカンパニー」が試されます。そういった意識で歯を食いしばり、信頼を裏切らないように務めることで、「信頼残高」は貯まっていくのです。5年、10年経って気が付いたら、相当貯まっているはずです。これは、人材業界に限った話ではありません。
企業経営では、ヒト・モノ・カネが重要な要素だと言われますが、ヒトの分野が一番伸びシロが大きいと思います。人材ビジネス業界は未成熟です。モノやカネの世界と比べたらプレーヤーもまだ少ないですから、やれることはたくさんあります。この分野で一旗揚げようという気持ちがあるのなら、自分なりの社会的メッセージを紡ぎ上げるまで頑張ること。そして、それが明確になれば、そのメッセージに沿って愚直に事業を推進することが大切だと思います。
「リンク」が「モチベーション」の次に重要なテーマとなる
今後、日本企業は働く個人のモチベーションをどのように向上させ、業績を上げていけばいいのでしょうか。
一時、成果主義を取り入れた企業が非常に多くありました。そもそも、成果主義は個人の問題に起因します。個人がどれだけ頑張って成果を出したのか、出していないのかということです。このような個人主義の考え方では、一人ひとりを鍛えていけばいいという発想になります。報酬も一人ひとりに対して、成果に応じて払えばいいということです。しかし、これが行き過ぎると、自分の知識や技術を自分自身に抱え込んで、人に教えようとしなくなってしまいます。
「アイカンパニー」と言うと誤解されがちなのですが、意識として、きちんと自立しましょうということです。しかし、何よりも大事なのは、他者とのつながりです。自立した個人同士のつながりやコミュニケーションがモチベーションにも関係します。
競い合うことや、人から認められること、人と共通の目的を持って協働することなどを通じて人は成長していきます。私は、このような関係性の中にこそ、一人ひとりが存在する意味があると考えています。そのため、人とのつながりを皆がきちんと意識できるような情報共有のあり方、つながりの中で自分の承認欲求が満たされる環境をとても大切にしています。当社の社名「リンクアンドモチベーション」は、そういうつながりの重要性も表しているのです。
企業が大きくなればなるほど、そうしたつながりが途絶えていきます。採用の部署と内部で人材教育を担当している部署が、断絶しているケースは少なくありません。あるいは人事部全般と営業部門や技術部門、経営戦略部門とが連携していないこともあります。縦割りに組織が分断されてきているのです。その結果、企業全体としての活動効率も落ちていきます。さらに、働く人のモチベーションが下がり、個人が機能しなくなります。
そういう意味では、これから「リンク(つなげる)」というのが「モチベーション」の次に非常に重要な企業経営のテーマになってくると思います。
貴社の事業について詳しくうかがうことができました。本日はありがとうございました。
社名 | 株式会社リンクアンドモチベーション (Link and Motivation Inc.) |
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本社所在地 | 〒104-0061 東京都中央区銀座3-7-3 銀座 オーミビル |
事業内容 | モチベーションエンジニアリングによる企業変革コンサルティング モチベーションマネジメント事業(人事・教育支援) エントリーマネジメント事業(採用・動員支援) |
設立 | 2000年3月27日 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。