OJTリーダー制度で、
創業130年の企業文化に新しい風を
古河電工が取り組む組織風土改革とは(後編)[前編を読む]
古河電気工業株式会社 戦略本部 人事部 人材育成(採用・教育)担当部長
上原 正光さん
課題解決に向けて、「まずはやってみる」というスタンス
貴社で取り組まれている研修は、多岐にわたっています。これらは全て人事部主導で企画しているのですか。
人事部の人材教育課4名で、一連の教育カリキュラムを企画しています。運用は研修会社にお願いしていますが、内容は全てオーダーメイドで、パッケージ化された研修は導入していません。OJTリーダー研修やリーダーシップ研修、感性強化に向けた研修のほかにも、階層別、部門別、選抜制講座など、それぞれにカリキュラムを組んでいるので、確かに研修の分野は幅広いかもしれませんね。
これは私の考え方なのですが、現状の課題にアプローチできそうな内容であればまずはやってみる、というスタンスを大切にしています。試した結果、修正が必要と判断すれば変更すればいいので、過去には打ち切りになった研修もいくつかあります。こちらも試行錯誤です。
これらの研修を経て、組織改革に取り組む前の御社とどのような点が変わりましたか。
まず、社員同士の会話が増えましたね。7年前と比較すると、他者に関心を持つ人が増えたと思います。理系出身者が多いので、そもそも人と向き合うより、機械や数字と向き合うことの方が好きな社員が多い傾向にあったのですが、そうは言っても組織は「人」と「人」。コミュニケーションの重要性に気付いてもらえたのではないかと思っています。
すべての研修に掲げる、一貫したテーマ
改革を行う上で、どのような点を意識されましたか。
部分的な点と点の研修ではなく、大テーマを掲げ、全ての研修を一貫して行うことを、常に意識してきました。弊社の場合、「組織力の強化」というテーマをまず掲げ、それに必要な要素を考え、それぞれの研修に落とし込んでいきました。さらに、大テーマから定期的に棚卸をして、修正していく柔軟性も必要です。施策を実施してみて、さらに強化が必要な要素を見直し、毎年研修のメインテーマを練り直す。そして、そのテーマに基づいて研修を実施したり、見直したりすることが、大切なのではないでしょうか。
また、データやアセスメントツールを用いて、現状の分析を徹底的に行っていることが、施策を進める上でのベースとなっています。2009年に実施した調査によって、業務がうまく行かない原因がコミュニケーション不足にあるとわかったので、その結果をもとに各種研修を進めることができたのです。自社の課題を見極めるには、きちんと要素分解し、どこに問題があるのか分析することが重要です。そして、感覚だけではなく、裏付けとなるデータで証明することで、周囲を巻き込みやすくなります。
今後、取り組んでいきたいテーマは何でしょうか。
次世代リーダーの早期育成ですね。それから、すでに取り組んでいることではありますが、グローバル人材の育成にも注力していきます。考え方は、OJTリーダー制度と同じです。当事者の能力を引き上げるだけでなく、組織全体が育成に関わることで、チームワークや相互理解の文化を高めていきたいと考えています。
また、既存の教育制度にはまだ改善の余地が多くあります。時代が変われば人は変わり、人が変われば組織や課題も変わります。その変化をいち早く察知できるよう、私自身も視野を広げ、感度を高くし、人と人とのつながりを大切にしながら、さまざまな課題に取り組んでいきたいと思っています。