男性が変われば企業風土も変わる!
ダイバーシティ先進企業、ローソンが行う「男性の育児休職取得」促進のための取組みとは(後編)[前編を読む]
株式会社ローソン 人事本部 人事企画 部長
山口 恭子さん
男性の育児休職の取得促進を、女性活躍推進の一環として位置づけるローソン。2014年度に新設した「短期間育児休職制度」の普及・啓蒙を目的に各種施策を展開し、取得率の向上を導いています。男性の育児休職と女性の活躍推進がどう結びつくのか、一瞬疑問を抱いてしまうところですが、同社人事企画部長・山口恭子さんは、「男性社員が圧倒的に多い会社の企業文化を変えるには、男性社員の意識改革が不可欠。イクメン促進はその原動力となる」と言います(前編参照)。インタビュー後編では、同社が展開する「男性の育児取得促進活動」がどんな成果、効果を社内にもたらしたのかを、詳しくうかがいました。イクメン支援を通じて企業の活性化を意図する人事担当者にとって、貴重なアドバイスとなるはずです。
- 山口 恭子さん
- 株式会社ローソン 人事本部 人事企画 部長
やまぐち・やすこ●1993年4月 新卒で入社。店舗勤務後本社に異動。約1年の産休・育児休職取得後2001年復職し人事業務に従事。2012年から女性・外国籍社員・障がい者を中心としたダイバーシティ推進などを担当し、事業所内保育施設・障がい者雇用の特例子会社などを設立。2015年より人事本部 人事企画部長。特例子会社(株)ローソンウィルの取締役も兼任。
育児休職取得率8割強。男性の育児参加が社内の意識変革のきっかけに
男性の育児休職取得促進に対する社員からの反応はいかがでしたか?
最初は管理職を中心に「男性が育休なんてありえない」という反応がありました。その「ありえない」を「どら焼きをもらえるなど、ローソンらしく、面白くていいんじゃないか」という風土に持っていけるように、できることはいろいろとやりましたね。その結果、男性の育児に対する関心が徐々に上がっていきました。それは数値を見ても顕著で、2013年度は育児休職の取得者および取得率は共にゼロでしたが、短期間育児休職制度を新設した2014年度は取得者23名・取得率16%、2015年度は取得者93名・取得率70%、2016年度は上期時点で取得率が85%。通期で取得者は100名を超えそうな勢いで、かなり浸透してきたと考えています。最近では、子供が生まれる前に育児休職のスケジュールを調整している社員もいるようです。
当社では「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づき、女性が活躍できる環境を実現するための行動計画を策定していますが、そこには男性社員の育児休職取得率を80%にすることも目標として記されています。女性活躍推進を掲げていても、当社が男性8割を超える会社なので、男性の意識が変わることに着手しなければ、女性がどんなに頑張っても会社の文化が変わらないと考えているからです。現在、85%まで来ているわけですから、数字には満足しています。もちろん制度があるからといっても、活用するかどうかは個人の事情によるので、絶対に100%でなければいけないとは思っていません。やりすぎると、無理が生まれかねませんからね。むしろ私は、育児休暇を取得した社員が満足してくれたかどうかを気にしています。それだけに、2015年度上期に取得者に対して行ったアンケートで、全員が「男性社員の育児休職を周囲に勧めたい」と回答してくれたことがうれしかったですね。
関心の高まりは、こうした数値以外でも実感できるようになってきました。例えば、当社は2014年7月29日にコンビニエンスストアとして初めて、事業所内保育施設「ハッピーローソン保育園」を開園したのですが、その事前説明会に驚くほど多くの男性社員が参加してくれたのです。どういう思いで参加したのかが気になって、何人かに聞いたところ、「妻が出産と同時に退職したので、保育園を利用できるかどうかを確認したかった」「パパ予備軍なので将来的なことではあるが、会社がどのような施策を行っているのかを知りたくて参加した」という声がありました。ハッピーローソン保育園のオープン後も、父親が送迎している姿が目立ちます。これも、短期間育児休職制度を導入した結果として、男性の育児参加が広がってきている一例と言えるのではないでしょうか。