日本ヒューレット・パッカード株式会社:
グローバル企業・HPの「世界共通の人事制度」と「人事営業」(前編)
取締役 執行役員 人事統括本部長
有賀誠さん
自由な働き方「フレックスワークプレイス制度」を推進
HPの社員には、どのような働き方が求められているのでしょうか。
基本的には働き方は自由です。極論すると、成果を出せば、いつどこで働いてもかまわないということ。実は、日本で最初にフレックスタイム制や在宅勤務を導入したのがHPでしたが、現在はさらにそこから一歩進めて、「マネジャーと相談した上で、週に2回、社外で仕事をしてもいい。仕事場所は、自宅はもちろん、情報セキュリティーさえ確保できれば、ファミレスやカフェ、あるいは帰省先でもかまわない」としています。これを「フレックスワークプレイス制度」と呼んでいます。オフィスもフリーアドレスなので、オフィスのどこで仕事をしてもかまいません。
ただし、職種や社員の習熟度によって、働き方の自由度は変わります。それをコントロールするのがマネージャーの仕事。例えば、新卒で入ったばかりの社員が自宅で仕事をしても、学ぶべきことが学べません。新入社員は、会社に毎日来て先輩社員の横に座り、仕事の基本を覚えてもらうことも必要でしょう。また、そのために新入社員のメンター役である先輩社員がそこにいることも大事です。逆に、15年もの社歴があるベテラン社員の場合、目標ややるべきことを決めたら、働き方は本人に任せるようにできることも多いはずです。このように、社員一人ひとりの状況に合わせて、働き方をコントロールするのがマネジャーの仕事です。このような自由な働き方ができるのも、ITインフラが充実しているからです。例えば、電話会議やテレビ会議を利用し、全世界にいる30万人がどこにいても会議ができる状態になっています。
働く環境を取り巻くITが進化し、それを利用したことにより、ペーパーレスが実現されつつあります。社員には固定席やキャビネットがありませんので、紙を持っていても、置く場所がないのです。またかつては、マネジャーはメンバーの勤怠管理、労務管理を行うのが大きな仕事の一つでした。現在では、そうした管理から解放されて、その代わりにメンバーの成果と成長をしっかり見ることがマネジャーの仕事となりました。
逆に、会社に来ない社員が多くなったことで、数少ないフェース・トゥー・フェースの時間を大切にする風土が醸成されています。「今は皆がせっかく集まっているのだから、フェース・トゥー・フェースでないとできない戦略的な議論、ブレーンストーミングをやろう」という考えを持つようになり、時間の密度が高くなりました。
このようなことができるようになったのも、「HP Way」に示されている「仕事をしっかりとやろう」「人を大切にしよう」の両立があるからです。創業者がこんなことを言っています。「人間は、会社が働きやすい環境を整えたら、男性でも女性でも例外なくお客さまや社会のために良い仕事をしようとするものです」。まさに「性善説」です。この中に、ダイバーシティの考え方も当然、含まれています。HPでは創業時からこうした理念を掲げているので、それが会社風土の中に深く根付いています。
『前編』は、日本HPの組織、人事制度の基本的な考え方や特徴的な取り組みについて伺ってきました。『後編』 では、人事が現場のビジネスパートナーとなる「人事営業」について、詳しくお話を聞いていきます。