株式会社リクルートホールディングス:
「起業家精神を持ち、成長し続ける人材」をいかに育てていくか?
株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 室長
今村 健一さん
グローバル化で、いかにリクルートらしさを出していくか
海外に進出していく際も、当事者意識、起業家精神などを持った企業をM&Aしていく、ということを意識されているのでしょうか。
そうとも限りません。今後、圧倒的な技術力を持った会社をM&Aすることもあると思います。そこでは、当事者意識などの採用スタンス面は特に問わないこともあるでしょう。
そうすると、リクルートの持っている人材の強みが薄れていきませんか。
人材の強みと技術力をうまくミックスしていかなければいけないと思っています。企業をM&Aした時に、現場で働いている従業員には当事者意識や起業家精神を求めないかもしれませんが、マネージしているCEOやチェアマンについては、リクルートの役員に求めているスタンスが必要になると思います。どこまでそれを求めるのかについては、現在、役員たちと議論している最中です。
例えば東南アジアで、現地法人とジョイントベンチャーで作った企業に「WCMシート」を持ち込んだらとても共感されたと聞いています。また、リクルートの人事システムは当事者意識を中心に考えられていますが、そのまま移植することが可能、というケースも少なくありません。逆に、リクルートの人材に対する考え方を適用していくことによって、自分たちも意見を言っていいのだと、それまでの閉鎖的な組織風土が、がらりと変わることがあります。
ただし、無理やり押し付ける、ということは絶対に避けたいと考えています。はまる部分を、うまくはめていきたい。いずれにしても今後、グローバル化とIT化は避けては通れない話なので、こうした問題はとても重要です。
事業モデルが変化してきた中で、リクルートのDNAがずっと継承されてきた大きな要因は何なのでしょうか。
根源的にあるのは、「経営理念」だと思います。創業以来大事にしてきた「新しい価値の創造」にこだわり、「社会からの期待に応える」という決意を込めて、現在の経営理念を掲げています。キーワードとしては「新しい価値の創造」「社会への貢献」「個の尊重」がありますが、これを「リクルートウェイ」として、大事にしています。また、この経営理念に対して、従業員の一人ひとりが強く共感して入社しています。例えば、リクルート事件があった後や、リクルートが大きな負債を抱えていた時もそうでした。自分が何とかしてリクルートを立て直すのだという当事者意識、起業家精神の両方を持って全従業員が立ち向かって現在に至っている、このことに尽きると思います。
実際、経営理念のような根源的なものがないと、1兆円を超える借金を返済するのは難しかったと思います。あるいは、紙メディアからネットメディアにうまくシフトすることができたことを、世界でも稀有な事例としてよく言われますが、これもユーザーとクライアントの間に立ち、情報のマッチングニーズに応えていきたいという、強い思いがあったからです。また、会社としてもそういう個人を非常に大切にして、「お前はどうしたい?」と言い続けてきました。「図1」に示した“人事曼荼羅”が、うまく回り続けているからだと思います。
リクルートホールディングスで掲げている人事ポリシーを、各事業会社も受け継いでいるわけですね。
そうです。先ほどの経営理念ですが、分社化したタイミングで各事業会社の社長が全員集まり、「共通の理念はこれからも必要なのか」という議論を1年間行いました。その結果、経営理念の部分は各事業会社とも変わらない、ということが確認されました。リクルートグループ共通の経営理念は引き続き掲げよう、ということになったのです。この経営理念をベースに、各事業会社はその特性を生かすべく、独自の人事施策を考えています。