株式会社リクルートホールディングス:
「起業家精神を持ち、成長し続ける人材」をいかに育てていくか?
株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 室長
今村 健一さん
何事に対しても「しつこい」が、他社にないリクルートの大きな特徴
評価についてはどうでしょうか。
「図1」の「評価する」という項目に全人開とありますが、これは「全社人材開発委員会」の略称です。「WCMシート」のCanの部分で、「誰々の強みは●●で、課題は■■だ。そのため、こういう仕事やこういったポストを与えたほうが、課題を克服して成長するのではないか」といった人材開発の会議を、全社で行っています。
特徴的なのは、一人のメンバーの人材開発の議論を、縦のラインの上司(課長・部長)だけでなく、隣のグループの課長・部長などを含め、組織の全ての課長・部長で議論すること。その結果、例えば、隣の部署の課長に対して、「彼とは1ヵ月に1回くらい接点があるけれど、この辺が少し弱いと思う」というような人材開発に対する責任感が出てきます。つまり、一人を皆で育てるという風土を形成しているんです。このような「人材開発委員会」を1年に2回、全従業員に対して実施しています。
また、執行役員候補の人たちに対する人材開発会議は、ホールディングスの社長から各事業会社の社長を含めた全執行役員20人が、2泊3日の合宿で行います。グループエグゼクティブと言われる次の役員候補の層がありますが、この人たちの中から次の役員にするのは誰がいいのか、役員になるためにクリアすべき課題は何か、そのためにはどういうポストを経験させるのがいいのか、といったような話し合いを、喧々諤々行うわけです。人事統括室が事務局としてファシリテーションを行いましたが、この会議もしつこさの極みでした。
人事施策に関してのキーワードは、とにかく「しつこい」ということですね。
リクルートでは、人の採用、育成、配置、評価などに対する力の入れ方が、半端ではないのです。HRマネジメントを行うためには、しつこいことは当たり前だと思っています。裏を返せば、従業員一人ひとりが必ず成長するものであると信じ、期待し続けているとも言えます。
一つ補足すると、「お前はどうしたい?」という問いに対して意思のある人には、必ず一度は機会を与えてやらせてみる、という度量があります。仮に失敗したからといって、あれこれ言うことはありません。それよりも、次に新しいことをやろうと、再チャレンジするサイクルが早いことが特徴です。
当事者意識と起業家精神を持った人を採用していて、それをさらに高めるDNAが組織の中に当たり前に内在している、ということでしょうか。
採用とは、「秘伝のたれ」みたいなものです。長年注ぎ足していると、うまくなっていきます。まず、自社独自の味を持った先輩社員がいて、そこに新しい人が加わることで、さらに味が良くなっていく。創業以来、その連続で採用のサイクルが回っていることを、採用部門を見ていると強く感じます。
もちろん、昔ほどビジネスがシンプルではなくなっているので、良い人材を採用すれば、それで終了とはなりませんが、入社後の育成のサイクルを強化することでうまく対応できているように思います。