転職先の紹介は早い者勝ち? 激しい紹介会社間の争いとは
転職希望者が希望しても無理? 「早く紹介したほうを優先」というルール
転職を希望する人材がインターネットを使って複数の紹介会社にエントリーするのは当たり前の時代。企業側でも場合によっては数十社もの紹介会社に求人票を送ることがある。そうなると、ある人材に同じ求人案件が集中するケースは珍しくない。そこで、求人企業では同じ人材が異なる紹介会社から推薦されてきた場合には、「応募書類が先に届いた方を優先する」というルールを決めていることが多い。ほとんどの場合、転職希望者の意向は二の次になってしまう。
憧れの企業の募集を見つけた
「この中でいちばん興味があるのはB社ですね。以前から気になっていた会社なので、いつも求人情報をチェックしていたんです」
その日、転職相談に来たAさんは経理のスペシャリスト。今は国内系の企業に勤務しているが、ずっと外資系企業に転職したいと思って準備していたのだという。
「ビジネススクールで指導を受けた先生が、B社の経理をとても高く評価していたんですよ。それ以来、B社のような会社で働きたいと思って、憧れていました。いやあ、本当にこんな募集があるんですね」
求人票を見ながら感慨深げなAさんに、「ではさっそくご紹介しましょうか」と声をかけると、意外な答えが返ってきた。
「少しだけ時間をください。1回応募して不合格だったら再挑戦できませんよね? 後悔がないようにB社の今回のポジションにあわせてレジュメを書き換えたいんです」
確かに不採用になった場合、再度応募することを原則的に認めてない企業は多い。可能な場合でも半年から1年程度はインターバルを空けないといけないのが普通だ。ずっと憧れていた企業であれば、しっかりと対策を立ててから応募したいと思っても不思議ではない。Aさんの強い「やる気」が感じられる発言だった。
「わかりました。もし何か不明な点があればご連絡ください。レジュメの内容について、一緒に考えることもできますので」
そして約2週間後。Aさんからブラッシュアップしたレジュメが送られてきた。職務経験などをB社向けに整理したものだ。Aさんのキャリアが、さらによくアピールされている。私は自信を持ってB社に推薦した。
B社からの回答は翌日だった。そのメールの文面を見て私は目を疑った。
『すでに他の紹介会社からAさんを紹介され、選考を進めています』
いったいどういうことなのか?