キャリア人材よりも難しい「若者の転職相談」
職種を変えたい若手からの問い合わせ増 未経験が採用のネックに……
人材紹介の手数料は、採用された人材の年収に連動するのが基本だ。つまりキャリア豊富なベテランを紹介すると紹介手数料は高くなるが、20代の若手だと手数料はそれなりの金額ということになる。しかし、「やりたいこと」と「できること」が一致しているケースが多いキャリア人材は、求人案件さえあれば転職支援活動そのものは比較的シンプルなので、キャリアコンサルタントにとっては若手の転職相談のほうが手間がかかることが多い。
営業職以外にキャリアチェンジしたいのです
「今の仕事が営業職なので、どこの紹介会社に行っても営業を勧められることが多いんです。でも、私としては20代のうちにキャリアチェンジをしたいと考えています。30代になってからでは絶対に無理だと思いますし……。未経験からチャレンジできる管理系の仕事を紹介してもらえませんか」
若手人材に多いのがこうした「キャリアチェンジ」志向だ。特に、新卒で営業職として入社したものの、やはり自分には合っていなかったと考えて、違う職種を希望して訪ねてくる人は多い。そんな時には、まず転職市場の現状を理解してもらうために、厳しい話から始めることになる。
「若手の方へのスペックの要求はそれほど高くない求人もありますが、まったくの未経験だとかなり数が限られてしまいます」
これでも表現は多少やわらげている。「かなり数が限られる」どころか、未経験者の募集は「一件もない」場合も少なくないからだ。
人材紹介はもともと経験豊富な管理職や希少価値の高いエンジニアを採用する手段として利用されてきた歴史が長い。人材紹介が扱う人材のすそ野が広がってきた現在でも、「高い紹介手数料を払うのだから即戦力採用しか考えていない」という企業が大多数だろう。未経験者の場合、一人あたりの採用コストが比較的安い求人広告(インターネット転職サイト)や費用のかからないハローワークなどを利用するのが一般的だ。
ところが、近年「若年層の雇用環境」がますます厳しくなるのと比例して、人材紹介会社を利用する20代人材は増加する傾向にある。転職サイトは多くの人の目に触れるので、魅力的な求人の競争率は非常に高くなる。またハローワークには大手や人気企業の求人はほとんど出てこない。そのため、転職希望者一人ひとりに対して丁寧なキャリアアドバイスや活動支援を行い、多くの「非公開求人」の情報を持っているとPRしている人材紹介に注目する若手が増えているのだ。
そこで「念のため……」と前置きして、営業職での転職の可能性はないのかを確認することになる。
「ご経験のある営業でしたら、キャリアアップする形での転職が十分可能だと思います。商品力や競争力の強い企業での営業にチャレンジしたいとはお考えになりませんか? 年収も上がるかもしれませんし」
こうした話に関心を示してくれる人もいるが、多くはやはり営業職以外を希望する。
「営業だとネットでいくらでも探せますし、実際来てほしいと言われた企業もあります。ですから、人材紹介会社には営業以外の仕事の紹介をお願いしたいのです」