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自分の会社で自分の転職相談をすることを気にしない人材
知り合いがいる会社に転職することを気にしてしまう人材

「勤務中に堂々と転職準備をする」人材のケース
自分の会社に転職アドバイザーを呼ぶのはOKですか?


転職が「うしろめたいこと」や「ネガティブなこと」でなくなって、転職相談に来られる方の意識や態度もずいぶん変わった。堂々としてきたのは良いことだろうが、ときには「ここまで開き直っていいのかな?」というようなこともある。代表的なものが「メール」だろう。勤務先企業から割り振られている業務用メールアドレスで、転職相談や連絡をしてくる人が、ときどきいらっしゃるのである。今回はそればかりではないケースをご紹介しよう。

「業者の人との打ち合わせということにすれば、怪しまれません…」

「転職相談なんですが、ちょっと忙しくて御社までうかがえそうにないんです。逆に来ていただくことはできますでしょうか?  ええ、うちの会社にです。会議室を予約しておきますので…」

経理が専門のBさんは、今がちょうど決算の時期だから…とすごいリクエストを出してきた。なんと、現在勤務している会社の社内で、しかも会議室で自分の転職の相談をしようというのだ。

「社内っていうのは、さすがにまずくないですか。お忙しいのでしたら、会社のお近くまではお訪ねしますよ。近所の喫茶店などを利用してご相談させてもらったほうがいいように思うんですが…」

実は、会社まで来てほしいと言ってきた人はBさんが初めてではない。しかし、現職の会社で、しかも勤務時間中に転職の相談をするのは、あまり好ましいことではないだろう。一般常識の問題だ。

「いや、確かにそうなんですけどね。でも、私の場合、内勤ですから、フラリと外に出る機会なんてほとんどないんです。しかも決算で忙しいときに、"ちょっと1時間ほど出てきます…"なんて、かえって不自然なんですよ。その点、業者の人との打ち合わせ…ということにすれば、席をはずしても怪しまれませんし…」

「なるほど、そういう事情なら仕方ないですかね。では、何と名乗ってお訪ねすればいいのですか?」

結局、Bさんとは勤務先の会議室で転職相談をすることになった。受付嬢がお茶まで出してくれるので恐縮したものだが、Bさんは堂々として落ち着いていた。

しかし、このBさんよりも強力な人もいた。外資系企業に勤務していたTさんだ。Tさんも会社まで来てくれということだったのだが、通された場所は、広いロビーの一角。商談をするテーブルがいくつも並んでいるような場所だ。

「いいんですか、ここで…」

「大丈夫でしょう。広いし、隣のテーブルのことなんて聞いてませんよ」

たしかにそういうものかもしれないが、Tさんの度胸にも感心させられる。一通りの話が終わると、急にTさんが言い出した。

「そうそう、私の部署にもう一人転職希望の人がいるんです。まだ入社して半年なんですけど、いろいろ悩んでるみたいなので、相談に乗ってあげてくれませんか」

「ええ、まあいいですけど…」

「そうだ、ちょうどお昼の時間だ。3人でランチに行きませんか。すぐ呼んできますんで…」

ランチを食べながらの相談は時折あるが、こういうケースは初めてだった。そのときは、さすがは外資系企業と驚いたものだ。

「これ、私の履歴書。いい転職の情報を教えてもらえませんか…」

「じゃあ、面接はこちらの部屋で行います。どうぞ。小中さんは、ちょっとこちらへ。別件でお話がありますので…」

人事のA部長はテキパキと段取りを仕切ると、私を別室に招き入れた。ちょうど候補者の方の企業での面接に同行していた時だ。

「今日はありがとうございました。で、お話といいますと…」 「これ、ちょっと見ていただいていいですか」

A部長は封筒を一つ取り出して机の上に置いた。中を見ると履歴書が入っている。

「私の履歴書。ちょっと転職を考えているんですよ。小中さんならいい情報をお持ちでいらっしゃるんじゃないかと思いましてね…」

自分の会社で自分の転職相談をすることを気にしない人材 知り合いがいる会社に転職することを気にしてしまう人材

にっこり微笑んでいる。「はあ、ぜひお役に立ちたいと思います…」というしかない。実はこういうケースは決して珍しいものではなく、人事担当の方から時折持ちかけられる話だ。ご信頼いただいているわけだから、かえって身が引き締まるというものである。

また、ご来社いただいて相談したケースでは、上司と部下が2人で連れ添って転職相談に来られた…ということもあった。営業の方だったが、上司の課長が部下と同行営業している時に、転職の話で盛り上がってしまったのだという。

「いやもう、すごい同族経営で、社員の意見はまったく取り入れてもらえません」

それで一緒に転職の準備を…という方向に社員が団結してしまったのだそうだ。その気持ちはよくわかるが、これほど開放的でいいのかなという気もしないではない。しかし、そんなところを注意するような立場でもない。時代はどんどん先へ進んでいる。

「知り合いが働いている会社」を避ける人材のケース
その会社へ先に行っていた人に先輩面されるのはシャクですか?


転職というと、「仕事、会社との相性」「待遇・勤務条件」「キャリアアップ」…などはよくテーマになるし、転職希望者の方の関心も高い。半面、転職理由のかなり上位に位置していると思われる「人間関係」に関しては、あまり問題にされることがない。おそらく、新しい会社での人間関係は一からつくっていくものだから、入社前に気にしても仕方がない…ということなのだろう。しかし、唯一入社前から気になってしまうケースがある。それは「知り合いがいる会社」だ。

「今の会社にいた人が、転職希望先の会社で働いているんです…」

「いい雰囲気で面接していただきましたよ。仕事内容や会社の方向性なんかも、詳しく説明していただいて、そのへんは良かったです。ただ、ちょっと気になることもあるんですよ…」

企業での面接が終わった後の感想をお聞きしていたら、Nさんがこんなことを言い出した。

「気になっていること、ですか…」

「ええ。実は、同じ業界だし、会社の内情なんかも調べておきたくて、いろいろ知人を当たって聞いていたんですよ。そうしたら、今の会社にいた人が何人か移っていて働いているそうなんです」

「なるほど。お知り合いがいらっしゃる可能性がある、ということですね」

知り合いが働いている会社。単純に考えると、知人が働いているなんて心強いじゃないか、というくらいに考えがちだ。しかし、現実には「知り合いが働いている会社はどうも…」という人のほうが多いのではないだろうか。

「まあ、知り合いといっても、もともと仲が良かった人なら歓迎なんですが…」

Nさんも、知り合いが働いているということを、良い材料とはとらえていないらしい。そういう方に理由を聞くと、いくつかあげられるようだ。

  • せっかく転職するのに、前の会社の人間関係が続いてしまうのは新鮮味がない。
  • 先に行っていた人に先輩面されるのがシャクだ。
  • もともと、その人とは折り合いが良くなかった。

Nさんの場合は、あまりいい関係でなかった人が働いていたのかもしれない。

また、意外なところで気にする人が多いのが、「社内リファレンスを取られたくない」ということだったりする。つまり、応募者が勤めている会社の出身者が社内にいた場合、その人に「前の会社の○○さんって知ってる? どんな人だった?」などと、リファレンスを取られるのではないか…ということらしい。

とくに身に覚えがなくとも、「アイツに自分の書類選考をされたくない」「あの人のせいで合否が決まるのは嫌だ」「転職活動をしていると知られたくない」… などという気持ちはわからないでもない。あまり親しくなかった人同士、あるいはお互いライバル視していた人同士などだと、嫌なものだろう。

実際に社内でそういったリファレンスを取る会社がどのくらいあるのか、外部からはわからない。しかし、気になってしまうものはどうしようもない。

「同じ専門学校に通っていた知り合いが働いているんですよ…」

また、逆に「信頼できる人がそこの社内にいるからこそ心配になる」というケースもあるようだ。

「実は、同じ資格の専門学校に通っていた知り合いが働いているんですよ。それで残業がどれくらいあるのかを聞いたんですが…」

Gさんは、希望していた会社の情報を集めた結果、「残業が多い」「時間外手当を全額払ってもらえない」「研修期間が短い」…といったネガティブな情報を多数聞いてしまったのだという。

「今、実際に働いている人からの情報だし、実感がこもっていたんですよ。すごく心配になっています」

しかし、こうした「応募先の会社に知り合いがいる」という状況はどれくらいあるものなのだろうか。実は、ある特定業界だけに存在するような職種、あるいは営業や技術などで案外狭い業界である場合などには、思ったよりもそういったケースは存在しているようだ。

企業内部にいる人からの情報だけに信憑性も高いような気がするが、ただ、こんなときには注意したほうがいいかもしれない。

「それもお知り合いからの情報ですか…」

「ええ。…というか正確には知り合いの知り合いに聞いてもらったんです」

「知り合いの知り合い…」

「もっと正確にいうと知り合いの元彼が、何年か前に働いていたんで…」

自分の会社で自分の転職相談をすることを気にしない人材 知り合いがいる会社に転職することを気にしてしまう人材

こうなってくると、もうウワサの範疇に入るようなことも「知り合いから聞いた」という名目で入ってくるケースもあるのではないだろうか。

場合によっては、そういった情報提供者の中に「知っている人に入ってきて欲しくない」という人がいて、誇大化した情報を流している…などという可能性も考えられないわけではない。

情報を見きわめる感覚もとても大切になってくる。


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