「きめ細かいサポート」と「大きなお世話」の境界線
キャリアコンサルタントのジレンマ 細心の注意が必要な転職者へのアドバイス
人材紹介会社の多くは「入社までのきめ細かいサポート」をウリにしている。転職が初めての人の場合、新卒で就職活動を行った時以来の面接なので、不安だという人も多い。そんな時には、模擬面接を行って雰囲気に慣れてもらうこともある。また、気になるクセや話し方、服装、髪型などについてアドバイスを行うこともあるが、このあたりは個人的なことなので細心の注意が必要になる。
わかっているからこそ腹が立つ
「実は今回転職を希望した理由なのですが……」
Cさんとの転職相談を行っている時に、私はあることに気がついた。話題がやや込み入った内容になると、Cさんは必ずパチパチと「まばたき」をするのだ。それも普通のまばたきではなく、極端に上の方を見て、白目になった状態でまばたきを続けながら話すのである。
「無くて七癖(どんな人でも多少は癖があるもの)」とはいうものの、Cさんの白目のまばたきは少々気になった。このクセは企業での面接でも、きっと出てくるだろう。言いにくいことを話す時に思わず出てしまうクセなのだろうが、大変失礼ながら見栄えのいいものではない。面接の担当者によっては、「見苦しい」と感じる人もいるかもしれない。このクセは、ぜひ改善すべきだろう。
しかし、個人的なことについて触れるのは、なかなか難しい面がある。今回とは状況が異なるが、私には以前、苦い経験があった。
「この経歴で、よい転職先はありますか」
相談者はそれまでに数回転職をしていて、次が5社目だった。転職回数を気にしているのかなと思った私はこう答えた。
「転職回数が多いのは不利かもしれませんが、同じようなご経歴で転職に成功された方は多くいらっしゃいますよ。一緒に頑張っていきましょう」
その後、何度か紹介できる企業の情報を送ってみたのだが、返信がなかった。おかしいなと思い、なぜ連絡をもらえないのかを直接聞くために電話をかけてみた。すると意外な答が返ってきたのだった。
「転職回数が多いのは、自分でもよくわかっているんです。ですからそれをわざわざ言われたくはありませんでした。転職が不利かもしれないと思っているキャリアコンサルタントの方に、お世話になる気にはなれません」
つまり私を「信頼できない」というのである。この経験から、転職希望者の気持ちがいかにデリケートなものであるかを痛感させられた。こちらとしては当然の前提条件を言っただけだったのだが、相手を傷つけてしまうケースもあるのである。
「痛いところ」を突かれると、それが本当のことであるほど余計に腹が立つ気持ちはよくわかる。Cさんが自分のまばたきのクセについて、「面接に不利なので直した方がいいですよ」と言われたら、どんな気持ちになるだろうか。自分でも直すべきだと思っていることほど、他者から言われると反発してしまう可能性も十分に考えられるのである。