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タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ【第9回】
組織人でありながら、キャリア・オーナーシップを持つために――プロティアンの6タイプを意識しよう

法政大学 教授

田中 研之輔さん

タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ

令和という新時代。かつてないほどに変化が求められる時代に、私たちはどこに向かって、いかに歩んでいけばいいのでしょうか。これからの<私>のキャリア形成と、人事という仕事で関わる<同僚たち>へのキャリア開発支援。このゼミでは、プロティアン・キャリア論をベースに、人生100年時代の「生き方と働き方」をインタラクティブなダイアローグを通じて、戦略的にデザインしていきます。

タナケン教授があなたの悩みに答えます!

プロティアン・キャリアゼミも第9回となりました。ニューノーマルの日常、いかがお過ごしでしょうか。オンラインでの会議や打ち合わせが続いている方は、運動の時間も確保してくださいね。通勤による移動が減った分、運動量も減っていますから。言わずもがな、キャリア開発のベースは健康な身体にあります。

私の近況を申し上げると、緊急事態宣言があけてから、キャリア開発研修の依頼が増えています。人事担当者の方々からの「プロティアン・キャリア開発研修」や「ミドルシニア・キャリア開発研修」のご依頼です。

先日はIT関連の上場企業で、プロティアン・キャリア開発研修を開催しました。Zoomを使用して全国に勤務する社員の中から350名が参加したのですが、研修を重ねていく中で、さまざまなことがわかってきました。

例えば30名を超える研修であれば、対面研修よりもオンライン研修の方がインタラクティブに展開することができます。チャット機能を用いたり、ブレイクアウトセッションの時間を設けたりすることで、共通のテーマについて少人数でディスカッションすることが可能。発言の機会も、対面研修より増えます。研修のために全国からわざわざ集まる必要もないので、交通費のコストもかかりません。

また、人事担当者の方から次のような質問をいただくことがあります。

Q. 自ら主体的にキャリアを形成するプロティアンについて学んだ社員は、
転職してしまうのではないでしょうか?

変幻自在という言葉にパワーがあるので、プロティアンというキャリア理論は、転職を促すものとして読まれてしまうことがあるようです。

しかし、これは全くの誤解です。「プロティアン=転職」ではありません。

プロティアン・キャリアで皆さんと共有したいのは、「組織と個人のより良き関係性」を構築・再構築していくための知見です。前回の第8回ゼミでも紹介した『ビジトレ』では、NTT コミュニケーションズさんのキャリア開発の事例を通じて、それが実際に可能であることを「証明」しました。

私は『プロティアン』や『ビジトレ』を通じて、組織人として働きながら、自らキャリア・オーナーシップを持つビジネスパーソンを一人でも増やしていきたいのです。

組織人になることは自らの主体性を消すことであり、キャリアを組織に預けることだという考え方は、日本型雇用の「遺産」です。

これを徹底的に変えていかなければなりません。それでは、なぜ今プロティアンなのかを、あらためてここで確認しておきます。

プロティアン=転職?

プロティアンとは、ウィズコロナ時代の働き方や生き方の「処方箋」です。

プロティアンとは、キャリア論の机上の空論ではなく、それぞれのビジネスシーンで活かせる行動指針にもなります。組織人として働きながら、主体的にキャリアを形成していくことが可能であることを、まず、人事担当者の方々に理解してほしいと思います。アフターコロナの新人研修、ベテラン研修、階層別研修、選抜研修で伝えるべきメッセージは、一貫してこれです。

組織人として働きながら、自らキャリア・オーナーシップを持つことは可能である。

これまでの日本型雇用では、組織の中で自らの仕事が思うようにできないと感じたタイミングで転職していくケースが多く見られました。組織も、「社員のキャリア形成をサポートする必要はない」と判断してきたのではないでしょうか。

しかし、これからの働き方は、もっと自由に多様になります。また、自由さや多様性の先には、「やりがいを持って働く」「より楽しく働く」「組織にとっても個人にとっても生産性高く働く」といったことの実現があります。これがこれからの働き方と生き方で求められていることです。

先ほど触れた企業研修には執行役員の方も参加されていて、「社員のキャリア開発をしっかりとサポートしていく」とおっしゃっていました。社員にとってより良い環境を、徹底的に創出されようとしています。こうした生の発言は、社員に届くものです。

さらに、社員のキャリア・オーナーシップを支えるために必要な、人事制度改革にも着手されています。そのようにして、日頃から社員のキャリア開発支援に取り組んでいるので、結果的に離職率は低いそうです。社員の方々も、「自ら主体的に働く」ことを意識されています。1社でも多く、そのような企業を増やしていきたいものです。

一方で、このゼミの内容が届かず、組織にキャリアを預けながら苦労しているビジネスパーソンも少なくありません。「組織人として働くために、自らのキャリアのことは考えられない」というビジネスパーソンが数千万人規模で存在しているのが実情です。しかしこれからは、事業戦略や企業戦略と同じように、自身のキャリア戦略も考えることを「企業文化」にしていくべきです。

主体的にキャリア形成をしている人は、組織でもやりがいを感じながら働いています。組織人として働くことと、キャリア・オーナーシップを持つことは、矛盾・対立しないのです。

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この記事ジャンル 能力開発関連制度

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