職場のモヤモヤ解決図鑑【第16回】
ネガティブな理由での退職者を減らすために明日からできる職場改善[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の営業主任35才。頼りないが根は真面目。慣れないマネジメント業務に悪戦苦闘中。前編では期待していた部下の佐藤さんから退職を切り出されてしまい…。
年齢の近いマネジャーたちとオンライン飲み会をする志田さん。話題は自然と、最近辞めた部下たちの話に。いろいろと話すうちに、優秀な部下が辞めてしまうのは自分たちのマネジメントのせいかもしれない……と落ち込んでしまいます。退職者を減らすために、明日からできることとは何でしょうか?
退職する部下はどんな不満を抱えているのか
マネジメントの改善点を探る前に、退職者が抱えていた「不満」を知ることが重要です。
社員が転職を考える理由
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの研究・開発部門である組織行動研究所が行った「若手・中堅社員の転職意向実態調査」によれば、退職者は、転職を考えるきっかけとして、仕事内容への不満や会社の将来への不安を挙げています。また、同調査では職場への適応度が「高い人」と「低い人」では、異なる理由を挙げる傾向が見られることがわかりました。
転職を考えるきっかけ
職場への適応度の高い人 |
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職場への適応度の低い人 |
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出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所|若手・中堅社員の転職意向実態調査―若手・中堅社員515名に聞く、転職に踏みきった理由・踏みとどまった理由
現状に対する満足度が高い人は、キャリアアップの機会がない、もっとキャリアの可能性を広げたいなど、未来志向で転職を決断する傾向がみられます。一方、現状に対する満足度が低い人に多くみられるのは、人間関係の悩みや労働条件、仕事への不満です。転職のきっかけはいくつもの理由が組み合わさっている場合も多く、複数の「満たされない」が重なった結果、退職につながります。
リモートワークで広がるコミュニケーションの難しさ
こうした「満たされない」の重なりを増幅する可能性があるのが、近年広まっているリモートワークです。人間関係の悩みや会社の将来性に対する不安は、本来であれば上司や同僚に話し、他者の意見に触れることによって、解消・解決していくもの。しかし、リモートワークでは、コミュニケーションの機会が限定されます。とくに、入社したばかりの社員が悩みや不安を抱えやすくなっているといえます。
ネガティブな退職を減らすために明日からできる職場改善
「こんな職場は嫌だ……」とネガティブな理由で退職する人を減らすためには、まずは現状での満足度を高めることが大切です。マネジャーができる改善策を見ていきましょう。
若手へのリテンションマネジメント
近年はワークライフバランスの考えが広まっており、長時間労働の慢性化は社員のメンタル不調や生産性低下などさまざまな弊害をもたらしています。そのため、やりがいを感じられる仕事と働きやすい環境という、両方の視点でのマネジメントが求められます。
優秀な若手を育てたいのは、どのマネジャーにも共通の思いです。ただし、部下を鍛えたいからといって、やみくもに業務の幅を広げたり、挑戦の機会を増やしたりしていると、仕事をこなすのに精一杯になり、達成感を感じることが難しくなります。これでは、部下のやる気を引き出すマネジメントとしては不十分です。
若手が仕事でのやりがいを感じるには、マネジャーからのフォローが必須。新たな業務を任せた際、本人がキャパオーバーに陥らないようサポートするほか、今の仕事がどんな未来につながるのか、キャリアプランをイメージできるようにサポートすることが重要です。
また、上司から歩み寄る姿勢を見せ、いつでも話を聞けるマネジメント側の余裕が、スムーズなコミュニケーションを生み出します。マネジャー自体が多忙な場合は、チーム制で業務を行う組織体系を採用し、より部下に目が届きやすい体制を検討します。
できること |
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「リテンションマネジメント」への理解を深める
「若手のリテンション」を取り上げた、青山学院大学経営学部教授 山本寛先生のインタビュー記事です。若手社員がエンゲージメント高く働くために、企業がすべきこと、そして現場のマネージャーレベルでできる行動についてもお話いただきました。
優秀な若手をひきつける「リテンション・マネジメント」
人が辞めない組織をつくりあげる極意とは
リモートワークで心がけたいマネジメント
部下の仕事ぶりが直接見えないリモートワークでは、新人の指導やチームでの意思疎通が難しくなります。とくに、入社直後からリモートワークを行っている部下と関係性を構築するには、定期的なコミュニケーションの場を設けて部下の考えや悩みを聞くなど、マネジャーからより積極的に話を聞く行動が求められます。
できること |
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オフィスで仕事をするときのように、雑談を通じて悩みや不満を察することが難しいのがリモートワークです。そのため、定期的な顔合わせの時間を設けて、部下の話に耳を傾けることが大事です。また、チャットで上がった部下からの質問や相談に対しては、時間をあけずに小まめに返信することが、「対話を歓迎する」雰囲気へとつながります。
リモート環境下で強いチームをつくるために、必要なものとは?
パフォーマンスをあげる強いチームづくりに詳しい早稲田大学商学部准教授の村瀬俊朗先生のインタビュー。リモートワークでのマネジメントにも参考になります。
チームが心でつながる「感情的信頼」がカギ
リモートでも強いチームをつくる秘訣とは
部下のこんな様子は退職の兆候?
部下と接する中で、こんな様子が見られたら、何か思い悩んでいるかもしれません。
悩みや不安を抱えている兆候
- 仕事でのうっかりミスが増える
- 成果物の締切が遅れたり、クオリティが以前より下がったりする
- 遅刻や欠勤が増える
- 自発的な発言や行動が減る
- 面談の場で「これからやりたいこと」を語らず無気力に見える
部下から悩みの相談がなにもないのは、ヘルプを出すほどの気力がないからかもしれません。また、すでに退職の意思を固めてしまっている可能性もあります。気持ちの変化が行動に表れる前に、気づいてフォローするコミュニケーションがマネジャーには求められます。
【まとめ】
- 複数のネガティブな要因が重なって退職のきっかけになる
- マネジメント層からコミュニケーションの機会を増やす取り組みを行う
- リモートワークでの信頼関係の構築は意識的に行う
- メンバーからの発言を歓迎する雰囲気を職場につくっていく
意識的に話す機会をつくるって大事だな
忙しい素振りをみせない、余裕が必要
小さなことだけど、一人ひとりと会話する機会を作っていきたいな
おすすめ書籍
退職者のインタビューから社員が退職する理由を明らかにし、その対策を探ります。企業のリテンション事例も盛りだくさんの参考になる1冊です。
「なぜ、御社は若手が辞めるのか」(山本寛著)
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!