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人事マネジメント「解体新書」

今日的な「要員計画」の考え方と実践方法 (後編)
~適正な「要員計画」の視点を持ち、一律のマネジメントから脱する

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前編」は「要員調査」のポイントについて言及した。「後編」では本題である「要員計画」をどのように進めていけばいいのかを、記していく。

「要員調査」の結果を受け、「要員計画」がスタート
◆「要員計画」の視点をどう持つか

要員調査により、各職場や会社の人材ニーズを十分に把握した後、それらのニーズに対してその必要性を吟味していく。また、必要と認める場合でも、緊急度や優先度を付けて、会社としてどのように対応していくかを検討する。このようなプロセスを経て、その結果を図1に示すような「要員計画表」へと反映させていく。

■図1:部門別要員計画表(例)
図1:部門別要員計画表(例)

一般的に、要員計画を策定するには、次のようなフォーマットで検討していく。

(1) 等級別要員計画(年度別)
等級別の要員を年度別に整理、過不足を明らかにしていく。仮に、等級制度が導入されていない場合、役職別、熟練度別などで代用しても、特に大きな問題はない。
(2) 職種別・等級別要員計画(年度別)
職種別・等級別の要員を年度別に整理し、過不足を明らかにしていく。
(3) 部門別要員計画
部門別の要員を月ごとに詳しく管理する。年度の中で生じる増減・過不足を事前に予定し、その補充を計画的に実施していく。

(1)~(3)の要員計画から、年度単位・月単位での過不足が明らかになる。これを基に、「採用計画」を策定することになる。

そして、これらは、あるべき(ありたい)姿と現実とのギャップを埋めていく作業でもある。ただ、それはさまざまなアプローチがある。単に、人を採用すればいいというものではない。そのためにも、要員計画の策定に際しては、以下のような視点を持つことが大事である。

●「要員計画」の視点
(1)社内人材の有効活用
(2)定着・育成対策の検討
(3)人件費・労務費増の抑制
(4)業務効率化・省力化・IT化

(1)~(4)のような視点から、要員要素を十分に吟味した上で要員計画を作成し、「外部からの人材確保」(採用)を中心に、「社内人材の有効活用(異動・ローテーション)」「定着促進活動」「業務改善」なども並行して行っていく。つまり、要員計画とは「採用計画」「社内人材活用計画」「定着・育成計画」といった、各人事施策の柱となるべきものであり、それぞれが不可分の関係にある。いわば、トータルとしての人材マネジメントにおける“拠り所”ということができるだろう。

■図2:要員計画における関連図
図2:要員計画における関連図
「要員計画」を進める際のポイント

(1)社内人材の有効活用

要員調査を行うことにより、さまざまな人材ニーズが明らかになってくる。しかし、それらは単に外部からの人材確保(新卒採用・中途採用、アルバイト・パートなど)のみで対応するのではなく、社内にいる人材の有効活用を同時に考慮していく必要がある。

特有の専門性やキャリア、能力を有している人材が社内にいるにも関わらず、何らかの理由によって、それらを十分に活用できないまま、埋没してしまっているケースは少なくない。こうした埋もれた人材に再度注目し、有効活用を図っていくことは、以下のようなメリットがある。

1つには、外部から人材を導入することにより発生する、新たな労務コストを防ぐことである。もう1つは、活躍の場を得た本人の活性化、さらには組織全体に対する活性化の起爆剤ともなることである。この波及効果は、極めて大きいと考える。

人材不足に対応するためには、採用とともに既存のマンパワーの有効活用の2つの視点が必要である。その意味でも、今一度、企業としては社内の人材に目を向けてみる必要があるだろう。

なお、こうした人材の有効活用を図るためには、人事部が現場と密接に連絡を取り、日頃からの従業員に対する情報の把握と管理が十分になされていることが前提となってくる。

(2)定着・育成対策の検討

要員計画に基づいて、新卒採用、中途採用など外部から多数の人材を確保したとしても、従業員の離職率が高く、定着に問題があれば、せっかくの人材確保の努力も、水泡に帰してしまうことになる。

昨今のような経営を取り巻く環境が厳しい中、会社にとって、意味のある要員計画を立案し、実施していくためには、それらと並行して、社内での従業員の定着促進や離職問題に対して適切な対応を行っていく。例えば、離職率が現在20%であれば、1年後は18%以内、2年後には15%以内に減少させていくように、具体的な改善目標を明確に定めておくことである。

そのためにも、自社の人材の定着状況、離職状況の実態を正しく把握し、定着の阻害要因や離職の主因となっている原因を分析することが不可欠である。実際、離職理由については、概して紋切り型や表層的な理由が表向きになっていることが多い。状況を改善するには、個別の面談やカウンセリングなどを行い、本質的な理由や原因を把握することが不可避である。さらに、定期的にモラールサーベイ(組織活性化診断)などを行うことで、現状の問題を正確につかんでおくことも重要である。

(3)人件費・労務費増の抑制

各職場で要員の養成を慎重に検討した結果、外部からの人材を新たに必要とすることが明らかになった場合でも、人件費や労務コストを視野に入れて、導入する必要がある。外部からの人材導入によって、新たに発生する人件費・労務コストなどを念頭に入れていなかったために、人件費が思いのほか膨らみ、結果、収益を大幅に下方修正することもあるからだ。

外部から人材を新たに導入する場合は、1人当たりの生産高(売上高)を予測し、1人当たりの労務費増とのバランスを十分に考慮しながら行うことが肝要だ。そうしないと、せっかく生産性向上を目的に採用したものの、その後の過重な労務費負担が経営を圧迫しないとも限らない。

しかし、そうした短期的な視点と共に、一方では長期的な視点からも見る必要がある。一時的には人件費の増大を伴うが、「長期的な資本投資」として、積極的な人材確保を進めることが、将来の成長には不可欠である。

実際、大量に人員を採用し過ぎて、短期的に収益の悪化を招くことがある。収益向上や余剰感を緩和するために、会社として意図的に退職勧奨することはあるが、これを行うと、従業員は経営に対して強い不信感を抱くことになる。結果として、組織全体のモラールダウンとなり、ひいては生産性の低下などに結び付くことがあるので、十分な注意が必要である。

それには、人材導入による「費用対効果(ROI)」を「生産高(売上高)」以外にも、いくつかの「指標」を持ったり、途中プロセスに「マイルストーン」を設けたりして、それを評価していく、といった新たなROIの考え方やアプローチが必要となってくることだろう。

(4)業務効率化・省力化・IT化

社内の業務は時として、「自己増強(増殖)的」になる傾向を持つ。いわば、仕事が仕事を生むことがあるのだ。そうならないように職務分析などを行うことにより、無駄な仕事や不要不急の仕事を排除することは、業務の効率化の上では避けて通れないことである。

また、「ヒト」に代わって「システム」や「IT機器」などの代替が可能かどうかの吟味も必要であるが、こうしたことは日常的には行われにくい。要員管理の実施は、1つにはこうした業務の「増殖化傾向・実態」を把握、判断する上での「物差し」の役割を果たすと言えるだろう。

要員調査を機に、不要な管理部門や余分で煩雑な社内慣行などの見直しを行い、業務改善や効率化へと結び付けていくことが必要である。大ナタを振るわず、改善や効率化に着手しないまま業務を継続すると、過重労働を招くだけではなく、忙しさの割に生産が追いつかなかったり、モチベーションが低下して組織が硬直化したりするなど、その弊害は大きい。こうした点についても、人事部としては留意しておきたいものである。

「人材ポートフォリオ」という視点を持って、要員管理を行う
◆人材をカテゴリーに分類し、一律のマネジメントから脱皮

ここからは、かなり私見の入った話となる。この先、要員計画を実のあるものにするためには、全社的に一律のマネジメントを脱し、多様な処遇や人材育成を行うことが大切だと考える。というのも、これまで多くの企業では「資格制度」がベースになっており、求められる人材要件や職能要件などが非常に曖昧になってしまっているからだ。なぜ曖昧な言葉になるかと言えば、それは「全ての人材を網かけしよう」としているからである。しかし、現実はと言えば、仕事によって求められる要件は違うし、各人の特性やコミットメントの違いによっても変わってくる。そこで提案したいのが、「人材カテゴリー分類」に基づいた「人材ポートフォリオ」の概念である。

人材ポートフォリオとは、行う業務の特性や必要となるスキルや知識、態度、あるいは担っている役割の重要性や必要度合など、職務・職種等の特性に応じて人材を幾つかのカテゴリーに分類していくというもの。そして、それぞれの特性に合わせた「雇用形態」や「処遇制度」「能力開発」などを決め、一律のマネジメントを脱していくものである。その結果、会社全体としての「人事の無理・矛盾」を最小化することが可能となる。この考え方が、要員計画においても重要だと思う。

つまり、「どのような仕事に」「どのようなタイプの人材を」「どのような雇用形態で」「どの程度のコストで」採用し、配置(異動・ローテーション)を行い、能力開発・人材育成すればいいのかを検討していく。さらに、「どのような条件だと、代謝することにすればいいのか」といったことについても検討を加えていく。こういうアプローチを行うことで、仕事や職種の特性に合った人材を、効率的に採用・配置・育成すると同時に、会社の方向性に合わない人材に関しては、何らかの代謝促進手段を取っていくことになる。結果として、最適の人事の仕組みを作っていくことになる。

◆人事システムの弾力的運用ができるような「要員計画」を

その際にポイントとなるのは、必要な人材の種類を分ける「軸」をどう設定するか、ということ。現実に、プロットすべき軸には色々なものが考えられ、そこに何を置くかで人材活用のあり方が変わってくる。社員として内部で育てていくのか、それとも外部の契約社員などの人材で賄っていくのかといった「自社内保有VS外部活用」という軸も想定できる。また、事業の実態やニーズに合わせて設定していくことも可能だ。ここでは複数の評価軸を組み合わせてカテゴリーを評価し、職種の特性を洗い出すことが重要と言える。

もう少し詳しく見ていこう。実際にあったケースだが、ここでは店長でもAとBの2種類がある。Aは地域限定としないが、Bは地域限定とする。また、地域限定とするBは、雇用期間は3年。両者とも社員ではあるが、Bは実態としては契約社員に近いというように、雇用形態そのものを分けていったケースである。

そうすると、当然のごとく人材の「評価」の中身が全く変わってくる。無期限で地域を限定することなく、これから長く育っていって欲しいと考えている店長の場合、現在のパフォーマンスも大事だが、「以前と比べてどのぐらい成長しているのか」や、「能力の保有度合いがどの程度上がっているのか」という、「将来の貢献度合いを保証する、個人の成長度合い」といった部分を見なければいけない。

一方、3年間で契約が切れるような店長では、「現在のパフォーマンス(業績)」が問題となる。それならば、プロセスや保有能力よりも、売り上げを上げているかどうかを問うべきだ。先の店長とは評価の内容も違うし、やり方も変わってくる。このように、あらゆる人事の仕組みが、その対象となる人に何を求めているのかということによって、全く変わってくるのである。

その結果、人事システムの弾力的運用へとつながってくる。例えば、ある人が現在のポジションだと力を発揮できないといった時に、適切にポジションを替えられる。実際問題として、「地域限定にするから、契約社員になってみてはどうか」といった働き掛けができる。こういう形でカテゴリーを分け、マネジメントのやり方も分けておけば、その中で必要な要素も明確にできる。そして、求める要件が明確なら、異動もしやすい。

つまり、各自の特性や志向に合わせて、さまざまな人材を効率的に活用していこうとするのが人材のポートフォリオの考え方である。ダイバーシティが問われる現在、こういう視点も取り入れ、今後は要員計画を策定していくべきではないだろうか。

◆最後に~効果的な「要員計画」を実現するために必要なこと

自社の「強み」を生み出し、継続していくために、求める人材像は何で、そうした人材の調達・活用のあり方が、組織としてどのようであることがベストなのか。このような経営戦略から導き出した人材戦略を描き、その上で要員計画を構築していくことが、これからは不可欠となってくる。

その際、選択と集中を行うのか、バランスよく行っていくのか、それとも時々に応じて柔軟に変えていくのか、いろいろと方策はあるだろう。しかし大切なのは、そうした人材戦略の考え方・ビジョンについて、トップと人事が偽りなく語り、納得してもらえるようコミュニケーションを行うことである。

どのような手法・アプローチを取るか、それは各社の人事戦略や置かれた状況で異なってくる。いずれにしても、それらが人材育成的であり、従業員にとってモチベーティブであることが今日、とても重要なことではないだろうか。要員計画は、その“集大成”というべきものである。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

 


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