指揮者のいないオーケストラに聞く
一人ひとりがリーダーシップを発揮する「自律型組織」のつくり方
東京アカデミーオーケストラ
田口輝雄さん 室住淳一さん 益本貴史さん
本業にも好影響をもたらすオーケストラのノウハウ
オルフェウス・プロセスが身についたことで、本業には何か影響がありましたか。
益本:仕事でまさにプロジェクトマネジメントを行っていますが、TAOでの活動に通じるところも多いと感じています。限られたリハーサル回数でどのように組み立てて、どんな方向性へ持っていって、本番を成功させるのか。その中で自分の意見をどう伝えて、どうやってみんなから意見をもらうのか。意見を発する主体性も含めて、本当に参考になっています。
田口:演奏会の期日は変えられないし、リハーサルの回数も増やせない。プロジェクトマネジメントとしては極めて明快だけど、難易度も高いですからね。
室住:私には今80名の部下がいるのですが、本当にオーケストラみたいだな、と思うんです。それぞれの個性があって、異なる背景がある人たちが集まって、目的を果たそうとしている。
特に、コンサルファームではこれからの時代へ向けて、多種多様な人材を採用しています。その中で、「コンサルはこうだよ」と押しつけるのではなく、彼らが持つ個性を引き出して、目標を達成する。それは、僕がトップダウンでできるようなことではないんです。まさにTAOでやってきている手法ですし、それを実行してきたことで、会社としてイノベーションを起こせそうな兆候がある。TAOを楽しみながら、そのノウハウを仕事に生かせるなんて、この上なく幸せなことだと思いますね。
TAOとしては、これからどんな活動をしていきたいですか。
田口:我々自身はみんなアマチュアですが、たまにプロのソリストを招聘して、コンチェルト(協奏曲)を行うことがあります。すると、ソリストの皆さんが「普段やりたくてもできないことができるから、うれしい」っておっしゃるんです。
プロの方たちはいつも、指揮者の指示に従っているので、東京アカデミーオーケストラでは新鮮な感覚で、楽しく演奏してくれる。ジャズのようにセッションして、お互いに音楽を仕掛け合う感じなんです。今後、ヴァイオリンやピアノに限らず、例えば声楽の方との共演など、新しい演奏ができたらいいなと思います。
室住:やはり、モチベーションの高い組織だからこそ、良いアウトプットが出せると思うんです。我々はまさに「やりたいことを自分たちの納得いくまで思いきりやれる」というのが、モチベーションになっています。
田口:単に「自由気ままにやる」ということではなく、演奏会としてお客さまの評価をいただき、興行として成り立たせて、良い演奏をすることをこれからも大切にしていきたいですね。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。