役職別昇進年齢の実態と昇進スピード変化の動向
成果向上や能力発揮を促す処遇体系の導入に向け、これまでに多くの企業が資格・等級制度の見直しに取り組んでいます。これらとともに、育成・活用をねらっ た優秀者の選抜・早期登用の動きも広がりをみせ、年功処遇が中心となっていた時代に比べて、昇進・昇格のスピードは大きく変化しています。こうした中、労 務行政研究所では、企業における役職(係長・課長・部長相当の職位)への昇進年齢の実態と、5年前と比較した昇進スピード変化の動向について調査を行いま した。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
新卒入社の大学卒社員における制度上の最短・標準昇進年齢
回答企業の現行制度に基づく、役職(係長・課長・部長)への「最短」昇進年齢と「標準」昇進年齢を尋ねました。集計結果は[図表1]のとおりで、「最短」昇進年齢の平均値は、係長29.5歳、課長33.9歳、部長40.1歳となりました。「標準」昇進年齢の平均値との差をみると、係長が3.2歳に対し部長では6.9歳となり、上位の職位ほど最短・標準の差が大きくなる傾向がみられます。これらから制度上の昇進年齢を大まかにつかむと、最短では係長30歳→課長34歳→部長40歳、標準では係長33歳→課長39歳→部長47歳となっています。
なお、前回(05年)調査での「最短」昇進年齢は、係長29.5歳、課長34.2歳、部長41.0歳となっており、これらと今回の集計結果を比較すると、部長では0.9歳早くなっています(なお、集計(回答)企業は05年調査と今回調査では必ずしも同一ではありません)。
役職別にみた実在者の年齢
2009年10月または最新時点で回答していただいた「役職別実在者の平均年齢」を集計した結果[図表1]、係長は39.6歳、課長45.1歳、部長50.7歳となり、役職間の年齢差はおおむね5歳前後となっています。前回05年調査での平均年齢は、係長38.8歳、課長44.8歳、部長51.3歳で、部長では0.6歳若くなっています。
5年前と比較した役職(係長・課長・部長)への昇進スピードの変化
[1]昇進スピードの変化 今回の調査時点と5年前(2004年)との比較で、実在者の昇進スピードの変化を尋ねたところ([図表2]参照)、いずれの役職も「変わらない」が最も多く、全体の約6割を占めました。一方、「早くなっている」はおおむね2割台後半、「遅くなっている」は1割台後半で、「早くなっている」とする企業のほうが多いことがわかります。
集計(回答)企業が異なることを前提に、管理職層の初任役位に当たる「課長」への昇進について、前々回(03年)および前回(05年)調査と比較してみると、「早くなっている」と答えた割合(規模計)は、前々回37.6%→前回55.2%→今回28.5%と推移していま す。
こうした変化の背景としては、(1)優秀な人材の早期登用に向けた取り組みが、各社で一定の定着をみたと思われること(2)景気の低迷に伴って組織拡大にブレーキがかかり、早期登用の受け皿(ポスト)が、頭打ちまたは減少に転じたこと(3)バブル期以降の採用抑制のため、早期登用のターゲットとなる年代層の社員数が限られていることなどが考えられます。
[2] 昇進スピードに変化がある場合の理由 課長および部長について、昇進が「早くなっている」または「遅くなっている」場合の理由を複数回答で尋ねたところ[図表3]、「早くなっている」理由では、「若返りを図るため、若手を積極登用した」が最も多く、課長で67.6%、部長で63.2%といずれも6割超を占めました。これに続くのが「成果主義、能力主義の浸透」(課長56.8%、部長60.5%)で、経営幹部候補や優秀者の積極登用が変化の主因とみてとれます。
これに対し、「遅くなっている」理由のトップは「ポスト不足」で、課長・部長とも回答の7割超を占めました。ただし、前回05年調査で同様に尋ねた際の回答では、ポスト不足を理由に挙げた企業が課長で91.7%、部長で85.7%に上っていたことと比べると、その割合は若干ダウンしています。
一方、2番目に多かった「昇格基準を厳格に運用している(または厳格化した)」を挙げた企業は、課長で42.1%(前回33.3%)、部長で50.0%(同21.4%)となり、いずれも増加傾向を示しています。こうした変化の背景には、成果や発揮能力を重視する制度の広まりに加えて、バブル期の大量採用層が昇進対象年代にかかる中、ポスト登用時の選抜をより厳格化する動きがあるものとみられます。
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