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「自分にあった働き方」は、職場の業績を向上させる

リクルートワークス研究所 辰巳哲子氏

「自分にあった働き方」は、職場の業績を向上させる

2020年4月以降、個人の働き方は大きく変化した。あらためて、自分がどのように仕事と向き合うのか、ということを考えさせられる時間でもあった。テレワークが増え、仕事の進め方や働く時間の管理は個人の手に委ねられた。自宅でのテレワーク中心の生活では、自分や家族の生活時間にあわせたやり方を模索せざるを得ず、いったい自分にはどういうやり方がフィットしているのか、自分の仕事の軸が変化したり、仕事の進め方や優先順位のつけ方が変化した人も多かったことだろう。実際、これまでは企業のルールにあわせるように自分の働き方を決めていたが、近年、自分にあった働き方を選ぶ人が増加傾向にあることも明らかになってきている。

就業者の4人に1人が、「自分にあった働き方」を得ようとしている

昨年末の調査では、就業者全体のうち26.5%が「勤務条件に関する相談・交渉をしたことがある」と回答している。2018年の調査では、育児など何らかの「制約条件があるから」相談・交渉をする人が多かったが、2019年の調査では、「学びのための時間」や「副業」など、「得たいものがある」から相談・交渉している人の割合が増加している。

職場との条件交渉の内容

職場との条件交渉の内容は、生活の中で仕事をどう位置付けているか、ということにも影響される。仕事を通じて働く喜びを得ている人は、より自分の生活にフィットした働き方が実現できる条件(勤務時間の考慮、仕事持ち帰り可、託児所)を求めているが、一方で仕事から喜びを感じていない人は、休暇や交通費、定時退社といった、仕事以外の条件向上を望む傾向がみられている。

条件だけではない、「自分にあった働き方」

ここまで、主に制度上の条件面における「自分にあった働き方」の潮流を見てきたが、「自分にあった働き方」を実現しているのは制度上の条件ばかりではない。リモートワークが始まって、「周囲に人がいるところのほうがむしろ集中できる」や「自分の考えを誰かに聞いてもらうことでクリアにしたい」など、いい仕事をするために実は欠かせなかった環境の存在に気付いた人もいることだろう。

「働く×生き生きを科学する」プロジェクトでは、個人がどのような時に「生き生き働いている」と実感できているのかを調査した。その結果、(自分で)全体像を把握できている、(自分の)得意分野が生かされている、(自分の)持ち味が発揮できている、いつも通りの状態で働ける、アイディアが次々出てくる、考えの壁打ちに付き合ってくれる同僚がいる、クリエイティブな議論ができる仲間がいる、成長できる環境があるなど、制度上の条件だけでは実現できない「自分にあった働き方」が見えてきた。以下は全国の就業者にAとBのどちらが望ましいかを選択してもらったものだが、多様な仕事に囲まれたい人、自分でゴールを決めたい人など、条件だけでは説明できない「自分にあった働き方」がある。

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※リクルートワークス研究所(2019)働きがいの調査

「自分にあった働き方」を実現するために個人にできること・企業にできること

自分にあった働き方を実現するために個人にできることは、2つある。1つには、いろんな働き方を試してみながら、自分にフィットする働き方を見つけること。2つめは、既に4人に1人がしているように、それを周囲の人に伝えることだ。特に条件面以外での「自分にあった働き方」はあまりにも多様なため、同じ職場で働いていたとしても自分にしかわからない。1on1の機会などを使いながら、「自分がどのような時に生き生きと働けるのか」といった「仕事に対する自分の気持ち」を職場の同僚と共有する必要がある。

仕事に対する自分の気持ち

企業にできることは、個人を尊重することだ。図表にもあるように、現在の仕事の中で持ち味を発揮することや上司や同僚と「仕事に対する自分の気持ち」を共有することこそが、個人の働く喜びを向上させ、仕事や職場のパフォーマンスにつながることが明らかになっている。

「自分にあった働き方」の実現は、決して個人のわがままを通せということではない。人によってパフォーマンスを発揮しやすい働き方は異なる。どのやり方がフィットしているのかは、あまりに多様で個人にしかわからない。しかし、周囲に自分の持ち味が伝わることは個人のパフォーマンスにもいい影響を与えている。このことを前提に、「仕事に対する自分の気持ち」や「持ち味」について、職場での対話をはじめてみてはどうだろうか。


【調査概要】
リクルートキャリア「働く喜び調査」
全国15-64歳の就業者を母集団とし、性・年代(10歳刻み)×就業形態×居住エリアで母集団構成に合うように回収。調査期間:2019年12月12日~17日 サンプル数:5467
リクルートワークス研究所 働きがいの調査
全国18~89歳の就業者を母集団とし、性・年代・就業形態・地域・学歴で母集団構成にあうように回収。調査期間:2019年11月13日~15日 サンプル数:9716

リクルートワークス研究所

リクルートワークス研究所は、「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会の創造」を使命に掲げる(株)リクルート内の研究機関です。労働市場・組織人事・個人のキャリア・労働政策等について、独自の調査・研究を行っています。
https://www.works-i.com/

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【用語解説 人事辞典】
ワーク・ファミリー・コンフリクト
シフト制
ハイブリッドワーク
選択的週休三日制
ブリージャー (ブレジャー)
従業員シェア
GビズID(gBizID)
労働安全衛生法
働き方改革関連法
高度プロフェッショナル制度